愛情のありか
愛情のありか
藍川秀一
「じゃあ、また明日」
そんな君の声を聞くことが、僕の救いにもなっていたのだと思う。何年も一緒にいるはずなのに、二人の距離はまるで変わらない。友達以上、恋人未満のまま、月日だけが流れていく。
君は気づいているだろうか。
毎日のように黒く長い、整った髪に見とれていることや、ついていくふりをして、後ろ姿を眺め続けていることを。顔を合わせれば、変わることのない笑顔を見せてはくれるが、それ以上の感情を見せてはくれない。
君の気持ちを、知りたいとは思っていた。けれどそれと同じくらい、このまま関係をいつまでも保っていたいとも思っている。
僕は君と、離れたくはない。
ある日、彼女から一つの手紙をもらった。ある男子に渡してくれとのことだった。何を意味するのか、全く理解することはできなかったが、ピンク色の便箋に可愛くまとめられたその手紙を見たとき、初めて彼女の感情というものに触れたような気がした。「中身は見ないで」と釘を刺され、その手紙を託される。放課後になっていたため、仕方なく家へと持ち帰り、横になりながら手紙を眺める。蛍光灯に透かして見たりするが、中身は全く見えない。
ラブレター、だよな。
どうしてか冷静で入られた。彼女の気持ちが自分に向いていないことを知った今でも、胸に穴が空いたような喪失感はどこにもない。全く悲しくなかったといったら、嘘になるが、それでも彼女が選んだ人だというのなら、納得ができた。あしたには必ず渡そうと、心に決める。
次の日になって、その手紙を男へと手渡す。彼女と一緒にいるところをまるで見たことのない人ではあったが、悪い人には見えない。男は手紙を凝視している。僕は黙ってその場を立ち去った。
手紙を渡したとき、あんなにも執着していた感情が僕の中から消えたのがわかった。
〈了〉