表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
101回目の異世界転生!  作者: 絢野悠
九章:転生とか関係なく強い奴がいると転生者の価値がなくなってしまう件について
131/153

十二話

 突っ込んでくる分身対して俺も応戦する形で突っ込んでいった。接触する少し前に僅かに身を引いて攻撃の距離をズラせばカウンターでぶちのめせるはずだ。


 と、思っていたんだ。


 激突する直前に俺は後ろに身を引いた。が、分身もまた同じ動作をとるではないか。分身は「なんだこいつ」みたいな感じで俺を見てるのだが、きっと、いやおそらく俺も同じような顔をしているのだろう。


「そういうことかー……」


 まさか俺の分身というのがそういう意味だとは思わなかった。


 例えば俺の分身とイズルが戦った場合、本体である俺とイズルが戦ったのと同じような感じになるんだろう。が、今回のように俺の分身と本体の俺が戦い、なおかつほぼ力が変わらなかったのであれば「コイツはこう動くだろう」という考え方もほぼ似てきてしまうので行動そのものが一致してしまう可能性が高いのだ。


 嫌な予感はするが「なんだこいつ」という顔のまま仕方がなく戦闘を続行することになった。


 イズルが分身の魔法を相殺してくれているので、俺は分身との肉弾戦に集中することができる。俺が右腕を振り上げれば分身も右腕を振り上げ、俺が右に走れば分身も右に走る。なので一生追いつくことができない。当然俺がどういう攻撃をしてくるかもなんとなくわかっているはずなので攻撃も当たらない。ちなみに分身の攻撃だって当たってやらない。


 そうやってクソほど無駄な時間を費やした。俺も分身も傷一つないまま体力だけが削られて、お互いに膝に手のひら当ててゼーハー言ってるだけの状況だ。


「お前、いい加減、倒れろよ……」

「…………」


 分身は首を何度も横に振っていた。喋れないの初めて知ったぞ。


 相手が俺の顔してるっていうのがまた気分が悪い。そしておそらくこの気分の悪さは相手も一緒なんだろう。お前もイヤかもしれないけど俺なんてもっとイヤだぞコノヤローという気持ちで睨んでやった。まあ当然のように分身も睨んできてるよね。


「あーもう、埒が明かん」


 ローラはのびてる、シアは起きない、イズルは魔法を中和するので手一杯、ピルはシアとローラを守ってる。戦えるのは俺だけ。パーティ的にはかなりよかったはずなのに、蓋を開けてみれば割と最悪な状況になってしまった。戦えるのが俺だけだからそりゃそうだ。


 だが、もう少し粘れば戦況も変わるはずだ。分身は魔法を使い、イズルがそれを中和している。つまり俺は大きな魔法を使っていないので、俺は分身よりも魔力に余裕がある。ではどうして殴り合いにもならない殴り合いを続けているかと言うと、この魔力の差を更に広げたいという狙いがあるからだ。中途半端にリードしたって意味はない。やるなら一気にやらないと、逃げられでもしたらそれこそ面倒なことになる。


 そうしてまた俺と分身がお互いの元に駆け出した。きっとイズルも予想しているが、ここからまた追いかけっこが始まるだろう。


 ――と思っていなかったやつが一人だけいた。


 横から何かが飛び出してきて、その何かが分身にぶち当たった。


「おらあっ!」


 なんて言ってるところからするに間違いなく人間だ。


 そいつは分身の左頬に蹴りをくれていた。その人物こそ今までなにもせずに眠っていたシアだった。


 分身はシアに蹴り飛ばされた。イズルが結界を張ってくれているおかげでどこかに行かなくて済んだ。


「お前、大丈夫なのか?」


 俺が話しかけるとギロっと睨みつけてきた。


「大丈夫よ」


 めちゃくちゃ怒っとるがな。目尻を目一杯釣り上げて眉間にシワを寄せてる奴が「怒ってないよ」と言っても無理がある。


「ホントに?」


 顔を覗き込むと俺の意識が飛んだ。急にブラックアウトするもんだからなにが起きたのかわからなかった。


 よくよく思い出してみると、視界がブラックアウトする間際に鋭いなにかが俺の顔面を引っ叩いていたのだ。そう、俺はシアに顎を殴られたのだ。


「おまっ、仲間……」

「うるさい」


 ビンタが飛んできてまた気を失う、そして復帰。


「殴るのはアイツにして――」


 またビンタされて気絶からの復帰。


「待っ――」


 はいビンタ。


「ちょ待てい!」


 更に飛んできたビンタをようやく受け止めることができた、からの顔面キック。


「話くらい、聞いて、ホントに……」


 気絶して復帰してを繰り返すの、こんなに疲れるとは思わなかった。なんというか復帰した時に「今なにしてたっけ」って感じで周囲の状況から今の状況を確認するのがクソほど疲れるのだ。


「あとで、埋め合わせはするから、今は助けてくれ」


 すでに顔面はボコボコであるが、とにかく謝り倒して静止してもらわないと話もクソもない。


「埋め合わせ?」


 シアは動きを止め、けれど非常に機嫌悪そうに眉間にシワを寄せた。


「なんでもいうこと利くから、ホントに」

「二言は」

「ないって」

「わかった。とりあえず今だけは助けてあげる」

「ありがとうございます」


 深々と土下座でお礼を申し上げた。


 俺たちのやり取りを待ってたのか待っていなかったのかはわからないが、急に分身が襲いかかってきた。


「ホント律儀だな」


 よくある「変身シーンには絶対攻撃しない敵」そのまんまである。アイツら何秒も変身待ってるくらい気が長いからな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ