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101回目の異世界転生!  作者: 絢野悠
一章:女の子を三人口説き落とせ!
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五話

「――きなさい、起きなさい、アル」


 身体をゆさゆさと揺さぶられている。瞼を開けると、目の前にシアの顔があった。


「もう大丈夫なの……かいいいいいいい?!」


 シアは素っ裸だった。


「なに驚いてるのよ」

「なんで素っ裸なんだよ。服くらい着ろって」

「服を着るタイミングは私が決める」

「腰に手を当てて堂々と言うな。いろいろ見えてるから説得力もクソもない」


 いい感じにラッキースケベだがタイミングが悪い。心の準備させて欲しかった。あわよくば風呂の前で二十回くらいスクワットするくらいの心構えが欲しかった。


 上半身を起こしてよく見ると、非常に可愛らしい乳房がそこにってそうじゃない。髪の毛が濡れている。むしろ全身濡れている。


「あー! シアちゃんダメだよお兄ちゃんの部屋に入ったら!」


 そんな声がして、スピカが部屋に乱入してきた。


「ちょっとお兄ちゃん! シアちゃんにひどいことしないで! まだ乙女なんだから!」

「軽く犯罪者扱いしないで? さすがにお兄ちゃん傷つくからね?」

「ほら、シアちゃんはこっち」


 シアの肩にバスタオルを被せ、そのまま二人は出ていった。反抗期、恐ろしいな。


 部屋に一人。頭を掻きながらため息をついた。俺も行くか。


 今日は休日、元いた世界で言うところの土曜日。この世界でいうところのシェイドデイだ。


 この世界も七日を一週間、大体三十日を一ヶ月としている。


 一週間はこの世界にいる精霊を元に曜日が割り振られている。月曜日は風のシルフ、火曜日は火のサラマンダー、水曜日は水のウンディーネ、木曜日は木のドライアド、金曜日は土のノーム、土曜日は闇のシェイド、日曜日は光のウィル。土曜日がノームじゃないとかはあるけど、それは世界が違うので仕方ない。


 この世界も十二ヶ月で一年。元いた世界と変わらないので違和感がまったくない。


 ちなみに俺は転生中に全部制覇した。つっても属性を司る大精霊じゃなくて、その子供の小精霊だが。


 小精霊とは言うものの、大きくなって大精霊になるわけじゃない。大精霊の餌みたいなもんで、そのうち食われるというか吸収されるのが運命だ。今いる大精霊が死ぬと、小精霊の中のどれかが大精霊に進化する。完全に運である。


 まあそんなことはどうでもいい。


「なるほど、成長が楽しみな体つきをしている」

「お兄ちゃん! 変なこと考えないでよね!」


 ドアの向こうからそんな声が聞こえてきた。もしやスピカはエスパーなのでは。


「俺も着替えて出るか」


 パジャマからサッと着替えた。裕福な言えではないので、割と薄手のシャツとパンツで着替えは終わりだ。これがスタンダードだって言うんだから楽でいい。


 この家はリビングが中央にあって、俺の部屋もスピカの部屋も、当然両親の部屋もリビングに直結している。つまり廊下というものがない。だいたいこの辺にある家はそんな感じだ。


 部屋を出ると朝食が用意されていた。スピカもシアも母さんもすでに席についていた。


「俺が最後か」

「そうよ、早く座りなさい。シアちゃんも待ってるわ」


 母さんに言われた通りにする。親孝行は日常から。


 全員で「いただきます」と言うと、シアが小さな声であとからついてきた。魔王経験者からすると、こうやって他人と食事をするということがない。だから若干戸惑っているんだろう。


 クッキーを食べた時のように、小さな口でトーストを食んでいた。もぐもぐ、というよりはむはむ、という感じだった。スピカよりも食べる速度が遅い。可愛いかよ。


 特に面白いこともなく朝食が終わってしまった。てっきりシアがなにかやらかすと思ったが、スピカがちゃんとフォローしていた。よくできた妹を持って、お兄ちゃんはすごく

嬉しいよ。


 朝食が終わってすぐ、スピカは家を出ていった。今日は休みだが、友人たちと約束があるらしい。


 シアを見ると、朝食が終わったというのにイスにちょこんと座っている。これもなんとなく予想がつく。


「どうすりゃいいかわかんないんだよな?」

「まあ、そうね。魔王城でも似たようなものだったけど、状況が状況だから」


 が、正直俺もシアの扱いに困っている。そうだ、とりあえず部屋に連れていこう。


「ちょっと来てくれるか」

「な、なにをするつもりなの?」

「身構えんなって。部屋に行くだけだ」

「部屋に行ってどうするつもり?」

「今更すぎるだろ……ほらさっさとこっち来いって」


 母さんが洗い物をしている間に、俺はシアを自室に連れ込んだ。なるほど、こうやって女を連れ込めばいいんだな。


 強引すぎると言えばそれまでだけど。


 シアをイスに座らせて、俺は向かい合うようにベッドに腰を下ろした。


「まず最初に言っておくが、俺以外の男に誘われても絶対についていくなよ?」

「行くわけないでしょ。私を犬か猫だと思ってない?」

「似たようなものだとは思ってる」

「ちょっと!」

「冗談だ」


 連れてきたはいいものの、特に話をするようなこともないんだよな。


『クエストチャーンス』


 と、頭の中に声が聞こえてきた。こういう感じでクエスト進行してくのかよ。妙なお膳立ていらないんだけど。


 咳払いを一つ。とりあえずコイツのちょろさなら簡単に落とせるだろ。


「お前は俺の嫁候補だ。でもそれは絶対に他人に言うな。母さんにもスピカにもだ。いいな?」

「言えるわけないでしょ、そんなこと」

「俺はお前の命を助けた。お前は俺の物だ。いいな?」

「まだアンタの物じゃない」

「そう言われると反論できん」

「で、私はどういう境遇でここにいることにすればいいの?」

「お前、話わかるやつだな。そうだな、母さんたちには命を助けられたからこの家の手伝いをする、とでも言っておけ。田舎だしたぶんそれでなんとかなる」

「わかったわ。それで、部屋に連れ込んでなにをするつもりだったの? この私にいかがわしいことをするつもりだったんじゃない?」

「直球すぎる。でも別になにかをするつもりはない。こういう話をしなきゃならんと思ったから連れてきた。それにそこまで身構えなくてもいい。ここでは普通に生活しててくれればいいさ。狩りとか畑仕事の手伝いくらいはしてもらおうかな」


 エロいことしようにも魔王だからできないしな。


「それじゃあ復唱してみよう。私はアルの恋人」

「私はアルの恋人……じゃないわよ!」

「いいから復唱してくれ。じゃないと面倒なことになる。お前の魔王特性を解除する手がかりにもなるんだ」

「意味がわからないわ……」

「こういう時だけ常識を振りかざすんじゃない。はい、復唱」


 納得できないという顔をしているが、割とコイツは押しに弱い。たぶんこのままなんとかなる。

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