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101回目の異世界転生!  作者: 絢野悠
九章:転生とか関係なく強い奴がいると転生者の価値がなくなってしまう件について
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十五話

 じじいを見送ったあとでシアの部屋に向かった。まあ正確にはシアの部屋なんだが。


「おいいるか」


 中を覗くとスピカが編み物をしている最中だった。あんなに小さかったスピカが編み物をするまでに大きくなるだなんて。


「お兄ちゃんなにがしたいの?」


 編み棒を持ったまま手を止めて上目遣いで見てきた。


「可愛い……」

「怖いんだけど。なんなの?」

「なにって、お前のお兄ちゃんだよ。カッコいいカッコいいお兄ちゃんじゃないか、忘れたのか?」

「かっこよくはない」

「そこはお兄ちゃん補正入れてよ……」


 そういうところも可愛いんだけどね。


「編み物してるのか、誰のだ?」

「誰のでもいいでしょ」

「誰のだ?」


 一瞬で距離を詰めて聞き直した。


「怖い、怖いって。なんで真顔なの」

「いいから言いなさい。これはお前の人生に関わることでもあるんだ」


 好きな男の子、なんて言ったらそいつを地面に埋めなきゃいけない。ちゃんと頭だけは地表に出してやるからな。


「自分用のマフラーだよ。これでいい?」

「なんだ自分用か。それなら問題ない」

「急に穏やかになるのも怖い」

「俺はお前のお兄ちゃんだからな、常にお前のことを心配しているだけだ」


 おっと、本題を忘れるところだった。


「そういえばシアはどこだ?」

「シアちゃんなら散歩に行くって言ってたよ」

「そのシアちゃんって呼び方も可愛い」

「なんなの、気持ち悪いなあ」

「今すぐ抱きしめていいか?」

「嫌だよ、気持ち悪いし」


 なんて言いながら露骨に嫌そうな顔をした。


「でも少しくらいならいいよ」


 とか赤面しながら言った。


「ありがとうスピカ!」


 スピカを抱きしめたあと持ち上げて高い高いしてやった。


「ちょ、ま、編み物、してるから!」


 妹、めちゃくちゃいい匂いがした。


 スピカを下ろして頭を撫で、それからシアを探しに行くことにした。


「なんなの、もう」


 なんて言いながらも赤面していた。やっぱり最強はスピカなのかもしれない。


 家から出てテキトーにぶらつくことにした。狭い町だし歩いてればそのうちシアに出くわすだろう。町中で出会わなくても、しばらく散歩して家に帰ればさすがにアイツも帰ってるはずだ。


 そうやってテキトーに徘徊していると話し声が聞こえてきた。聞き覚えがある声が二つ聞こえてきた。


 民家の角からちょっとだけ顔を出して確認する。


「シアとソニアか?」


 とてつもなく珍しい組み合わせだ。非戦闘員と戦闘員だからな、基本的にあまり絡みがない。


 知っている人同士の会話となれば聞き耳を立てざるを得ない。


「ねえ、シアはアルのことどう思ってるの?」


 いきなりとんでもないところに遭遇してしまったような気がする。


「別になんとも思ってないわよ」


 予想はしていたけれどそれはそれで悲しい。


「本当に?」

「当たり前じゃない。居候させてもらってるだけよ。なにか思うことがあるとすれば感謝くらいかしら」

「そうかー、それなら安心したー」

「安心って、なんで?」

「アタシがアルと付き合ってもいいってことでしょ?」

「付き合うって、恋人として?」

「そうだよ」

「もう付き合うことは決まってるの?」

「いや、これから」


 それを聞いたシアは大きなため息をついていた。


「そ、そっか」

「なんで安心したの?」

「安心なんてしてないわよ! 安心なんて……」

「やっぱりアンタもアルのこと好きなの?」

「そ、そんなわけないじゃない! 誰かとくっついてくれればいいって思って清々してるわよ」

「なんでそんなに慌ててるのかわからないけど、たとえばシアが相手でもアタシは負ける気とかないから」


 ソニアがそんなことを考えてるなんて知らなかった。

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