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101回目の異世界転生!  作者: 絢野悠
八章:新たな問題
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十六話

 そうだ、コイツのせいでこん状況になっているのだ。コイツさえいなければシアに知られることなくコインを集められたし、平穏な日常を続けることもできたのだ。


 まあ、本当に平穏かどうかは判断が難しいところだが。


 イズルがニヤリと笑った。こればまたムカつく。


「言ったでしょ。レベルを足したところで意味がないんだよ」


 イズルを中心にして小さな嵐が巻き起こった。接近したはずなのにすぐに引き剥がされてしまう。


 だがやはり、コイツは近距離戦よりも遠距離戦を好んでいるように見える。俺に近づかれても余裕を見せていられるのは近距離戦が得意なのではなく、簡単に距離をとることができるからじゃないだろうか。


 まあそれがわかったところで対処方法なんかが思いつくわけではないんだが。


「いきなさい!」


 シアがチャームに命令をすると、小さなチャームがイズルを攻撃し始める。少し離れればもうどれがどんな形をしているかわからないような代物だが、魔法を見る限りかなりの力を持っているみたいだ。イズルが舌打ちをしているところをみるとうざったいと感じているのは間違いない。


 気をそらすのはシアにまかせてもいいだろう。だがしかし圧倒的に火力が足りない。イズルの防御を突破するだけの「剣」がないのだ。俺もシアもイズルより魔力が低い。それに俺たち三人は魔王という同じ線の上に立っているので、レベルの差や魔力の差は絶対的な力の差につながってしまうのだ。


 イズルが腕を薙ぎ払うと、強風とともに黒い霧があたりを包み込む。


「今になって目くらましかよ」

「そっちの方がやりやすいからね」


 一瞬だった。まだ遠くにいたはずのヤツが俺の背後に接近していたのだ。


「このっ……!」


 右手に炎をまとわせて殴りつけるが、素早く手刀で叩き落される。


 予想済みだから左手には聖なる波動。暗闇の中でだったら特に目が痛くなるような強烈な光だ。


「小賢しい」


 ドンっという衝撃と共に胸の息苦しさを感じた。拳ほどの大きさの光線が俺の胸を貫いた。魔法を打つ速度が俺よりもずっと早い。威力も高く、一対一ではどうやっても勝ち目はない。わかっているのだが、こうやって接近されると一対一で戦うしかないのだ。


 胸に大穴が空いたことは別にどうってことはない。何回もスライムに転生したことで自己再生能力はかなり高いし、回復魔法を使えば問題な――。


「その顔、ムカつくね」


 何度も、何度も何度も光線が俺の体を貫いた。光線で貫かれて部分はそこだけ面積を失って、俺の体がどんどんと小さくなっていく。再生はまだ可能だ。けれど涙がボロボロこぼれて、悲鳴さえ上げられないほどの激痛が全身を駆け巡るのだ。


 俺の体が三分の一程度になったところで俺の目の前にチャームが現れてバリアを張ってくれた。


「おせーんだが……」


 シアが俺の腕を掴んで離脱する。だが離脱の最中にも左肩をぶち抜かれてしまった。俺の体、もう半分くらいなくなってしまった……。


「無駄だよ」


 まだ光線が飛んできてる。それを器用に避けるシアもすごいが、避けているにも関わらず俺には的確に当ててくるイズルもすごい。つまり逃げてる間にも俺の体の面積が減り続けてるわけだ。


「勘弁してくれ……」


 痛いから、本当に痛いから。


 と言ってもシアのレベルは俺よりも低いし元々シアは戦闘向きじゃない。このままだと追いつかれるどころか俺とシアが同時に消し飛んでもおかしくはない。


 そうして黒い霧を抜けた。


 突如、背後で魔力が膨れ上がっていくのがわかった。チラリと背後を見れば、十数メートルはあろうかという光の玉が迫っていた。


「嘘でしょ……」


 あー無理かなとか思ってしまった。


 その時だった、目の前になにかの影ができた。


「ぷぴいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」


 光の玉が影にぶち当たる。そして、ゆっくりと吸収されていく。この声、もしかして――。


「お前、ピルか……?」


 光の玉を吸収したあとで巨体が地面に着地した。


「ぷぴい」


 体は元の大きさ、めちゃくちゃデカくなっているがそれでも間違いなくピルだ。


「なんでお前がいるんだよ」

「私が連れてきたからですよ!」


 ちょっと遠目でネティスが旗を振っていた。お前は戦う気がないのかよ。


「なんでお前がいるんだよ」


 二回も同じこと言ってしまった。


「アナタとビリーが出かけるところが見えたからつい」

「ついって」

「まあいいじゃないですか。とにかく今はアレと戦ってくださいよ。私は足手まといなので」

「わかってんのかい」


 この話はイズルとの戦闘が終わってからすればいい。


「魔法を吸収する魔獣か。多少防御が厚くなったところで意味はないだろうさ」


 黒い霧が晴れていく。いや、晴れているわけではなくイズルの背後で収束していっているのだ。それは大きな人の形へと変貌していく。


「なにからなにまで器用なやつだな……」


 あの黒い化け物がどれだけ強いかはわからないが、これを見て良い予感がするやつはいないだろう。


「キミたちはボクには勝てない!」


 大きな化け物が動き出す。腕を振り上げて振り下ろそうとするのだが、その動きが思ったよりも早かった。逃げるだけの時間もないが、あれを防ごうとすればかなりの魔力を消費する。魔力を多大に消費するばイズルと戦うのは難しくなる。なによりも俺はまだ自分の体を完全に再生できていないというのに。

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