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101回目の異世界転生!  作者: 絢野悠
十章:モテ期は誰にでも訪れる
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十話

 静かに近くに寄っていくと会話が聞こえてきた。


「ねえいいじゃん。遊ぼうよ」

「そうだよそうだよ、お姉ちゃん可愛いしさ」

「ボクたちと遊ぶの、そんなに嫌? そんなことないよねえ?」


 完全なナンパである。


「嘘だろ……」


 イカツイのが三人並んで幼女体型の子一人をナンパっていう状況をやばいと言わずしてなんと言えばいいだろう。


「いやしかし体型どうのこうのって言うのはよくないな。シアもちゃんとた女性として扱わないと」


 この先、あの体型は成長しないような気がするけど。


「ねえいいでしょお姉ちゃん」


 筋肉質の男がシアの腕を掴んだ。


「今は嫌。また今度にして」


 その発言は意想外だった。シアの性格だから突っぱねるかと思っていたのに「また今度にして」ときたもんだ。


 でもこの感じだとあの三人組を知ってるような雰囲気だぞ。


「もしかして……!」


 俺が知らないところでとんでもなく派手な遊びをしているんじゃないだろうか。


 と、想像してみる。セクシーで派手な格好をたシアが男たちをはべらせている姿だ。もしかしたら夜の方もあったのかもしれない。


「いや、それはないな」


 シアはそんな子じゃありません。


 しかし、俺がどうしてそんなことを言えたのだろうか。シアのことをすべて知っているわけでもない。知った気になってはいるが、実際のところ別行動することだって、他人なんだからあって当たり前だ。その間になにをしているのかなんていちいち訊いたりしないもんだ。


 そんなことを考えていると間に男たちがシアの腕を掴んで無理矢理連れて行こうとしていた。シアも嫌がってるしこのままというわけにもいかない。


「ちょっと待――」

「ちょーっと待ったー!」


 俺の声に被さるように別の男の大声が響き渡った。そして俺とシアの間に一人の男が降り立った。


 魔王である。


「戻ってきちゃったよ」


 またややこしくなる気がする。


「その女は俺がいただく」


 まためちゃくちゃなこと言い出したぞ。


「待て待て待て」


 肩透かし感はあるけどさすがに前に出るしかなくなった。


「なんだ、なにか文句でもあるのか」


 ここでようやく魔王と正面を向いて対峙することとなった。が、なにか違和感がある。この体格のせいか。


「お前、ちょっと背伸びたか?」

「よく気がついたな。っていうかさっきも会っただろうが」

「そこは忘れろ。細かいことは忘れた方がモテるぞ」

「そうか、わかった」


 やっぱこいつバカだわ。


「ちなみにお前に負けたことで俺も成長したのだ」


 昨日今日の間ではあるが身長も伸びているし筋肉も前よりついている。顔も大人っぽい感じになっている。俺と同い年くらいには成長していそうだ。


「確かに未成熟な魔王は成長速度も早いけども」

「そしてこの女が元魔王であることも知っている」


 そこで俺はおもむろに手を叩く。すると周囲にいた人たちが気絶し始めた。魔王だのなんだのって話をこんなところでするんじゃない。


 これはこれで集団昏睡事件になりかねんが、世の中仕方ないことというのはいくらでも存在するからな。


「シアが元魔王だからなんかあんのか?」

「コイツの魔力を吸収すれば俺はもっと強くなれる。あとお前と戦う口実にもなる」


 後者の後付感すごいな。


「もしかしてそのためにシアを狙ってるのか」

「当たり前だ。コイツは元魔王だし、現魔王の俺とは相性がいいはずだからな。魔力をすべて吸い取ればかなりレベルアップできるだろう」


 と、魔王は「がはは」と笑っていた。


「魔力を吸ったらシアはどうなる?」

「死にはしない。五体満足かどうかはわからんないがな」

「そこまでして強くなりたいか」

「当たり前だ。お前のような存在がいるせいでな、俺は魔王として強くなることを強要されてるんだ」

「まあ、人々に恐れられてなんぼだからな」

「そういうことだ。ということで、この女は俺がいただく」


 そう言いながら魔王がシアの方へと向き直った。


 が、シアはいなかった。


「いない……」

「実は俺とお前が話始めたくらいでもういなかったぞ。男三人を連れてどこかに行ってしまった」


 たぶん男たちとは普通に知り合いだったんだろうな。ナンパというよりは顔見知り同士が同じ場所で遊んでいたので「一緒にどうですか」みたいな会話だったに違いない。そうは聞こえなかったけれども。


「知っていたのになぜ止めなかった!」

「シアのこと狙ってるんだろ? だったら知らせてやる必要ないだろ」

「たしかにその通りだな」


 魔王は腕を組んで「うんうん」と唸っていた。すげーバカだけどなんか憎めないんだよなコイツ。

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