第八話 取引
死んだはずの有真は病室で目を覚ましたが
目の前には自分自身が立っていた。
「234億いくつかの僕だって?」
僕は新たな謎が生まれたことに困惑した。
ていうか困惑しすぎじゃない?自分。
と一人ツッコミをしてると
”僕に似た何か”は
『そう。やっと僕に一番近い僕がここにきてくれた。それが234億3200万人目ということだよ!!』
”彼”は嬉しそうに僕に抱きついてきた。
「やめろ!なんか気持ち悪いぞ」
『ひどいな~!ふむ……触れてわかったが、君と僕はやはり正反対の【理】だね』
「【理】?なんだルールとかか?」
『そう。僕たちがそれぞれ居る世界は似て非なるルールがある。例えば君が死ぬことが終わりなら僕は生きることが終わりだ。』
「それは…理屈がわからない。」
『そうだな分身ってわかるか?』
「一人が同じ形で二人にわかれるやつか?」
『そうそう!僕はそれを常時できる』
彼は目の前で二つに分かれた。
姿かたちは変わらずに
『『僕たちは何人、様々な人にも分かれることが出来る、生きることも死ぬこともできる、知識も技術も無限だ。理念も思想も』』
目の前でどんどん増えていきながら
『『『自己紹介がまだだったね。僕は《ナハム》君と存在が同一の存在だ』』』
「ナハム……僕と同一?どういうことだ?」
ナハムは一人に戻り
『ははは、今の君には少し難しいともいえるね』
「そうか」
ナハムが何を考えているかわからない。それが僕にとっての恐怖。
それからすこし沈黙が流れ、僕はナハムに質問を投げてみた
「僕は死んだのか?あの鎧は誰だ?君は僕に何をさせるつもりだい?」
ナハムは待ってました!と言わんばかりの顔で
『今は死んでいる。多世界の【ルール】を自分の世界のルールに書き換ようとしている科学組織の一員。君には僕の代わりに世界を巡ってほしい』
僕は一つ目の謎から整理し始めた。
「いまは...?」
『そう今の君は胴体と頭が離れている状態だ。僕はそれを【直すこと】が出来る』
「なおす.......?どうやって?」
そういうとナハムは片手でピースをしながら
『僕と君は非常に似た存在だからこそ助けられる。僕の体を差し上げよう』
「?!」
『大丈夫、僕はアストラル体でも生きていられる、君と違ってね?』
彼が嘘を言ってるように思えないが.......
『僕の事は信じなくていい。理解してくれるまでね』
「大丈夫、信じてる」僕はさりげなく嘘をつく
『よかった』彼はこちらを見つめてきた。
僕は気になることを聞いてみた「それで君にはなんのメリットがあるんだい?」
『僕は多世界の【ルール】を守る役目がある、だけど救える方法は困っている世界の【ルール】を遵守しなければならない。』
「つまり【ルール】に当てはまらない僕に組織に襲われている多世界を救えということか」
『そういうこと』
さらにとナハムは続けた。
『僕は身体と情報を与える、君はいろんな世界を救う』
僕は少し悩むと
『君はまだ死ねないんだろ?』
「そうだ死ねない、守るものがあるからな」
社長に恩返ししてないし、里栖を悲しませてしまう。
それにあの黒騎士が里栖を襲うかもしれない、こう思うと僕は非力だなと、しみじみ実感する
『あ、あと里栖ちゃんに似たアイツはそういう【ルール】でそうなっているから惑わされないように』
「えーと俺の心にある人に化けているということか?」
『そう、君の心に試練を投げかけてくる敵だ、少し策を』
有真はベッドから起き上がりナハムの面前に立ち
「いいから早く戻せ」と急かした。
『……ふう、わかった、これだけは言わせてくれ』
「?」
『君は少し、僕と君自身の【ルール】を理解できていない。』
『最初は【理】の制御が利かないかもしれない。そこは少しずつ理解していってくれ』
『そして、何かあれば僕を呼んでくれ。いつでも助けになろう』
「わかった」
僕はうずうずと焦りが止まらなかった___
『じゃあ、また会おう』
_なぜなら____
有真の身体が光に包まれる。
_今、里栖に起こっていることが_____
ブツンと五感が消え、ナハムに直してもらった体に意識が戻りだす。
__想像できるからだ_____
第八話 神との取引 続く
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ねるねるね