二話
布団を剥ぎ取って服を脱がせ、胸に手をやり腹に手をやり。そうやってシアの体中を探っていった。
いけないことをしている気分にはならない。自分に言い聞かせておけばそれくらいの感情をコントロールするなんて造作もない。俺は元魔王なんだぞ。魔王はすごいんだぞ。
まあ、下半身のコントロールができるとは微塵も思ってないがな。そもそもコントロールをする気もない。それが男って生きもんだからだ。
「無防備な女の子になんてことを……!」
廊下から声が聞こえてきて振り返る。ネティスだった。
ネティスの視線がゆっくりと下降していく。
「ちょ、ちょっとその下半身なんとかしてくださいよ!」
視線を釘付けにしてしまったか。前からすごいすごいとは思っていたがマイサンは自己主張が激しいな。
いや、今はそれどころではない。
「問題ない。そういうんじゃないからちょっと黙ってろって」
「そういうんじゃなかったらどういうんだってんですか!」
「へし折るぞ」
「はいっ」
ネティスは扱いが一番楽でいいな。
「お前回復魔法使えるよな?」
「まあ、多少は」
「じゃあこっちにきて魔法かけ続けてくれるか。俺一人じゃ手が足りん」
「なにするんですか?」
「高熱の原因を探りたいんだが、今のシアの体力だと俺の魔法を受けきれないかもしれない」
本来であれば普通の人間であっても俺の魔法を受けきれないなんてことはありえない。だが高熱の原因がなにかわからない以上、俺の魔力を介入させることで容態が悪化する可能性がある。
だがおそらく、ネティスの魔力であればそういったこともない。それもこれもネティスがポンコツだからだ。
俺の魔力が弾かれる可能性がある理由として、シアが魔王であり俺が元魔王であることが起因する。俺の魔法、俺の魔力を外敵だと認識されると厄介なのだ。
そこでネティスに回復魔法をかけてもらい、俺はそのネティスの魔力に偽装してシアの内部に侵入することにしたのだ。こんなことができるのも魔王の経験があるからこそだな。
俺の下半身をチラチラ見ながらシアの元にやってきたネティス。イスに座り、回復魔法をかけ始めた。
「よし、じゃあ俺もっと」
隣に座るとネティスが「ひっ」と悲鳴を上げる。
「いや、お前には興味ないから安心しろって。ホント、守備範囲外もいいところだからさ。安心してこれからも生活してくれよホント。俺がお前のことそういう目で見てるとか勘違いされると俺も迷惑なんだ。お前が俺にそういう目で見られたいっていう気持ちは尊重したいところなんだけどさ、俺にも選ぶ権利っていうものがあるわけだよ。わかるだろ? いくら女とは言っても守備範囲外の女から意識されるのは俺も精神的に嫌だっていうかぶっちゃけムカつくんだよ。嫌悪感? とかそういうのもあるわけじゃん? お前に魅力がないって言ってるわけじゃないんだ。少なくとも俺が興奮するような魅力は皆無だし、たぶんだけど俺意外の男もお前にはあんまり興奮しないと思う。いいところはあるんだ。ただそれがわからないだけで。ごめんな、本当にわからないんだ。そんな魅力がわからない女に逆に意識されちゃうと気分悪いからさ、できればやめて欲しいなーって」
回復魔法をかけながら白目になってしまった。面白い女だ。
「わ、わわわ私そこまで魅力が……」
「まあ贔屓目に見てもねーな。安心しろって、どの世界、どの地域にも物好きはいるって。最悪は魔族の森にでも行けばいいし」
「なにもかもがが最低すぎるうううううう」
白目に巻き舌で全身が微振動してるときたもんな。どういう精神状況なんだろう。その精神状態にしたのは俺なんだけど気にはなるよね。
違う。ネティスが妙な色気を出さなければこんなことにならなかった。そうに違いない。そう、ネティスが全部悪い。
もしシアが起きてたらめちゃくちゃ怒られそうだな。
「心配すんなって。ちゃんとお前にもいいところあるからさ」
そう言いながらシアの内部へと魔力を侵入させていく。
「じゃあいいところってどこですか?」
「さっき言ったろ、俺にはわからん」
ちらっと見るとまた白目でガタガタ震えていた。もうなんなんだよコイツ。
「んー、あー、そうだな。ケツと脚は見どころあるよ。セクシー」
「他には?」
「あのね、砂漠の砂から水を絞り取ろうったってそう簡単じゃわかったわかったからちょっと待て。あとすぐに震え出すのやめな」
持病あったとかいう設定はなかったはずだが。