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101回目の異世界転生!  作者: 絢野悠
九章:転生とか関係なく強い奴がいると転生者の価値がなくなってしまう件について
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最終話

 偶然とはいえとんでもない場面に遭遇してしまった。明日からあの二人にどう接すればいいか、そんなことを考えながら頭を抱えることしかできなかった。


「べ、別に好きにしたらいいんじゃない? 誰と誰が付き合うとか私にとっては関係ないことだし」


 心なしか言葉の抑揚がおかしいような感じはするが、あの「私には関係ない」というのは割といつものスタンスと一致する。


「当然そうさせてもらうつもり」

「そ、そう……」

「アタシはずっとアルと一緒だった。子供の頃からね。ずっと好きだった。だから誰にも譲るつもりはない」


 ソニアはビシっとシアに人差し指を突きつけた。


 シアはしばらく指先を見つめたあと、一度顔を伏せてから「好きにしたらいいわ」とその場を立ち去った。


 ちょっとだけ寂しそうな顔をしていたが、今追いかけたら盗み聞きしていたことがバレてしまう。そうなればシアに対してもソニアに対しても言い訳しなければいけなくなる。考えなくても面倒になることは目に見えている。


 ふと気がつけばソニアがこちらを見つめているように見えた。


「そこにいるんでしょ」


 心臓が口から出そうだった。


「隠れても無駄だけど」


 このまま隠れてても意味はなさそうだ。どうせバレてるなら早めに出てって方が傷は浅く済むかもしれない。


 ゆっくりと出ていくと、ソニアは小さくため息を吐いていた。


「盗み聞きするつもりはなかったよ? ホントに、マジで」

「わかってるって、そこまでゲスじゃないと思うし」

「そこまでってことは基本的にゲスだと思ってんのかよ」

「そりゃね、今までシアにしてたこと見てれば思うって。話もいろいろ聞いてたし」

「誰から?」

「シアから」


 今すぐ過去に戻って昔の自分を正してやりたい。しかし今そんなこと考えたってどうすることもできないので、ここから自分を正していくしかない。


「ま、まあ人にはいろいろあるからな」

「でも私は羨ましかったよ」

「羨ましかった……?」

「そうだよ」


 ソニアの目がキラキラと輝いているように見えた。潤んでいて、泣きそうだけどどこか色っぽいのだ。


「あーっと、えーっと」


 言葉が出てこない。なんて言ったらいいのかわからないのだ。


 俺はこの世界に転生してきた。この世界で幾度となく転生し続けた。だが恋愛という恋愛をしたことがない。虫とか動物とか魚とかばっかりだったし、人間に生まれ変わっても波乱万丈だった。こういう状況には慣れていなさすぎるのだ。


 いや、逆なのだ。これだけ長く生きているにも関わらずまともな恋愛をしていないせいで、いわば「拗らせてる」状態にあるのだ。自分で言うのもなんだがきっとそういうことなんだ。


「なんで泣いてるの……?」

「泣いてない」


 情けなさ過ぎて涙が出てきた。


 ソニアはそんな俺に近づいてきて涙を拭った。これ普通男の役目だと思うんだけど。


「ねえアルファルド」

「急になんだよ」


 ソニアが上目遣いで俺を見る。気がつけば幼馴染とここまで身長差ができていたんだなと、今あらためて思い知らされた。いつまでも小さな子どもではいられない、ということか。


「明日、私とデートしない?」

「で、でででででデートですか?」

「そう、アタシと、大人のデートしようよ」


 潤んだ瞳が俺の心臓を揺さぶってくる。心臓がうるさく脈打って、今の自分の感情がわからなくなった。


「わかった」


 気付いたらそんなことを口走っていた。


「じゃあ明日、お昼頃に迎えに行くから」


 そう言ったあと、ソニアは背伸びをして俺の頬にキスをした。はにかんだように笑い「じゃあね」と駆け足で帰っていった。


「おう、じゃあな」


 なんて虚空に向かって挨拶した。


 頭の中が急にかき回されるし心臓はうるさいしどうしていいかわからない。俺はただただソニアが駆けていった暗闇をじっと見つめていることしかできなかった。

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