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101回目の異世界転生!  作者: 絢野悠
九章:転生とか関係なく強い奴がいると転生者の価値がなくなってしまう件について
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八話

 一番近いのが白、次いで緑、青という感じだ。一番遠いのが赤い点というのが救いかもしれないな。


 とりあえず白い点に向かうことにした動いていないので見つけるのも捕まえるのも簡単だろう。


 アイツらの居場所はタブレットでわかる。が、霧が濃すぎて地形がよくわからない。この葉に頬を切られ、太い枝に頭をぶつけ、大きな岩に足を引っ掛けて転ぶなどいろいろな不幸に見舞われながら前進し続けた。


「おい、笑いすぎだぞ」


 俺になにかがあるたびにピルが笑うのだ。俺の後ろを歩いてるからって、そこまで楽しそうにしなくてもいいと思う。


「だってアル、面白いんだもん」

「そんなこと言うならお前が前歩けよ。これ貸してやるから」

「うんいいよ!」


 タブレットを渡し、ピルを先頭にして再度歩き始める。


 と、先頭が変わった瞬間に平地になりやがった。なにか起きる可能性があるとすれば砂利で滑って転ぶくらいしかないぞ。


「あー、つまんない」


 でもなんというか、逆を言えば「幼女に不幸が起きればいいのに」と言っているのとそう変わらないので何も起きない方がいいのかもしれない。


「やっぱりアルは日頃の行いが良くないんだよ」

「んなわけあるか。俺は良いことばっかり――」


 目の前に太い枝が現れ、思い切り頭をぶつけてしまった。


「っつー……」

「先頭じゃなくてもこうなるじゃん」


 なんて言いながら笑っている。俺とピルの身長差を考えずに歩いたのがいけなかった。


「もういいよ俺が先頭で」


 ピルが先頭だと「安全なんだな」と思ってしまうからいけない。


 俺は全身に魔力を纏わせて歩くことにした。これなら枝とか葉っぱなら俺の体に触れる前に焼け落ちるはずだ。ピルに影響がないように生体反応があるものだけは透過できるようにした。


 が、やはり突き出た岩だけはどうすることもできずに何度もコケた。


 そんなクソみたいな感じで白い点に到着した。理由はわからないがイズルは岩の上で体育座りをしていた。なんというか、話しかけづらいな。


「大丈夫か?」


 そっと肩を掴んで体を揺さぶる。が、顔をあげようとしない。


「なにがあったんだ?」


 できるだけ優しく話しかけてるつもりなんだがなにがいけないんだろう。


「おいピル。お前がやってみてくれ」

「うい!」


 今度はピルに話しかけてもらうことにした。俺は少し離れた位置で傍観だ。近くにいたらいけないような気がしたからだ。


「ねえねえ、大丈夫?」


 腕を掴んでイズルの体を揺さぶる。イズルがゆっくりと顔を上げた。


「なんでだよ」


 さすがに納得いかなすぎる。しかしここで話しかけたらまたふさぎ込んでしまうかもしれない。


「怖いの?」

「……うん」


 ピルがイズルの頭を抱きしめると、イズルはピルの体を抱きしめる。めちゃくちゃ絵になる光景ではあるんだけど、こっちの心情としてはこの光景を美化して見ることができないというのが本音だ。


「おい」


 しかしこのままでは前に進まないので話しかける。


「なに?」


 どうしてコイツはこんなにも俺のことが嫌いなんだ。確かにコイツのことボコボコにしたのは認めるが、元はといえばコイツがふっかけてきたのが始まりじゃないか。


 そう考えてたらイライラしてきた。なんで俺がコイツの事情だけで精神衛生を害されなきゃならんのだ。


「えーいやめたやめた」


 二人を引き剥がしてしゃがみこんだ。


「いつまでもガキみたいにいじけてんじゃねーぞ。なにが不満なんだ? 俺がお前を倒したことか? でもそれはお前が最初に仕掛けてきたことだろ? なんなんだよ……」


 今もイズルは怯えた目を俺に向けていた。そんなに怖くないだろ。


「だって……」

「だってなんだよ」

「だってぇ……」


 泣き出してしまった。


「ああもう泣くな泣くな。俺に改善点があればいくらでも治すから」


 ハンカチで目元を拭ってやる。ついでに鼻水も。


「ホント?」

「二言はない」

「じゃあ逆さ吊りにして高速で振り回したりしない?」


 決着の次の日に罰ゲームとしてやったやつだ。足首をロープで縛ってから上空へ移動し、ロープの反対側を持ってただ振り回すだけの遊びだ。イズルの魔力は以前とは比べ物にならないほど弱いので、地面に叩きつけられでもしたらかなり危ない。というのを本人もわかっているのでめちゃくちゃ怖がっていた。


「しない、もう二度としないから」


 悪かったとは思っているからな。


「じゃあ一日三食ブロッコリー料理にしない?」


 これはイズルがブロッコリーが嫌いなことを知った翌日にやった遊びだ。二日間続けたら泣いてしまってやめた。


「絶対やらないから」


 ここまで来るとただのイジメだな。誰がやったんだ。俺だな。


「じゃあ私が入る時だけお風呂ぬるぬるにしない?」


 イズルが風呂に入る時に水がスライムになるようにしたことがある。普通の水ではあるしシャワーは生きているので、悲鳴を上げながらもなんとか上がってきた。ちなみに次の日もやった。


「マジでもうやらないから。悪かったと思ってるから」

「ボクも悪かったと思うけどぉ、これじゃああんまりじゃないかぁ」


 めちゃくちゃ泣き始めてしまった。確かに俺もやりすぎたなとは思ってるし、今となっては「そりゃシカトもされるわな」って思う。


「嫌がりそうなことは二度としないから機嫌治してくれ。その代わりに俺を無視するのとかやめてくれよ。これであいこだ、いいな?」


 イズルが小さく頷いた。これで一応仲直りはできたと言っていいだろう。

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