第四話 社長
遅れました!すみません!
タッタッタッタッタッタッ
僕は最寄り駅を降りてから、足早に会社へ向かう。
眠気も晴れて、体も起き始めた。しかし
社長にどう謝ろうかと考えていたが、
考えても朝の事しか浮かばない、
だんだんと考えることをやめた。
頭をクリーニングしていると無事、会社の下にたどり着いた。
織田商事が構える建物は三階建てだ
1階に倉庫があり2階に事務所がある
三階は社長しか上がれないらしく、恐らくそこに住んでいるという噂がある。
あくまで噂だから、みんな触れないようにしている。
会社に入るとパート従業員さん達に申し訳なく謝りつつ、挨拶していき
階段を上がると事務所の扉が目の前に見えた。
すうーと深呼吸してから、勢いよく扉を開ける。
「おはようございます!すいませんでした!」
ただ扉を開けるだけではなく、見事なスライディング土下座を決めたつもりだ。
しかも顔を引きずらせながら
しばらくすると、かわいい声をした女性が開口一番に困惑した様子で
「は?」
「…いえそれだけです。ありがとうございます。」
「うむ次からは無いように、早く仕事を始めて」
やっと顔をあげる許しを得た。
上げるとそこには_____
貧乳・低身長・童顔
自分の目の前には、どっからどう見ても小学生がいた。
実はウチの社長である、これで22歳だ。
「おい?今失礼なこと考えただろ?」
「ノーマアム」
「昼飯お願いね」
「イエスマアム」
そんな茶番をしつつ、僕は自分のデスクに座り仕事を開始した。
ここから夜中の2時までだ。
社長と二人で_____
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雨の中ぼくは傘を差さずに駅のホームを歩いていた。
「君をウチに入れることはできないな」
「君は大丈夫でも親がなあ」
「がんばれ、仕事は選ばなければいくらでもある」
「かえれ」
「しってる?隣の有真さんね」
僕は必死に勉強した……いろんな経験だってした。
でも社会が受け入れてくれない......
それもこれも
僕の両親が巨額の横領、殺人、詐欺をしてどこかに消えたからだ。
あまりにも多すぎる事件を起こしてくれたおかげで、僕は極悪犯罪者の子供としてメディアに『誤って』紹介されてしまった。
おかげで全国有名人だよ。
どこも名前を聞いただけで、面接すらしてくれない始末。
メディアを訴えようにも、だれも取り合ってくれない。
名前を改名しようかと思ったけど、一応僕を育ててくれた親だ。
親につけてもらった名前は変えたくない。そう決意したんだ。
だけど僕の精神状態は限界を通り越していた。
電車が来た。
僕は足を空中に浮かせ、13番目の階段を登ろうと____
「まて」
かわいい声が不釣り合いな言葉を投げかけてきた。
僕は振り向き彼女を見た。
「君は_____」
電車が通過する。
小学生は僕に聞こえる声で語りかけた、その言葉で僕は____
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「......お....い...........おい!!」
「ん?うわああああああ!」
「まったく何時まで寝ているんだ!」
時計は夜中の1時を指していた。
やばい、いつ寝落ちしたのかも覚えてない。
「す、すいません!」
「もういい…まったく......」
「私は先に帰る。戸締りしとけよ」
社長は呆れている様子だ。
ん?.......僕の背中には毛布がかかっていた。
「あの社長、これ......」
「うん?自分でかけたんじゃないか?」
社長はデスクを片付けながら言った。
「あと明日と明後日、会社休みだから来るなよ?」
「え?!?!?」
僕は驚いた。なぜなら、この会社は休みがないようなものだった。
ほぼ社員は二人しかいないのでローテーション出来ないので仕方ないと思いつつ
自分は重々承知でやっていたが、まさか休みがあるとはな......
「休みの事はパートさん達には伝えたから心配するな、じゃあ帰るよ」
「いや待ってください!いきなりどうしたんですか?!」
「気まぐれ」
社長はめんどくさそうに言った。
「あ、最後に顔洗ってから帰れよ」
事務所の扉が閉まり、社長が去って少ししてから、僕は固まった体をほぐしながら
洗面台に向かった。
鏡を見るとめちゃくちゃ目が赤くなっているのがわかった。
「昔の夢を見たからかなぁ」
鏡を見ながら考えていると、社長の前で泣いていたことに気づき、恥ずかしさが込み上げてきた。
「泣いたとこ見られたの二回目か.......」
僕は戸締りをして、そそくさと会社を後にした。
第四話 社長と僕 続く
最後までお読みいただきありがとうございます!!
少し長文になってしまった