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101回目の異世界転生!  作者: 絢野悠
十章:モテ期は誰にでも訪れる
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八話

 シアが急に立ち上がってバチャっと水が跳ねた。


「そう、ならもういいわ」


 シアは視線を外し、そのままどこかに行ってしまった。


「もういいってなんだよ」


 アイツのことがどんどんわからなくなっていく。最初はそこそこ扱いやすいやつだと思ってたのに最近は本当に扱いに困ってしまう。


 その時、後頭部になにかが直撃した。


「あ痛ってー!」


 変な懐かしさがある痛みだがシアがやったものではないはずだ。


 ゆっくりと振り返るとイズルが目を細めて見つめていた。


「そうなるよね」


 俺にダメージを与えられるような存在はこの世界で限られている。シアかイズルか魔王しかいないからな。中途半端な魔力だったらなにかが直撃する前に魔力の動きで察知できる。俺が察知する前に直撃しているわけでからそれなりの実力が必要になる。


「いったいなんだってんだ……」


 カツンと、地面になにかが落ちた。コインだ。


「もったいないって」


 シアもそうだがもっと金は大事にした方がいいぞ。


 でもコインが飛んできたってことは「追いかけろ」ってことなんだろう。が、追いかけてなにをしたらいいのかわからん。


 歩きながら考える。シアを見つけてなにを話したらいいんだろうか。というかそもそもシアはなんで不機嫌になったんだろう。


 そうしてプールの中を十分程度歩いてシアを見つけた。レストランで一人で食事をしているらしい。


「さすがに誰か誘えよ」


 他の奴らが来てることもわかってるだろうに。


 ゆっくりとシアに近づいていくが、シアは俺が近づいているのも気に止めずに食事を続けていた。皿が四枚くらい重なっている。それなりに食べたな。


「無視するなよ」


 テーブルの対面に座って頬杖をついた。それでも食べ続けるシア。


「おい」


 目を閉じて口と出だけを動かしつづけている。これは骨が折れそうだ。


「なあ、関係ないって言って悪かったって。でもそんなに気にすることでもないだろ?」


 俺がそう言うと、シアがフォークをテーブルに突き立てた。


「ええそうね、関係ないわね」


 全部食べ終えたのか勢いよく立ち上がってレストランを出ていってしまう。


「もうなんなんだよ」


 会話もさせてもらえないのかよ。


 急いでその背中を追いかける。


「お客様」


 と、店員に呼び止められた。


「はい?」

「お代がまだですが」

「なにも食べてないが」

「あちらのお客様の分です」


 店員がシアの後ろ姿を指しながら言った。


「アイツ払ってねーのかよ……」

「あとから男の人が来るからその人に払わせろと言われました」

「クソすぎんだろ」


 最初から追いかけてもらう気満々かよ。


 急いで金を払って再度シアを追いかけることにした。もう本当になにを考えてるかわからん。


 そうして二階のバルコニーにやってきた。シアは手すりによりかかって風に当たっていた。


「お前金払ってから出てけよ……」


 俺が声を掛けても振り返らない。さすがに俺も少しばかりイライラしてきた。


 シアの隣に立って俺も手すりにより掛かる。


「なんでそこまで怒るんだよ。ここまでする必要あるか?」


 俺はシアを見つめているが、シアはずっと景色を眺めている。


 どうしたらいいのかわからなすぎて俺も景色を見ることにした。


 後頭部にコインが刺さる。痛みをこらえて奥歯をぐっと噛み締めた。けどどうやっても涙だけはでてきてしまう。


 そうやって十分くらい経っただろうか。シアがようやく口を開いた。


「アンタ、なんで私を治療したんだっけ?」

「いつの話よ」

「一番最初の話」

「ああ、ディアボリックシンドロームのやつね」


 魔力が行き場を失ってたから解消したやつだ。


「なんで治したの?」

「そりゃあのまま放置しておけなかったから」

「可哀想だったってこと?」

「それもあるけど、あのまま放置しておいたらあの辺が消し飛ぶことにもなってたからな」

「もしかしてそれだけ?」


 そこでようやくシアがこっちを見た。


「それだけではない。が、最初のとっかかりというか、助けようと思ったのはそこだな」


 今度はめちゃくちゃ睨んでくる。なんだ、マズイこと言ったのか。いや、言ったな。なんかそれくらいはわかるぞ。「ボク、なにかしちゃいました?」みたいな非常識なことはさすがに言えない。俺は常識人だからな。

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