第二話 非日常
一日一話投稿せねば
「.....................え?」
僕には里栖さんが何を言っているのか、理解が出来なかった。
その理解の前に立ちはだかるのは僕の手元のコーヒーだ。
確かに水道を使い、ガスを使い、冷蔵庫が使えていた。
そして僕のコーヒーが存在している。
頭が揺さぶられるように、混乱してきた。
落ち着こう一旦……
僕が頭に手を当てていると、里栖さんが落ち着いたらしく心配そうに、
「あの…大丈夫ですか……?すいません、ここ数か月ぐらい死にそうな顔をしていらっしゃたので…ストーカー染みていると思うんですけど、有真さんのことが心配で......」
僕も一旦少し落ち着いてから
「いえ…一人暮らしですので、もしもの事もありますし、ありがとうございます。」
僕は自分の今置かれている状況を飲み込めずにいた。
生活のライフラインが使われてない?
うそだろ?このコーヒーは現実だぞ......?
少し考えてみよう。
僕は光熱費については、口座引き落としになってるし、
引っ越してから仕事が忙しくて、口座の中を詳しく見れていない。
クレカ主義だからあまり気づかなかったところもあるかもしれない。
疲れていたとはいえ、少し家計簿なりつけるか……
いやまて!そこじゃないだろ!!
問題は............
「大家さん!」
「はひぃ!?」
「僕の隣や下の住人の光熱費って大丈夫ですか?」
「はい、そこは一応聞きましたが、ここに引っ越す前の賃貸での光熱水費となんら変わりないそうです。」
「えっ……」
どういうことだ?という顔をしていると里栖さんが表情を変えて
「大家として光熱水の確認をしたいので上がってもいいでしょうか?」
「どうぞ…(大家モードだとしっかりしているように見えるなぁ)」
僕は片手にあるコーヒーを飲みながら里栖さんを家にあげた。
里栖さんがキッチンの蛇口に手をかけ、捻ると_______
「えっ…」「あれっ?」
____水が出なかったのだ。
僕は驚きと混乱が、里栖さんには困惑が出てきた。
気が付けば家の電気が消えていて、ガスが付かないときた。
里栖さんがこちらに振り向くと......
「もしかして......」
なんだ………まさか出るのかこの部屋は……?!
時々光熱水が止まったり?!
僕の中の混乱が収まり、やがて恐怖に変貌した。
里栖さんが口を開くと......
「光熱水費払えてないほど困っているんですか……?」
えっ
えっ
僕は困惑した。というかいろんな感情が入りすぎて気持ち悪くなってきた。
やばい、このやばさをどう伝えたらいいのだろうか
さっきまで顔を洗った水は?火はなんでついた?
ついさっき止められたのか……?
わからないわからない_______僕はネガティブなループに陥ってしまった。
そこに里栖さんが
「大丈夫ですか?........困るほど働かなきゃいけないのは、まだ学生だからわからないですが、きっと有真さんは頑張りすぎだと思います!!......私にできることがありましたら何でもいってくださいね?
出来る範囲でお助けします……よ?」
僕はこの子に、何てことを言わせているんだ......男として最低だ......!!
しかしこの状況、どういえばいいのか
とりあえず…
「ありがとう、もしかしたら引き落としが出来てないかもしれないから、確認して、そのあと相談させていただきますね。」
今作れる笑顔を里栖さんに向けた。
里栖さんは少し悲しそうな顔をした後、精一杯の笑顔を作り
「私はいつでも有真さんの味方ですよ!」
ああ…この子はいい子すぎる…ありがとう…本当に
そして沈黙が流れて、10分経つと、里栖さんが
「会社はおやすみにしますか?」
あー会社かー…
ん?会社?
「やばい!!遅刻するてかしてる!!」
「でも今日は…」
「ごめん今日だけは休めないんだ大事な会議もあるし!」
「ううう…」
そうか…ほんとにこの子は…
「大丈夫、帰ったら里栖さんに報告しますね」
「毎日報告ください!!」
「はは、そうする」
「じゃあメール交換しましょ!」
「おーけー」
僕は里栖とメアドを交換して、家を出た。
マンションの下に降りると、僕の部屋のベランダから
「帰ったら熱いご飯だよ~!!」
と里栖が手を振りながら叫んでいた。
僕は手を振り返し、また会社にむけて走り出した。
(心ってこんなにあったかくなるものなんだな)
そう心の中で思った。
第二話 『非』日常 続く
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あつあつご飯