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101回目の異世界転生!  作者: 絢野悠
九章:転生とか関係なく強い奴がいると転生者の価値がなくなってしまう件について
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六話

 クソみたいなやりとりが終わると目的地に到着した。


「スッキリしたような顔しやがって……」


 ピルの背中から降りながら言う。ローラがあまりにも幸せそうな顔をしているもんだから愚痴ってしまった。


「まあスッキリしたからな」

「俺のおかげだってわかってるよね?」

「わかってる。でも師匠もちょっと嬉しそうな顔してたからトントンかなとも思っている」

「その言い方だと俺が変態みたいじゃんか……」


 他人のおしっこの処理して嬉しい顔ってヤバいだろ。


「でも嬉しそうだった」

「たぶんだけどそう見えたのお前だけだから」


 面倒臭さもそうだが、なんだか俺の方が恥ずかしくなってしまってなんとも言えない顔になっていたかもしれない、という自覚はある。


「ホント、アンタって女なら誰でもいいのね」


 なんてシアが言いながら俺の後ろを通り過ぎていった。


「信じられないね」


 今度はイズルが俺の後ろを通過する。文句しか言わないやつらを連れてきてしまった。これは後々俺のメンタルに影響しそうである。


「先が思いやられる……」

「大丈夫。私がいるからな」


 ローラだけはいつも前向きで嫌味を言わない。ちょっと馬鹿だけど一緒にいて一番楽かもしてない。


 でもお漏らしは二度とゴメンだ。


 森の中を進みながら魔王の分身を探す。タブレットに赤い点が出ているから位置は把握できている。ここから直線で位置キロくらいなもんだ。俺だけなら一分もかからないが全員で移動することを考えれば普通に歩いて進んでいくのがいいだろう。


 俺がずんずん歩いているとシアが横に並んできた。横目で見下ろすとめちゃくちゃ機嫌が悪そうである。いつも以上に目つきが悪くて、話しかけたら「はっ倒すぞ」とか言われそうな気配がビンビンである。


 しかし目があってしまったらなにも言わないわけにもいかなくなってしまう。


「なんで怒ってるわけ?」


 じっと見つめたまま言葉を返してくる気配がない。ただただ俺のことを下から睨みつけてくるだけだ。


「なにか言ってくれないと」


 それでも上目遣いで睨みつける。


「シアちゃん?」


 口はまったく動かない。


「シアさん……?」


 さすがに怖くなってくる。そこまで恨まれるようなことをした覚えがないんだけどどうしてこんなに睨んでいるのか。


 が、喋ることを無理強いするつもりもない。


「わかった。お前がそのつもりだったらそのままでも構わん。その代わり二度と口を利かない。これでいいな。喋るつもりないんだもんな、この先一生話をしなくてもいいんだもんな」


 俺はわざとらしく残念そうにため息をついた。


「べ、別にそこまでしなくても……」


 小さく言ってから目を逸してしまった。こうなるだろうなっていうのは予想してたけど、いざ本当にこういう状況になるとちょっとだけ可愛いなって思うようになってしまった。


「いやー、本当に残念だ。もう一生シアと喋れないんだな。残念だなー」

「今喋ったでしょ!」


 再度見上げるシアだが、先程とはちょっと違う睨み方をしていた。顔は赤く恥ずかしそうに口を歪めている。


「これからは買い物行く時もピルかスピカを誘うしかないのかー」

「買い物行く時にちゃんと誘ったことないじゃない!」


 大体は腰掴んで小脇に抱えるみたいな感じだったしな。


「お風呂も一緒に入れないなー」

「それは別にいいや」

「一緒に寝れないなー」

「それも大丈夫」


 引き合いに出すカードがなくなったが。


「まあいいか。どうせ二度と喋らないしな。食事をしてても遊んでても話してくれないならいないのと一緒だからな」

「だから別にそこまでしなくていいんだってば!」


 俺の前に出てきて脚を止めさせた。そこまでして訂正させたいのか。


 思わずため息をついてしまった。


「じゃあ今度から無視なんてするんじゃないぞ。今はまだ家族だからな」

「わかった。って、今はってどういうこと?」


 急に顔が曇り始めた。心なしか怒ってる感じは残っているが、その怒り方もさっきと違うような気がする。


「そりゃそうだろ。せっかく魔王としての特性が消えたんだ。お前にだってやりたいこととかあるんじゃないのか? 今は見つからなくてもきっと見つかるさ。それまでは家にいていいからな。いや、別に帰ってきてもいいけどな。つまりお前の実家だと思ってくれていいから」


 シアには家がない。両親もいない。であればあそこを実家だと思ってくれれば嬉しいと思う。


「なによそれ」


 また不機嫌になった。下を向いてちょっとだけ拳が震えているように見える。


「シア?」

「もう知らない!」


 振り回した腕が俺の顎を直撃した。薄れゆく意識の中でシアが森の中に駆けていくのが見えた。が、それが意識が途切れる前の最後の光景だった。

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