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現代に生まれた魔法使い  作者: レベルタロウ
プロローグ
21/28

第十六話 最後

 

お待たせしました!


昏睡状態の望月有真は一体どうしたのか?



ゆらゆらと揺れる。

ここは真っ暗だ、自分の身体以外なにも見えない。

あるのはゆらゆらと、揺り籠のように揺られている自分の身体だけだ。


ここはどこだ。

もう何回も自分の頭の中で考えている。一回、また一回揺れるたびに頭から自問自答が浮かんでくる。


君は誰。僕は誰。ここはどこ。里栖はどこ。彼女は無事か。


こうやって頭の中で考えると、必ず答えが浮かんでくる。


君は僕だ。僕は君だ。ここは君の奥深く。里栖は僕のそばにいる。無事だ。


僕は一安心する、がまた不安になり再度、同じことを聞く。

そうすると同じ答えが返ってくる。


君は誰。僕は誰。ここはどこ。里栖はどこ。彼女は無事か。

君は僕だ。僕は君だ。ここは君の奥深く。里栖は僕のそばにいる。無事だ。

君は誰。僕は誰。ここはどこ。里栖はどこ。彼女は無事か。

君は僕だ。僕は君だ。ここは君の奥深く。里栖は僕のそばにいる。無事だ。


それをもう何回繰り返しただろうか。ここは地獄なのだろうか。

もう何回も自分の頭の中で考えている。一回、また一回揺れるたびに頭から自問自答が浮かんでくる。


僕は爆発から里栖を守れただろうか。

今の僕にそれを知るすべがない。


僕は、死んでしまったのか。



_______________

_______

_____

____

__

_



「有真さんは私の命の恩人なんです」


僕の頭にその言葉がよぎった。

何故その言葉が思い浮かんだかはわからない、でもなぜか懐かしい感覚に襲われたからだ。


聞いてみよう自分に、自分自身に


「僕は昔、里栖を助けたことがあったかい?」


僕は動かないと思っていた唇を動かし、自分に尋ねた。

しかし、答えはすぐに貰えなかった。


もうこの真っ暗世界に来て何日経っただろうか。

体感では十日経った気がする。まさに精神と時の部屋状態だ。


「いつまで」


僕が話そうとした時だった。


『ある。がその時助けたのは君であって君じゃない。』

『今いる君の世界とは全く違う世界だ。』

『君は守る人のために力を使った。世界のためではなく』


『私利私欲のために魔法を使ったのだ。』


魔法?何を言っているんだ。

「僕はオカルトは信じないぞ」

『いいや君は見たはずだ。光熱水費が全くかかっていないこと。電車待ちの時、見た様々な骸骨で出来た龍。生き返った自分。あり得ない力で倒した敵。生き返らせた里栖。』


ああ確かに見覚えはあるが__

「変な幻覚は疲れていただけだし、光熱水に関しては恐らく誰かの部屋に高額な請求が来ているに違いない、そして後ろの三つは夢だきっと。」

『現実を見ろ。請求はないと言っていただろう。夢でも幻覚でもないぞ!』

「現実ってなんだよ。”もしかしたら”もあるだろう!」


『”もしかしたら”なんて不確定要素の多い言葉、現実も見れない奴の戯言にすぎん。いいかお前さんの見たもの聞いたものは現実だ。その現実は揺れてねじ曲がっているかもしれない。だがそれが現実なんだ。』


「現実は見た。社会からの理不尽なレッテルを貼られながらも、ある人はいろんなところで断られた僕に部屋を貸してくれた。ある人は仕事もなく路頭に迷い、飛び降りようとした僕に仕事をくれた。そんな人達に助けられ生きてきた。現実はそこにある。これ以上何を見ろというんだ?」


「教えてくれ、必死に生きて幻覚や幻聴まであって心身はボロボロこれ以外に現実ってなんだ?!今を生

きるのに精一杯だ!!魔法なんてあるわけがないだろう!」


僕が話を脱線させている事はわかっていた。

でも、抑えきれなかった。あるはずのない涙を僕は流していた。

それは怒りか、悲しみか、わからない。


ただ僕の生きていた世界は本物だった。どれだけ辛かろうと、不幸だろうと、助けてくれ人は居た。

僕には勿体ないぐらいの幸運だ。


しかし、僕自身はこう言った。

『それはわかっている、何せ君自身だからね』

『よし、じゃあ例えばだな』


彼は一つの話をした。


『道端で倒れている人がいる。どうする?』


僕は迷わず

「助けを呼ぶ」と答えた。


『正解でもあり、不正解だ』

「どうしてだ」

『なぜか?とらえ方の問題だ』


彼は馬鹿にするかのように僕に向かってしゃべり始めた。


『いいか?君は、いつ、どこで、どうやって、どのように、どうして倒れているかを聞かなかったな?僕は別にヒントは無しなんて言ってないだろう。』

「それは…」

『人のせいかい?君の人生の半分はソレがある。いつも親のせい、世の中のせい、お前は努力をしてきたのか?』

「したさ!いっぱいしたさ!」


『自分で思うウチは努力じゃない、傲慢っていうんだ。誰かの心に響いたり、何かを成し遂げた時初めて努力したっていうんだと僕は思う。だからこそ君に最後のチャンスを与えよう』

「どういうことだ?」


僕は首を傾げた。


『僕はもう限界が来ている。君と言い争いしている場合じゃないんだ。』

『もし目覚めたら現実が待っている。そこには魔術、不条理、不幸、君が否定したものがある。何かあったら誰かのせいにして逃げればいい。』

僕は彼が言っていることが少しわかってきた。

「僕はどうなっている!?」


『現実は確かにそこにある。だが目を背けてはいけない。のめり込んでもいけない。捉え方の問題だ』


彼の声が遠のいていく。

「待て!まだ話は終わってないぞ!」

僕は何もない空間に手を伸ばし叫んだ

『いいかこの世界の理は、人間に【現実の外側】を知覚させないようにできている。それだけ覚えておいてくれ。』


『さあ、目覚めの時だ』


真っ暗な空間がたちまち光に包まれる。

それは望月有真を包み込み____



 彼を覚醒させた。__



             第十六話 チャンス 続く 


最後までお読みいただきありがとうございます!!


雪イイ!!



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