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101回目の異世界転生!  作者: 絢野悠
プロローグ
11/153

12歳 ー 2

 卒業式を終えて、春からは中等部に通う。成績は常にトップだったし、教師からは王都への推薦状を書くとも言われた。


 でも、神童も今日で終わりだ。中等部からはもっと普通に、わざと真ん中辺りの成績を狙っていこうと思う。


「アルくーん!」


 ソニアが駆け寄ってきた。あの頃から比べるとずいぶん大きくなったもんだ。少しずつ大人っぽくもなってきている。美人の素質もあるし、軽くキープしておくのも悪くない。


「どうした、遠くの中等部に行く男子たちに呼ばれてたんじゃないのか」


 そう、卒業式間際、教室に長蛇の列ができていたのだ。そのすべての男子がソニア目当てで、ソニアといい関係になろうという男子ばかりだった。


「うん、全部断ってきちゃったから」

「隣のクラスのクラウスとかも並んでたけど、アイツもいいのか?」


 クラウスと言えば学校一のイケメンで有名だ。ちょっとキザだけど、まあ喋ってみると悪いヤツじゃない。


「クラウスくん? んー、好みじゃないかな」

「お前の好みってどんなんだよ」


 そういえば今まで聞いたことがなかった。だいたい一緒にいる時は勉強とかスポーツとか、必ずなにか目的があったからな。雑談はするけど色恋の話をしたことがない。


「え……う、うーんとね……」


 はにかみ、ちらちらとこちらを見てくる。なんだ、もしかして鼻毛でも出てるのか。これは困った。さすがの俺も恥ずかしいぞ。


「おーい! アルー! ソニアー!」


 と、ビリーが走ってくるのが見えた。あれから更に腹にエネルギーを蓄え、汗びっしょりで腹を揺らしていた。


 そちらに顔を向けるソニア。チャンスとはいつ訪れるかわからないものだな。


 俺は自分の鼻に指を突き入れ、両方の鼻の穴から一気に鼻毛を抜いた。涙と鼻水が溢れ出てきたが、ここで平静を装えなくてなにが男か。


「ど、どうしたんだビリー」

「どっちかと言えばお前がどうしたんだよ……」

「アルくん、涙目だけどなにかあったの……?」


 まあ、隠せるわけないよね。


「本当になにもない。大丈夫だ、問題ない。で、ビリーはなんでここにいるんだよ。これから家族と飯食いに行くって言ってただろ」


 ビリーの父親が実は商人で、ビリーが割とボンボンだったのは最近知った。あまりにも興味がなさすぎたな。ビリーは俺のことこんなに好きなのに、ごめんな。


「パパとママが是非二人もって言うから誘いに来たんだ」

「そうなんだ。アルくんはどうする?」

「せっかくだし行くか。なに食べるんだ?」

「ステーキ」

「お前らしいな。んじゃ行くか」


 なんだかんだ言いながら、俺たち三人はこうやって歩いて行くんだろうな。何事もなく、関係が変わることもなさそうだ。


 たぶんソニアは清楚なまんま、男子の憧れの的になっていくだろう。


 ビリーもこのままエネルギーを蓄え続けるに違いない。どこかでダイエットを強制させる日が来るような気がする。


 何事もない日常が一番だ。これこそが、俺の望んだ人生なんだから。

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