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101回目の異世界転生!  作者: 絢野悠
一章:女の子を三人口説き落とせ!
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三話

 ずっとここに置いておくわけにもいかないだろうし、かといって野放しにするっていうのも気が引ける。爆発しなかったことを不思議に思った魔族が偵察に来るだろうし、そいつらを倒すのも面倒くさい。


 でも嫁候補がどうのって言っちゃったしな。顔が可愛いからって余計なこと言うんじゃなかった。


「そういえば」


 と、シアが口を開く。


「あん? なんかあったか?」

「嫁候補って、どういうことなの? お嫁さんが欲しいの?」

「その話か。うーん、どうだろうな。お嫁さん候補ってだけだ。まだ俺の嫁さんになるとっ決まったわけじゃない。俺の嫁さんになりたければ必死にアプローチするといい」


 めちゃくちゃ偉そうだな俺。でもこれ、悪くないぞ。俺が選ぶんだぞって感じが出てて、非常に背徳的だ。


 客観的にみるととんでもないクソ野郎だな。


「上から目線はムカつくけど、それと引き換えに助けてもらったわけだしね。それに変なこともできないだろうし。子供だって作れない身体なんだから」

「知ってる」


 魔王は子供が作れない。それはこの世界の常識だ。


 魔族というのは、血の繋がりが濃い人間に自分の魔力の一部を譲渡できる。でも魔王がそれをしてしまうと、魔王の子供がどんどん強くなっていって、この世界を崩壊させてもおかしくないバランスブレイカーになる。


「知っててお嫁さんにするの? もしかして、私に痛いことしようとか考えてないでしょうね? そんなことしたらこの町ふっとばしてやるから」

「ディアボリックシンドローム治したのは誰だ? お前の魔力程度、抑えられないほど弱くないんだけどな」

「でも見た目は普通の人間じゃない。魔力だってさほど感じない」

「隠してるからだよ。魔力を開放したら、町の人にも普通じゃないってバレるからな」

「ホント、アンタ何者なのよ……」

「その疑問は時間が経てばわかるって、たぶんだけど」

「まあいいわ、ただの候補なら問題ない。でも魔王を伴侶にしたいだなんて変わってるのね」

「そのへんはまあなんとかなるんじゃないか? ようは魔王としての要素さえ取り除けば普通の魔族になるわけだし」

「そんなことできるの?」

「いや知らない。魔王ってのは魔王城の頂きより天から授かる物。生物から生まれるもんじゃないから、魔王としての特性を消したらそのままお前自身も消えるかもしれない。でも、消えないかもしれない。正直いろいろ試してみないとわからん」


 シアはクッキーを食べつつ、やや真剣な面持ちになった。


「それを試すつもり?」

「お前がいやならそのままにしておくけど」

「死ぬかもしれないのよね」

「そうだな」

「死ぬのは嫌だけど、このまま魔王として生きててもいいことはなさそうなのよね。私は魔王としては不出来だし、私のことを忌まわしく思ってる魔族もかなり多い」

「やってみる価値はある。と、思わせてやりたいところだが、これから考えることだから期待はさせてやれない」

「ふむ、でも私は死ぬ予定だった。魔王として未熟で、最初から期待されてなかった。魔王城の人たちはみんな煙たがって、次の魔王を欲してた。最初から、いなくてもいい存在だった。消えてもいい命、消えるはずの命。それならいろいろ試してからでも遅くない」

「おいおい、そんなこと言うもんじゃないだろ」

「でも、事実だわ」

「事実でも、二度と言うな。そうだな……それじゃあ俺がお前を必要としてやろう。お前は俺の嫁候補だからな。必要とされてないなんて言うな。俺が必要とすれば、その分生きる意味が見つかるだろ? 最初から死ぬ気でチャレンジするんじゃなくて、生きるためにチャレンジしろ。いいか?」

「私が、必要?」

「そうだよ。生きるための努力、絶対忘れんなよ。んじゃ俺は妹のお迎えいかなきゃいけないから、お前はここで寝てろ。夕食には起こしてやる」


 立ち上がろうとした時、手を掴まれた。細くか弱い指先。震えて、力も入らない手。


「私は、アナタを必要としてもいいの?」

「いいよ。だから今は休め」


 シアを横たわらせて布団をかけた。


「おやすみ」

「ええ、おやすみなさい、アル」


 頭を二度三度と撫でると、彼女は糸が切れたように眠りについた。そりゃ疲れてて当然だ。あの病気の辛さを知ってるのは魔王経験者だけだしな。


 まあ魔王経験者はとりあえず死ぬわけだから、ディアボリックシンドロームの痛みを知ってるのは、この世界では俺とシアだけなんだけど。


 瓶とコップを手に取って部屋を出た。


「スピカのお迎え行ってきまーす」

「はーい。買い食いはしちゃダメよー」

「うーい」


 ちなみに父さんはどこにいるのかというと、隣町の病院で入院中だ。だからその間は俺がこの家を守らなきゃいけない。


 でもいつ退院してくるかは謎である。筋肉だるまも腰痛になるんだなっていういい教訓になってくれた。筋肉をつけたから腰痛にならないわけじゃないんだなって。


 スピカを迎えに行って、帰ってくれば夕食の時間だ。毎日こんな感じだが、ルーティンが決まってるっていいことだな。思考停止でも世の中が回ってくんだから。


 シアのことは母さんがスピカに説明してくれた。スピカは下方から「知らない女の人を拾ってきちゃダメってあれだけ言ったでしょ!」と怒られてしまった。


 いや、一度も言われていないが。


 仕方がないので「女の人は拾うって言わないんだよ。連れて来るって言うんだ」と嗜めておいた。「そんなの知ってるわよ!」と腹を殴られてしまった。ちょっと気持ちよかった。


 シアとスピカはすぐに打ち解け、なんとか上手くやっているみたいだ。シアは精神年齢低そうだしな。

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