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101回目の異世界転生!  作者: 絢野悠
一章:女の子を三人口説き落とせ!
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二話

 足早に山を降りつつ、母さんへの言い訳を考えていた。同時に、この子にも口裏を合わせてもらわなきゃいけない。


 そんなこんなで家に到着。ドアを開けると、母さんが編み物をしている最中だった。


「あら、その子どうしたの?」

「山で拾った。応急処置はしてあるから、とりあえずベッドで寝かせてやりたいんだ。あとこれジャイアントスネーク。今日の夕食ね」

「あらあら、ジャイアントスネークなんて久しぶりね。あんまり出会えない貴重な食料だわ」


 袋を受け取った母さんは、いそいそとキッチンへと歩いていってしまった。結構でかい袋なのに普通に持ち上げるのな。やっぱ母は強いわ。


 とりあえずこの子を俺のベッドに寝かせよう。


 自室に入り、少女をベッドに寝かせた。すると、再び彼女の瞼が開いた。


「ここは?」

「俺の家だ。まだ身体も痛むだろ? しばらく寝てれば楽になるぞ。今水持ってきてやるから待ってろ」

「はいお水」


 そこへ母さんがやってきた。水が入ったガラスの瓶とコップを持ってきてくれたらしい。


「ありがとう、母さん」

「お礼はいいわよ。だって母さんだもの」


 なんて言いながら腕まくりをしていた。ホント、いい家に生まれたな。


 母さんが出ていったあと、コップに水を注いで少女に差し出した。少女は上半身だけを起こし、コップを受け取った。


 喉を小さく鳴らしながら水を一気に飲み干す。喉、相当乾いてたんだな。


 横目でドアが締まっていることを確認。これでようやくまともに話ができるな。


「喋れるか?」

「ええ、喋れるわ。水、ありがとう」

「礼はいいさ。んでだ、どうしてあんなとこにいたんだ?」

「ディアボリックシンドロームで死にかけていたから、魔王城の人たちに連れて来られたのよ。ここなら爆発しても問題ないからって」

「クソ野郎だな。ディアボリックシンドロームの爆発つったら町一つ平気で吹っ飛ぶぞ……」


 俺が見つけなかったらどうなってたことか。


 ああ、なるほど。ディアボリックシンドロームなのに魔力の膨張を感じなかったのは、意図的に隔離されてたからか。今の魔王城はどうなってんだ。


「まあ、助かってよかったな」


 彼女は俯き、手を強く握りしめていた。


「俺はアルファルド=レグルスだ。お前は?」

「私はアナスタシア=ベラドンナ=ララ=オルバレンサ」

「なげーな。俺のことはアルでいい。その代りに俺はお前をシアと呼ぶ。いいな?」

「魔王だということを悟られないためね、わかったわ。それでいい」

「それとこれからはシア=ベランサと名乗るといい。そのままの名前だと魔王ってバレる」

「わかった、従う。それでアル、聞きたいことがあるの」

「なんだ、嫁候補のことか。んじゃ詳しく聞かせてやるとするか」

「いいえ、違うわ」

「うん、知ってるけどもうちょっとマイルドにぶった切ってくれ。どうせ俺がお前をどうやって助けたのか聞きたいんだろ?」

「ええ。アナタは、何者なの?」

「あー、そうだな。なんでもできる超人ってことにしておけ。その方が面倒くさくない。あとお前が魔王で俺が助けたっていうのは他のヤツには内緒な。バレるとさらに面倒になる」

「それじゃ納得できないわ」

「まあたぶんそのうちわかるさ。その時が来たらな」

「今は教えられない、と」

「俺にもいろいろあるの。頼むから理解してくれ」

「仕方ないわね、従ってあげるわ。感謝なさい」


 クッソ上から目線だな。今まで死にかけてたっつーのに偉そうだなコイツ。


 その時、腹の虫が鳴いた。俺のじゃない、シアのだ。


「腹、減ったのか?」

「今のは私じゃないわ。アナタのでしょ」

「じゃあ食事は持って来なくてもいいな」


 そう言いながら立ち上がった。


「私のじゃないけど食事は持ってきなさい!」

「えー、腹減ってないんだろ? だったらいいじゃん」


 彼女は顔を真っ赤にしている。奥歯を強く噛んでいる様子がうかがえる。


「私の、腹の、音です……」

「え? なんだって?」

「私のお腹の音だって言ってるでしょ!」

「どうして欲しいんだ?」

「食事が、欲しいです……」

「ええ? なんだってー?」

「食事があ、欲しい、ですぅ」


 ヤベ、泣いちゃったよ。情緒不安定か。


「わかったわかった、悪かったって。ディアボリックシンドロームのせいで飯もろくに食べてないんだもんな。もうちょっと夕飯までは時間がある。そうだな、夕食までのつなぎにあれでも食わせてやるか」


 ベッドの下からクッキーを取り出す。俺の非常食だ。主に寝る前に食べる用。母さんに知れるとうるさいから隠してある。


 箱からクッキーを取り出し、シアがもくもくと食べ始めた。それにしても食べる速度が遅い。腹が減ってるやつの速度じゃないぞ。


「もっとガツガツいっても文句は言わないぞ?」

「これ以上早く食べられない……」


 可愛いかよ。


「そ、そうか。それならいいんだ」


 クッキーを食べる姿を見ながら、これからどうしようかと考えた。

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