12歳 ー 1
最近、休日には狩りの方法や農業を教わっている。もちろん父さんからだ。
実はずっと不思議だったのだが、父さんは武器という武器はなんでも使える。剣、槍、弓、斧、銃器。どれもこれも狩りのための技術って感じじゃないのがなんか不安だ。
しかし、問題なのは新しく覚えることがないということだ。
過去に農業も狩りもやったことがある。それを生業にする転生先があったのだ。
弓矢でウサギを仕留めた。これくらい、俺ならどうってことはない。なんなら飛んでるモンスターだって弓矢で撃ち落とせる。
「お、筋がいいな。さすが俺の息子だ!」
背中をひっぱたかれてつんのめる。パワーが強すぎるんだよ、もうちょっと手加減しろよ。こっちはまだガキなんだぞ。
「痛いって父さん」
「おお、すまんすまん!」
そしてまた背中をひっぱたかれた。もうこの人には何を言ってもダメかもしれない。悪い人じゃないんだが、言うことをまったく聞いてくれない。聞く気がないのか、聞いてて無視してんのかまったく判断つかない。
いや、絶対前者だな。
「そろそろ帰るか」
そう言いながら、父さんはなにかを担ぎ上げた。茶色い布袋だが、とんでもなくデカく、袋の上からウサギの頭や足が飛び出していた。
何十匹いるか想像もできない。
「いやいや、いつ捕まえたんだよ」
「お前が一匹狩る間にな、ちょっとな」
「アンタのちょっとの基準、たぶん他人とは違うから」
「ウサギの百匹や二百匹、数分で捕まえられるようになる。そう、俺のようにな!」
「あのさ、こんな小さな山のウサギだよ? そんなに捕まえたらいなくなっちゃうからね?」
「ウサギってその辺から生えてくるんじゃないの……?」
「きのこじゃねーけど?」
「お前知らないのか? きのこはその辺から生えてこないぞ?」
「なんできのこの生態知っててウサギの生態知らねーんだよ……」
俺の親父は今日も絶好調らしい。
家に帰ると、母さんが夕食の用意をして待っていた。
受け取ったウサギをとんでもない速度で捌き、あっという間にウサギ鍋の完成だ。
残りのウサギは燻製にでもするつもりだろう。この村には冷蔵庫なんて存在しないしな。一応王都なんかに行けば魔法式の冷蔵庫はあるが、平民に手が出せるような代物じゃない。家が買えるくらい高価な代物なのだ。
「「「「いただきまーす」」」」
四人の声が家中に響き渡る。家が小さいからというのもあるが、こういう家訓だから仕方がない。
『いただきますを言うときは、全員で元気に大声で!』
なんちゅー家訓だと思いながら、この両親らしいなと納得しまうのだ。
まあ、こういう人生も悪くない。