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101回目の異世界転生!  作者: 絢野悠
九章:転生とか関係なく強い奴がいると転生者の価値がなくなってしまう件について
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十一話

 そうやってコミュニケーションを取りながら赤い点へと近づいていく。徐々に分身の魔力が強くなっている。


「これくらいならキミ一人でも大丈夫だったんじゃないか?」

「じじいが俺一人だときびしいって言うからお前らを連れてきたんだ。勝てるかもしれんが負ける可能性を下げたい」

「じじいって神様のことか」


 そう言ってイズルは視線を下げた。


「そういえばじじいの話してなかったな。会ったことはあるのか?」

「何度かね。でも神様とボクじゃ考え方が違ったから、いつの間にか現れなくなったんだ」

「お前は力の権化だしじじいは平和主義主義だからな。反発してもおかしくはない関係だわな」

「平和主義なら傍観していればいいだけだよ。ボクは戦争を起こしたいわけじゃないんだから」

「アイツの場合はそういうんじゃなんだなこれが。戦争みたいなのは当然嫌いなんだが、そもそもトゲトゲしたのが嫌いなんだ」

「ボクだってトゲトゲしてたわけじゃない。それにこの世界の人々だて戦争だの諍いだのって、ボクが介入しなくても争っていたじゃないか」

「それはこの世界に元々からいた人たちだからだろうがよ。俺とかお前みたいな異物が介入するのを嫌うんだよ」

「でもボクたちをここに送り込んだのはあの人でしょ?」

「そのへんはいろいろあるみたいだぞ。結局アイツはこの世界の神様でしかないし、バグだのなんだので転生を繰り返してるとか言ってたしな。神様だからってなんでもかんでも思い通りになるかっつーとそういうわけでもないみたいだ」

「神様なのに?」

「言ってやるなよ」


 正直なところ、俺もじじいの思考が全部わかっているかというとまた別の話だ。アイツがどの程度のことができるのかもわからないから仕方がない。


 歩き続け、ローラが前方を指差した。


「見てくれ師匠」


 指差した先には赤青紫緑と色とりどりの炎が混ざり合って揺らめいていた。風もないのに揺れているものだから見た目からして不安になる。


「魔力量からしてあの炎が分身みたいだな」


 分身っていうくらいだから魔王と同じ見た目をしてるかと思ったがそうでもないのか。


「それでは叩き切ろう」


 剣を抜くローラを手で制す。


「待て待て。こういうのは俺が行く」


 ここで役目を取られたら俺がいる意味がなくなってしまう。正直なところ、イズルを倒したのだってローラだと言っても過言ではない。ローラがぶった切ったからイルズが機能停止したんだからな。


「ここでお前が行ったら俺の価値が下がるだろ」

「師匠は師匠だ! 私にとってとてつもない価値がある人だぞ!」

「もううるさいよ恥ずかしいな」


 このド直球な感じは嫌いじゃないんだが、本人が恥ずかしがらないせいで周囲が余計恥ずかしくなるアレである。


 炎に近づいていくとどんどん人の形に変形していく。そして気づいたら俺の顔になっていた。


「そういう感じかー……」


 逆にローラの方がよかったんじゃなかろうか。


「お前か、我の邪魔をしようというヤツは」


 魔王の分身がそう言った。声の高さからいって魔王本人なんじゃなかろうか。


「だったらどうした」

「我とやり合うなど命知らずもいいところだ。本気で我に勝てると思っているのか?」

「じゃなかったらこんなことしないだろうが」

「確かにそうだな。では小手調べといこうではないか。この分身はお前の分身でもある。さあ、お前はお前自身に打ち勝てるかな?」


 そこまで言ってから分身が襲いかかってきた。


「待て待て待て!」


 まだシアをおんぶしたままなのだ。さすがに戦うには準備が足りなさ過ぎる。


「私が時間を稼ぐ!」


 目の前に飛び出してきたのは抜身の剣を振りかざしたローラだ。まあ攻撃力だけは高いからなんとかなるだろ。


「うおおおおおおおおおおおおお!」


 ドーン。


「ぐあああああああああああ!」


 ワンパンじゃん。


「使えなさすぎないか……」


 防御力が低いとかそういうレベルじゃ済まない。


「ピル、頼んだぞ」

「ぴぃ!」


 ピルの背中にシアを乗せると、ピルは短い足を素早く動かして走り去っていった。ピルが一緒にいれば流れ弾でどうこうなることはないだろう。


 分身が目一杯拳を打ち込んでくる。それを手で払い除けながら防ぐ。のだが、さすが俺の分身だけあって早く力強い。


「さすが世界最強だぜ……!」


 そんな時によこからイズルが飛び蹴りをかます。


「ボクはキミにやられたわけじゃないからね」」


 分身は霧の中にぶっとんで行ったがすぐさま帰ってくる。痛覚もなければ怯むということもないだろうし、長期戦になったら不利になるのは間違いなさそうだ。


「総合的に俺の勝ちなんだからいいだろ」


 分身はがむしゃらに魔法をぶん回して突っ込んでくる。俺と同等の魔法が使えるなら、力いっぱい魔法を使えば山一つ簡単に吹っ飛ぶ。つまり分身と戦うやつと、分身の魔法を抑えるやつに分かれて戦わないといけないということだ。そしてこの状況でできる役割分担など一通りしか存在しない。


「おいイズル! お前は分身の魔法を抑えろ!」

「一対一で倒すってことかい?」

「話が早くて助かる」

「やるとは、言ってないんだけどね」


 とか言ってはいるが絶対にやってくれるんだろうな。俺の知り合いは律儀なやつばっかりだしな。

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