第12.99話 始まり 後編
二話更新久しぶり
~航空機内~
あれから八時間が経とうとしている。
機内の壁という壁はなくなり、きれいに並んでいたシートは、ほぼすべて粉々になっていた。
そう、機内は操縦席の入り口から最後部の席まで見えるほど【綺麗】になっていた。
「よくまあ八時間も耐えたわね」
優雅に紅茶を飲みながら唯一残ったビジネスシートに座っているロペラはアランは褒めた。
「メリッサに言われると嬉しいが君に言われると吐き気がするよ」
とアランはロペラに向かい合いながら笑った。
しかしロペラは表情を変えずに話変える。
「ふう…最後の言葉はそんなことでいいかしら?」
「私か?君の間違いじゃないのか」
「ふふふ……いい?貴方達は暗殺対象だった、わかる?」
「そうか.......」
「そうよ、航空機は貴方とあの子の墓場、いわゆる棺桶ね」
そしてロペラは続けてこういった。
「だからお疲れ様、あなたも【こっち側】にいればよかったのに」
アランは沈黙を選ぶ。
「そう…じゃあ私の手で葬ってあげる!」
幾千の鉄触手がアランに襲い掛かる。
それはどこに逃げても突き刺さるように___
しかしロペラは気付かなかった。
一人消えていることに_______
「さっきの仕返しよ!!!」
メリッサは後方からロペラに向かい拳を振りかざす。
ロペラが気づくには遅かった。
メリッサの拳はロペラの顔にめり込んだ。
ロペラは信じられないスピードで殴り飛ばされ、
アランは超加速し、ロペラをメリッサに打ち返した。
さながら【人間テニス】だ。
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一時間ぐらい経ち、
機内の床には動かなくなったロペラと背中を合わせるアランとメリッサの姿があった。
「メリッサ君、怪我はもう大丈夫かい?」
「大丈夫です」
「.......済まなかった」
「謝ってばかりですね博士」
「君がそういう呼び方をするということはかなり怒っているね」
メリッサはアランに向き合い抱きついた。
「生きてて本当に良かった…パパ」
アランは涙をこらえながら
「お前も生きてて良かった」と抱きしめようとしたが
メリッサはアランを優しく突き放して、唖然とした顔でアランを問い詰める。
「パパそれ本気で言ってるの?こうなったのはパパのせいなのわかってる?!」
「ああ、わかっている」
「いいえ!わかってない!パパが事前に…教え…てくれたら…」
メリッサはだんだん言葉を無くしていく、それはアランの後ろに問題があった。
「どうした?いきなり黙って」
「後ろ.......」
「後ろ?」
アランは振り返る。そこにはさっきまで倒れていたはずのロペラが生気がなく立っていた。
アランは超加速を使い、ロペラから距離を取った。
しかし
「.......どうしたんだ?」
「動かないね...」
ロペラは立ち尽くすだけで、動かない。
「アラン博士…あれは何…?」
「アイツはロペラ・エペ・ストリッシャ、大統領直属の暗殺部隊の一員だ。一応私の元同僚だよ」
「え?それっていったい.....」
「まあ詳しい話はここを生還できてからだ」
少しメリッサと話しているとロペラが動き出した。
ただアランが知っているロペラではなく
「コード2187始動します。」
そのコードの意味をアラン博士は知っている。
冷や汗を浮かべながら博士は呟く。
「自爆コード.......」
「.......え」
メリッサはその言葉を聞いて驚愕する
無理もないこれから大爆発が起きて空中に放り出されるのだから
「ロペラを止めましょう!博士!」
「.......無理だ」
「なんで!」
「…今の彼女は自爆と自己防衛と追尾装置が備わっている。つまり」
「「逃げれない、追い出せない、破壊できない」」
終わった、おいしいランチ食べとけば良かった、メリッサは心の中でそう思った。
だがしかし
「だが、メリッサ君の能力なら爆発は耐えられるかもしれない」
「じゃ、じゃあ!やりましょう!」
「いいのか?」
「うぐ…耐えられるかどうかわかりませんがやって」
「そうじゃない”大きさ”だ」
メリッサの能力は『バリア』という【心の障壁】だ。
相手を否定すれば鉄より硬く小さくなる。
相手を肯定すればシャボン玉より柔らかくなり大きくなる
「つまり”否定と肯定”両方を持つことになるができるか?」
メリッサは心が器用ではない。それゆえこの能力は自分しか守れない。
「でもアラン…いいえ、パパを守らないといけないから頑張るわ」
そうこうしているうちにロペラの口からカウントダウンが始まった。
「10」
「メリッサ」
「パパ」
「9」
メリッサとアランを覆うようにバリアが包み込む
「8」
しかしメリッサは上手く『バリア』を作れずにいた
「7」
「ダメ、パパ、あたし出来ない」
「大丈夫だパパが付いてる」
「6」
「うまく張れないの」
「じゃあこうしよう、もし張れなかったら私は超加速を使いロペラと一緒に外に出る、爆発寸前ならいけるかもしれない」
「5」
「でもそれじゃパパが」
「いいんだ、お前が今頑張っている。私も何処かで頑張らないと」
「4」
「嫌!」
「大丈夫。私の娘だ、やれる」
「3」
「うわああああああああ!!」
バリアが二人を覆い球状になろうとする
「2」
アランはメリッサを抱きしめ__
「1」
ロペラの身体が光始め、鉄の触手は眩い光を放ち____
「0」
大爆発を起こした_____
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彼らはロペラに集中していたせいで気付かなかった。
そう日本の領地、ある都市にあるビルに落ちる寸前2mで爆発したのだから。
織田商事の看板は見るに無残な姿となった。
最後までお読みいただきありがとうございます!!
(tt)ねむい