第二話 ルーム
悪夢から覚めた有真、彼は何者か、今だわからず。
「それで?なんでうなされていたんだ?」
ウイスターは自分の椅子に座ってPCに目を向けながら、有真に問いを投げた。
有真はソファでゆっくりしていながら答える。
「いやー起きた後だと、夢の内容は思い出せないんだ」
頭に手を当てながら苦笑する有真。それは本当に思い出せないからだ。
「だけどすごく、不思議で、長くて、暗い、夢だったということは覚えているんだ。」
有真はソファの脇にある私物の肩掛けバックからスコールを取り出しながら呟く。
乾いた大地にぐっとスコールを降らせる。
「そんなことより、もう23時よ?今日は切り上げない?」
黒髪少女の代無は腕につけた、高そうな時計を見て帰りたそうにしている。
「ゴクゴク.....プハアー!」
CMをやらせたら、売り上げ貢献度が高そうなレベルで美味しい顔している有真は言葉を返した。
「もうそんな時間か.....そうだな、みんな今日は帰ろう。」
そう告げると、代無はそそくさと荷物を持ち、さよならのポーズを取り
「じゃ、何かあったら連絡するね」と言って帰った。
「じゃあ、俺も帰るわ」
ギターケースを背負い、ドアノブに手をかけるウイスター。
「今日もライブ?」
「ああそうだ、もしよかったら来いよ」
ウイスターは笑顔でサングラスをかけ、有真にむけサムズアップをする。
「ああ、”仕事”が終わったら行くよ」
笑顔で答える有真だが、ウイスターは苦笑しながら
「ライブ終わっちまうぜそれ、ははは.....じゃ行くぜ」
「ああお疲れ様」
ウイスターが部屋から出ると、有真は紙の束をカバンから取り出しそれに目を通し始めた。
それはさながら、どこか輝いた少年の目に近かった。
三階建てビルの一室にある部屋からタイプ音だけが響く。
第二話 ルーム 続く
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