表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
101回目の異世界転生!  作者: 絢野悠
十章:モテ期は誰にでも訪れる
136/153

一話

「ねえ、これ似合う?」


 なんて言いながらソニアがくるくると回ってみせた。スカートがひらりとなびいて、今にもパンツが見えそうである。


 突如、後頭部に硬いものがぶつかった。痛みで涙が出てきた。そのせいで目の前がボヤケるうえに痛みでなにも考えられない。触ってみるとコブになってしまっている。ちなみに今日だけで二十五回目だ。さすがに何回かに一回は避けている。


 頭を抑えながら後ろを振り返ると、少し離れた場所にシアが隠れていた。普通の人間で隠れているつもりなんだろうが、普通の人間よりも魔力がバカ高いので丸わかりなのだ。魔力を抑える技術があったらまだなんとかなっただろう。デカイ帽子に全身真っ黒な服装でなければ、だが。


「逆に目立ってんよ……」


 ここは知らないフリをした方がいいんだろうけど、なんかがあるたびに後頭部に打撃を受けるのだけは勘弁してほしい。


 ちなみにこっちのパーティーは俺とソニアだが、向こうのパーティはシア、ネティス、スピカ、ビリーである。


「びびびび、ビリー!!!!!!!????????」


 なんでいるんだよ。家で太ってろよ。


 俺のパーティは完全にデートであるが、向こうのパーティは俺の監視である。どうして監視されているのかはわからない。唯一わかることがあるとすれば「俺が気付いていないと思っている」という部分だけだ。今でも気付いてないフリをしてやってはいるが、このままいけば俺の後頭部が倍の大きさになってしまうかもしれない。


 どうしてこうなったのか、と言えば二時間前に遡る。


 畑仕事をささっと終わらせて昼飯を食べ、さあこれからお昼寝だと思った時にソニアがやってきた。


「おう、珍しいな」


 いつものように露出が高い服。それに上目遣いで言われてしまったらうなずくしかない。


 ソニアは顔がいい。シアとは違って可愛い系というよりは美人系だ。身長も高めですごくすごい体つきをしている。こんな完璧な体つきをした十代はそうそういない。


 ここでなにかが後頭部を直撃した。めちゃくちゃ痛くて思わずその場でうずくまってしまった。


「大丈夫?」


 ソニアもまたしゃがみこんだ。今度は目線が一緒で心配そうに俺を見ている。なにより気になったのは、膝によって窮屈そうに押しつぶされたお乳様である。


 そしてまた後頭部になにかが直撃。勢いよく振り返るが誰もいない。あるのは床に落ちた二枚のコインだった。


「こんなん頭に当たったら死ぬぞ……」


 まあ生きてるんだが。生きてるけどめちゃくちゃ痛いんだって。こんなことができるのは一人しかいない。


「いったいなんなんだよ……」


 そうやって睨んでいると、今度は後頭部が優しく撫でられた。


「すごい膨らんでる……痛いの?」


 ソニアが撫でてくれているのがわかる。


「小さくする方法、私知ってるよ?」

「お、おおおおおおお」


 撫でられると声が出てしまう。なんだか違うところが大きくなってしまうような会話じゃないか。


「ってそうじゃない」


 立ち上がってもう一度ソニアに向き直る。背中側にはちゃんと見えない障壁を展開したので次は大丈夫だ。


「とりあえず中に入れよ。茶でも入れる」

「そこまでしなくてもいいって。あー、捉えようによっちゃそれ以上面倒なことになりかねないけど」

「なんだ、どうしたんだ?」


 ソニアは顔を赤らめてもじもじしている。この感じ、きっと童貞じゃ気が付かないだろうな。童貞を卒業したヤツにしかわからないセンサーってやつが反応してる。ソニアは俺を誘いたいんだ。どこに、とかはわからないし童貞卒業したのキラーアントの時だったけど。


「今日、時間ある?」


 またこの上目遣いだよ。しかもちょっとだけ瞳が潤んでいる。きっと頑張って、勇気を出してるんだろうな。とても可愛らしい。


 コンっと背中の方で音がした。振り返るとコインが落ちていた。心の中で「ざまーみろ」なんて言った。そしてもう一度ソニアを見た瞬間に後頭部にとんでもない勢いでなにかがぶつかった。まあなにかっていうかコインなんだろうけど。


 パラパラとなにかが上空から落ちてくる。顔を上に向けるとコインが刺さっていた。頭に刺さらなくてよかったけどマジでやばい。迂闊に避けたら人の頭が消えてなくなる。いきなりスプラッタホラーになってしまう。


 おそらく一発目で障壁の強度を確認してから二発目で貫通させたのだろう。魔力が上がっているのでできることが増えたのだ。コインに付加する魔力を上げて無理矢理押し切ってくる。レベルがあがってよかったのか悪かったのか……。


「えーっと、今日時間あるかどうかだっけ。もう畑仕事も済ませたしな」

「じゃ、じゃあ王都に行かない? 服とかいろいろほしい物があるんだけど。ま、まあヤダっていうなら私一人で行くけど」


 なんて言いながらそっぽ向いた。毛先を指で弄び、少しふてくされたような顔をしている。


 こんな顔をされて断れるわけがない。


 コンっ。


「お前一人で行くにはきついだろ。一緒に行こう」


 コンっ。コンっ。


「じゃあ今から行こう」


 手を握られた。あー、女の子と手を繋ぐの気持ちー。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ