第五話 飲み会
お待たせしました!
一か月以上空いてしまいました
飛び交う打音、部屋に水の音がこだまする。
「やるじゃねーか!!」
思いっきり大ジョッキを飲み干すウイスター。
「へへ負けてられないよ」
負けじと若干苦しそうにビールを飲む望月有真。
彼らはウイスター行きつけの居酒屋「破レンチ」のマスター【玄五郎】に信頼された者だけが入れるという個室でビールの飲み比べをしていた。
机には空のグラスが大量に置いてあり、地面にもグラスが転がっていたりする。
「そーいえばよーお前と会った時もこんな感じだったよな」
ウイスターは手を止めて有真を見つめ、たそがれている。
「ああそうだな、ここのカウンターであったんだっけな」
「そうそうあんとき」
~回想 一年前~
「おい!マスター酒くれ!!」
扉を力強く開けるウイスター、しかし彼の長い髪はなく
短くそして黒い色をしていた。
さらに
「おいあんちゃん、ここより先に行くとこあるだろ」
マスターこと玄五郎は真剣な眼差しで促すが、ウイスターは引くことをせず
「客だぞ!!もってこい!!」
ウイスターは目にわかるぐらい荒れていた。
しかし玄五郎はそんなウイスターを叱咤する。
「ウイスター!!客は神様だと思っている!!だがな!そんな血まみれの頭で、ほかのお客様に迷惑だろう!!」
マスターは心配していた。だが店の店主である以上、ウイスターを甘やかさないようにしている。
しかし客としているのはウイスターを除けば、一人しかいない。
「僕は大丈夫ですよ。彼は何かあって、身体より心を優先させたかったのでしょう。」
そう望月有真だ。彼はこの時、織田代無の会社で働いており、退勤後の事だった。
「ありがてぇ!だそうだマスター!もってこい!!」
ウイスターは血まみれの頭なんか気にしず、不満そうに酒を出すマスターからグラスをかっぱらう。
その飲みっぷりは豪快なものだった。
まさにゴクゴクと喉を鳴らし、望月は見とれた。
「ぷはー!!やっぱ痛いときは、ビールに限るぜ!!」
おかわりと言わんばかり、グラスをマスターに差し出すウイスター。
マスターは頭を抱えながらグラスを取ろうとした時、もう一個のグラスがマスターへ差し出される。
「僕もいいかな?」
望月はマスターにおかわりを要求し、ウイスターに向け言葉を並べた。
「君に感動した。僕と勝負しないか?」
ウイスターは不意を突かれたような顔を見せた。それもそうだ
血まみれた頭で目つきは悪く、出会って二分の人に感動したなんていわれたら誰だってそうなる。
「いいぜ!負けたらどうするよ!」
「そうだね、裸踊りや地面にキスなどなんでもしよう」
「おお!!その男気勝ったぜ!」
望月は人差し指を立て、ウイスターに進言した。
「しかし君が負けたら、君の夢を聞かせてくれ」
ウイスターはまた不意に突かれた顔をしている。
「夢…?そんなんでいいのかよ」
「ああ、よければ聞かせてくれないかな?」
何か考え血に濡れた頭を掻きむしり、がっかりしたような様子を見せるウイスター。
「やめだやめ、お前に話したところで何も叶わない」
望月はウイスターの仕草を観察している。
泳ぐ目元、苛ついているのかグラスに触れている手に力が入っている。
空いた手で執拗に頭を掻きむしる。
「ウイスター君、仲間に殴られ裏切られたんだね」
望月はデリカシーなど考えず言葉を投げた。
その瞬間、椅子から立ち上がり望月の胸倉をつかむウイスター。
「なんだおめえ!!出会って五分のお前に何がわかるんだよ!!」
ウイスターは望月に弁解の隙を与えず顔面目掛け殴った。
それを見たマスターは
「ウイスター!!何やってんだ!!」
仲裁に入ろうとカウンターから飛び出すが
「いいんですマスター、僕が悪いので」
と有真は怯むことなく、ウイスターを見つめ
「逃げてもいい、叶わない夢なんて現実を辛くするだけだ、だけど
僕は君みたいに夢を諦めたくない人の支えになりたいんだ。辛くてもその先に光があると思わせたいんだ!」
真剣な顔で、ウイスターを見つめる。
「僕は裏切らない」
ウイスターの手を振り払い、望月は自分の名刺をカウンターに置き、放心状態のウイスターにこう言った。
「君が夢を掴みたいならここに来てくれ。僕はいつでも待っている」
そこには、音楽事務所でもなく芸能プロダクションでもない。
望月神秘研究所の名前があった。
ウイスターは名刺を見ると、我に返り望月に話しかけたが
既にいなくなっており、マスターも出て行けと言わんばかりに頭の治療代をウイスターに握らせ、店の外にだした。
ウイスターはしばらく店の前で固まっていたが、時間が経つと病院へと足を運んだ。
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「あの後、お前の名刺の住所に行って俺の夢と関係ないじゃんって突っ込んだっけな」
「はは、あの時は君には変化が必要と感じたからね」
「必要?」
「ああ、君は夢を叶えようと、いろんなバンドと組んでは解散、裏切りの連続、ソロで活動するも各所のライブハウスや路上での問題行動が続いた君と会ったのがあの日の君だ。」
「それを言われると確かに、そーだよな」
ウイスターは照れながら頭を掻く。
「ほめてないぞ」
「わかっとるわ!!」
「だからこそ、別の目線が必要だと思ってね」
「ああ、あの意味のわからん授業か」
ウイスターの頭には疑問が浮かぶ。
「でも、あの授業と音楽何か関係あるのか?確かにお前と友達になった頃から、ライブハウスをいい時間で貸してくれたり、いい事務所と会えたり、ファンも増えたりして助かっているけど」
そんな質問に対して有真は少し考えた後、意地悪っぽく
「何も関係ないよ。僕はただ変化を与えただけだよ」
「なんだよそりゃあ!!気になるじゃん!!」
ウイスターは諦めず次の質問をした。
「じゃあさ!お前のやっている事を教えてくれよ!」
望月はその質問に対して______
第五話 飲み会 続く
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