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101回目の異世界転生!  作者: 絢野悠
十章:モテ期は誰にでも訪れる
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五話

 魔王は片膝をつき、腹を抱えたまま俺を見上げた。


「やるじゃねーか貴様」

「それしか言えないのかよと」


 というかマジで予想以上に弱い。分身かもしれないが、俺の分身よりも圧倒的に弱いではないか。


「とりあえず今お前を倒せば障壁一枚破壊だな」

「できるものならやってみろ!」


 って言われるもんだから少しだけイラッとした。


 拳に魔力を溜めていく。


「おおおおおおおおおおお……」

「ちょっと待て、そこまでする必要は――」

「喰らえ! 必殺の魔法拳!」


 そう言いながら分身の胸に拳を打ち込んだ。分身は叫び声を上げる暇もなく、俺の魔法の前に塵となってしまった。


「成敗!」


 後頭部に何かが直撃した。それは空中で粉々に砕けたが、匂いからするとピーナッツ的ななにかだろう。どうせシアが飛ばしたものだ。


 これで障壁は残り五枚。順調に進んでいる。


「アル!」


 そう言いながらソニアが走ってきた。そして抱きつかれた。


「おいおいおい熱烈すぎるだろ」

「痛いところない? 大丈夫?」

「問題ない。こういうのは日常茶飯事だしな」

「日常的に起きてるからって大丈夫かどうかは関係ないでしょ? 怪我は?」

「もう治った。強力な魔法が使えるからな」

「そう、なんだ……」


 なんというか、こういうふうに心配されるのは新鮮だな。たしかに一般人からしてみれば、こんな戦闘を見て平常心を保っているのは難しいだろう。


「お前が考えるようなことはないから大丈夫だ」

「それならいいんだけど」

「んじゃ帰るか。デートっぽくはなくなったが」

「まだデートっぽくできるよ」

 なんて言って俺の手を取った。

「お前……」


 人生初の恋人繋ぎでそれくらいしか言葉が出ませんでした。


 ソニアは満面の笑顔だった。その顔を見て、なんというか、恋人繋ぎとかどうでもよくなってきた。


 そんなこんなで俺とソニアはまた馬で帰ることにした。ソニアが前に乗っているため、ちょいちょい腕にソニアの胸が当たる。これのために馬に乗っていると言っても過言ではなかった。


 町に帰ってきてソニアの家の前で一旦止まる。


「今日はありがとうな」

「こちらこそ」

「じゃあまたね」


 ソニアが背伸びをして頬にキスをしてきた。


「いきなりそんな大胆な……」


 ソニアは笑いながら家の中に入っていった。まさかここまでぐいぐい来るとは。


「はー、ドキドキする」


 この時は後頭部にはなにも飛んで来なかった。不思議には思ったが、まあそういうこともあるだろうということで納得した。男の後頭部になにかをぶつけ続ける遊びも、さすがに一日続けてれば飽きるだろう。


 家に帰ってきて風呂に入って飯を食って一息ついた。今日の出来事はなかなか強烈だった。魔王はクソどうでもいいのだが、ソニアがあそこまで俺を想っていたとは知らなかった。思い出しただけで顔が熱くなってくる。


「なにを赤面しておるんじゃ」


 どこからともなくじじいの声が聞こえてきた。


「どこだよ」

「ここじゃ」

「ここって言われてもわからん」


 確かに部屋にいる。気配はあるんだがどこにいるのかまではわからない。


「ここじゃって」


 割りと前方から声が聞こえてくる。


 目を凝らして見てみると、なんだかドアに違和感がある。


「お前もしかして」


 俺がそう言うとドアが動いた。


「擬態でした!」


 ドアが盛り上がったかと思うと、木目調のじじいが現れた。


「擬態でした! じゃねーわ。頭どうかしてんのか」

「楽しいじゃろ?」

「これが楽しいと感じるのはお前だけだと思うが」

「わしに子供はいないが、もしも子供がいたらこんな気持ちなのかもしれんのう」

「どういう気持ちだよ」

「ほれ、小さい頃はお父さんお父さんって慕ってくれたのに、大きくなるにつれてそういうのがなくなるって言うじゃろ」

「知らんが」

「まあ、そういうことなんじゃ。ちょっと寂しい気持ちにさせられる。もうお主もその段階にきてるのかもしれんのう……」

「待て待て、よくよく考えれば俺はお前を慕ったことなんてないぞ」

「いつもお願いしてくるじゃろ」

「別にお願いはしてないが」


 利用させてもらってはいるが正しい。


「とりあえずその木目調をなんとかしろ」

「そういえばそうじゃな」


 じじいが指を鳴らすと、木目調が解除されていつものじじいに戻った。

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