十七話
そして、考えている間にも化け物の腕が振り下ろされる。
シアの魔力が上がっていく。が、シアの魔力だけでは防ぎきれないかもしれない。ネティスあたりを切り捨てればなんとかなりそうではあるがシアが他人を犠牲にするとも思えなかった。
どうしたらいいのか。そんなことを考えていると俺たちの前に一つの影が現れた。
「私を忘れてもらっては困るなあ!」
まさかネティスだけじゃなくローラまで来ていたのか。手には今で見たことがない黒い刃の剣が握られていた。
ローラが剣を掲げると剣が光出す。一瞬にして剣は大きく太くなった。そして化け物に向かって一気に振り下ろした。
化け物は剣に触れた瞬間に、蒸発するように溶けて消えていく。まるで浄化されているのかといった感じだ。
「嘘だろ」
俺でさえ魔力の塊だと思った化け物を一刀両断というか完全消滅させてしまいおった。しばらく見ない間にいったいなにがあったというのか。
なんかイズルも呆けているみたいだしタブレットで確認しよう。
ローラ
職業:剣聖
武器:剣
レベル:200
所有スキル:勇者の資格・極
英雄の資質・極
精霊の加護・中
天稟・観察眼
鋼の肉体
鋼の精神
グラムホルダー
剣聖
興味本位程度の感覚で開いたがとんでもないものを見てしまったようだ。
勇者の資格も英雄の資質も数段上の上位版にパワーアップしてるし、いつの間にかいろんなスキルを身に着けているではないか。
精霊の加護はステータス異常を防ぐものか。中ってことはこれからまだレベルアップしそうだな。
天稟・観察眼は見ていろいろ覚えられるし動体視力にも優れている。いわゆる「目がいい」というやつだ。
鋼の精神と鋼の肉体は身体的強度と精神的強度が一定以上になると取得できる。傷にも精神攻撃にも強い。
グラムってのはあの魔のことだろうが、スキルになるってことは貴重かつすごい力をもったものだろうというのはわかる。魔剣とかじゃなきゃいいが。
なによりも気になるのが「剣聖」という文字だ。
「いつの間に剣聖になったんだコイツ……」
っていうか勇者じゃないのかよ。まだ魔王を倒してないから勇者になれないとかそういう感じなのか。でも勇者の資格は最初の状態でも魔王に対して攻撃力が上がるとかそんな特性があったはずだ。俺がそうであるように、きっとイズルもまだ魔王としての特性を多少持っていると思われる。
いずれにせよネティスと違ってかなり戦力になる。
ローラの横に並んで声をかけた。
「ツッコみたいところはいろいろあるけど今はそれどころじゃない。手を貸せ」
「言われなくてもそうする。師匠のためだからな」
「師匠と言われてもなにもしてないがな」
「師匠の動きは見せてもらった。あれだけで十分私の力になる」
そうか、前見た時には天稟を持っていなかったが、天稟を開花させて俺の動きを見続けた結果ということか。
いや待てよ。そもそもコイツはブラックノワールがアルファルドだってことは知らないはずなんだが。
「お前の師匠ってブラックノワールだろ?」
「だからアルファルドが私の師匠ではないか」
「いつから知ってたの?」
「いつからだろうな。修行を続けてたらブラックノワールとアルファルドの魔力が同じだということに気がついた。それに身のこなしがそっくりだ」
観察眼怖すぎだろ。
しかし戦力が揃ったことは間違いない。
ピルフェットという盾、ローラという剣を得たのだ。あとはコイツらを軸にして、アイツを倒す作戦を考えるだけでいい。
それがすぐにできたら苦労はしない。
シアを見ると力強く頷いていた。
ピルを見ると笑っていた。
ローラもまた快活そうな笑顔を浮かべている。
一応ネティスを見たが拳を握りしめてこちらを見ていた。なにかしろよ。
「まあいい、とにかく全員でアイツをぶっ潰すぞ」
「おー!」
全員で声をあげた。