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101回目の異世界転生!  作者: 絢野悠
プロローグ
12/153

18歳

 今日で高等部を卒業。俺は父さんと一緒に農業と狩猟をしていくことに決めた。


 この世界では職業が決まると役所に行かなければいけない。役所で個人証明証を発行してもらわなければいけないのだ。


 学生の頃は学校がその証明証の代わりをしてくれるのだが、卒業すれば証明してくれる場所がなくなる。だから証明証が必要になるのだ。


 それでも一流の冒険者を目指す奴らなんかは十歳とかで証明証を発行する。なぜかと言えば、その証明証は自分の限界レベルや魔法適正、ステータスなんかが書かれているからだ。冒険者を目指すのに限界レベルが低いっていうのはかなり致命的だ。


 限界レベルが低いと冒険者には向かない。そりゃそうだ、それ以上強くなれないんだから。格差社会ここに極まれり、といった感じだ。


「アルー、お野菜たくさん採れたからソニアちゃんの家にお裾分けしてきてちょうだーい」

「あー、うん。わかった」


 あんまり行きたくねーんだが、母さんに言われたら仕方ない。


 野菜が入ったカゴを持って家を出た。ソニアの家はちょっと離れているが、小さな村だからあってないような距離だ。


 ソニアの家に到着し、ノックを四回した。


「はーい」


 そう言って出てきたのはソニアだった。


「あ? なんだよ、アルじゃん」


 頭をボリボリと掻き、めちゃくちゃダルそうだった。


 金髪に褐色、そして美人。それは昔から変わらない。変わらないのだが、髪の毛の毛先の方には軽くパーマをかけ、いかにもギャルって感じの見た目に豹変してしまったのだ。パーマというかゆるふわウェーブみたいなものを熱をかけて作っているみたいだ。ドライヤーなんてないから、熱した鉄の棒とか近づけるとかどっかで聞いた。


 この世界にはギャルという概念はないと思うのだが、この女は自分の見た目を使って見事ギャルを体現してしまったのだ。


 高等部に入ってすぐだったか、付き合う友人なんかも変わって、俺ともあんまり喋らなくなって、気付いたらこんなふうになっていた。あの時ちゃんとキープしておけばこんなことには……。


「母さんが野菜持ってけって。ほらよ」

「ん、ありがと」

「それじゃあ帰るわ」

「もう帰んの? 今来たばっかじゃん」

「野菜を届けに来ただけだって。それとも寄ってった方がいいか?」

「べ、別にそうとは言ってないじゃん! 早く帰れよクソマザコン野郎!」


 バタンとドアがが閉められた。もうなんなんだよ……。


 ちなみにビリーはあれからもエネルギーを溜め続け、高等部ではイジメの対象にまで進化してしまった。


 一応それとなく守ってはいたんだが、ビリーの脆弱な精神ではイジメに耐えきれなかったらしい。すぐに引きこもりになってしまった。あのガキ大将が引きこもりとは。


 日が落ちてきて、いい風が吹いてきた。こちらの世界には四季がほとんどない。その代りに地域ごとに気候が大きく異なり、その地域はずっと冬だったり夏だったりする。この村はずっと秋って感じだから過ごしやすい。


 公園のベンチに座って空を見上げた。綺麗な茜色。こんな風景を彼女と一緒に見たかったなぁ……。


 そう、俺はまだ童貞なのだ。キラーアントとしか性交したことがない。さすがに今回もこの調子だと焦りも出てくる。


「あー! お兄ちゃんこんなところにいたー!」


 公園の入口を見ると、見慣れた顔の女の子がいた。紛うことなき俺の妹、スピカである。


 スピカは不機嫌そうに歩いてくると、俺の目の前で立ち止まった。腰に手を当て「怒ってるぞ」というのを存分にアピールしているらしい。


「もうお夕飯なんだからね! 早く帰って来ないとお母さんに怒られちゃうんだから!」

「ああ、ごめんごめん。それじゃあ帰るか」


 立ち上がってスピカを見下ろすと、スピカは俺に手を差し出していた。


「また迷子にならないように手を繋いでいてあげる。ありがたく思ってよね」

「そうだな。迷子になっちゃうからな」


 小さな手を取って歩き出した。心なしかスピカは嬉しそうだった。


「お兄ちゃんはホントに仕方ないんだから」


 満面の笑みで言われても説得力がない。が、これを言うと怒られそうだから黙っていよう。


 あれからいろんな変化があったが、まあそこそこ元気にやっている。

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