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101回目の異世界転生!  作者: 絢野悠
九章:転生とか関係なく強い奴がいると転生者の価値がなくなってしまう件について
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五話

「ねえ」


 そんな時にシアが話しかけてきた。


「なんだ、どうした」


 振り返るとなんだかもじもじしてる。顔も心なしか赤い気がする。


「もう、こんなところで?」


 思わずため息をついてしまった。


「こ、こんなところでってなによ!」

「いやだってお前なあ。ダメだよこんなところで」


 コイツがなんで俺に話しかけてきたのかはなんとなくわかる。


「なにがいけないの? ちょっと話をしようと思っただけでしょ」

「そうなの? てっきりおしっこかと思ってたわ」

「トイレって言わない……?」

「おしっこって言った方がほら、ちょっといい感じじゃない?」

「アンタの性癖は知らないわよ」

「おっと、おしっこはもう少し我慢してくれよな!」

「だからおしっこじゃないから!」

「だったらなんなんだよ。おしっこ以外で俺に話しかけてくることある?」

「アンタは私をなんだと思ってるのよ……」


 そう言われると困る。基本的になにか用事がなきゃシアが俺を呼ぶことってないしな。だから今回もなにかあるかと思っていたんだが。


「なんだろう体よく使える戦友、とか?」

「それ戦友っていうよりも奴隷に近いんじゃない?」

「さすがに奴隷は言い過ぎだろ。それに俺はお前のこと奴隷とは思ってないからな」

「でも体よく扱えるとは思ってるわけだ」

「そらそうよ。お前を救ったの誰だと思ってんだよ」

「……アルファルド」


 なんでちょっとだけ溜めたんだよ。


「まあそういうことだ。お前は俺に借りがある。それだけだろ」

「それは仕方がないかなって思うけど」

「けどってなんだよ」

「それだけじゃないんじゃない?」

「なにが言いたいのかわからないんだが、俺とお前の間に貸し借り以外になにかあるってことか? なんかあったか?」


 途端にシアが纏う空気が変わった。なんというかピリピリしてて今にもぶん殴られそうな感じがある。


 シュッと、拳が空を切った。


「死ねっ!」


 急いで顔面をガード。が、拳が腹部にめり込んだ。


「ごほぉ……」


 レベルが上がったせいでパンチ力が増している。これまで以上に防御力を上げていかなきゃいけないな。じゃないとこのバイオレンスパンチに毎回やられることになってしまう。


「なんでいきなり殴られなきゃならんのだ……」

「自分の胸に聞いてみな!」


 今度はローキックをぶちかましてきやがった。そのせいで巨大ピルの上で無様にコケることになった。そのまま転げ落ちそうになったがさすがにそれだけは頑張って耐えた。


 立ち上がった時、シアはすでに遠くに離れていた。なにやらイズルと話し始めたらしい。アイツら二人でなに喋るんだよ。どうせ俺の悪口なんだろうけども。


「師匠ー!」


 今度はローラか。なんで一人ずつ話しかけてくんだよ。そういうイベントかよ。


「なんだよ」

「なんでそんなに不機嫌そうなんだ?」

「よくわからんままぶん殴られりゃ不機嫌にもなるわ」


 魔王の分身と戦う前にテンションダダ下がりだわ。正直シアとイズルだけで戦って欲しいくらい。


「まあまあ、シアもいろいろあるんだ」

「いろいろってなんだよ。そのいろいろを教えて欲しいんだけど」

「それは師匠が自分で考えないとダメなやつだからなんとも」

「お前まで俺をないがしろにするのか……」

「そういうわけじゃないんだけど、きっとその方がシアも喜ぶと思うから」


 なんだかよくわからんが、とにかくシアが怒った理由を自分で考えて謝れってことか。


「で、お前はそれを言いに来たわけ?」

「そうではない。どれくらい時間がかかるかなと思って」

「なんだ、疲れたのか?」

「いいえ、おしっこです!」

「お前がかよ」


 ここで伏線回収すんのやめろや。あとめちゃくちゃ男前なのもなんとかしろ。


「で、どれくらいかかるんだ? 漏れそうだ」

「もうちょっと、もうちょっとだからもうちょっと我慢してくれ」

「すぐ着くんだな?」

「すぐ着く! すぐ着くから! しゃがみこまないで! パンツ脱ぐ仕草しないで! ピルの上でお漏らししないで!」


 ピルが可愛そうなのとローラの尊厳を守る必要がある。まあ失われる尊厳も俺とシアとイズルとピルの中だけなんだが。それでも女の子として超えちゃいけない一線というのは俺が守ってやらなきゃならん。


「いや、辛抱たまらん」

「やめ、やめろー!」


 思い切り手を伸ばしてローラに魔法をかける。若干だが痛覚を麻痺させたり、尿を生成する時間を巻き戻したりと小手先の魔法をいくつかかけた。俺はこんなことに魔法を使うとは思ってみなかったぞ。

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