第12.5話 始まり 前編
メリッサが謎の女性と出会い
物語は加速する__________
~航空機内~
機内に悲鳴が響き渡る。それは安心しきったアラン博士の耳にも届いた。
「メリッサ!!」
彼は悲鳴の主がメリッサだと直感で信じ、名前を呼ぶとともに走り出した。
それはズンズンと足音が重く、軽やかに早く、走る。
アラン博士が駆けつけると、そこには___
きれいな女性がトイレのドア前に立ちながら、そのドアを細い剣で
何回も、何回も、突き刺しては引きを繰り返している。
その光景を見たアラン博士は静かに重く丁寧に呟く。
「何をしている.......」
女性は一連の動作をやめ、綺麗にカーテシーをしながらこう言った。
「ご機嫌ようミスターアラン調子はどうかしら?」
「ああロペラか最高にクソッタレな気分だ」
「あらあら女性の前で、はしたない言葉ですこと」
「いいから、そこから、離れろ」
アラン博士は指をロペラに差しながら、足を一歩踏み出す。
ロペラは細い剣、もといレイピアを構える。
「メリッサ!そこにいるのか!?」
アランはロペラから目線を外さず、声でメリッサの生存確認を取った。もちろん生きていると思っているが念のためだ。
そうすると半壊したドアの向こうから
「アラン博士……逃げて……」
かすれて今にも消えそうな声が聞こえた。
「よかった…」
アランはホッと安堵した、が
その瞬間、ロペラはアランに向かってレイピアで突き刺そうとするが
それをギリギリ体をひねり、避けるアラン
しかしロペラは隠していたマンゴーシュで避けたアランに追い打ちをかける。
その短剣は確実に、アランの心臓を突き刺すものだった。
だが___
「舐めるな!!」と言いながら、ロペラと反対方向に人間技とは思えないほどの超加速で後退、
そして壁にぶつかることなく止まった。
それを見たロペラは、たいして驚く様子をなく拍手をしている。
「流石、アラン・リック博士、新人類学の第一人者」
息切れするアランをよそに勝手な紹介をしだした。
「今の人間じゃ先はないと考えた貴方は人間に眠る100%のうち、50%を【一時的】に引き出したマッドサイエンティスト」
アランは能力行使による息切れがなくなり落ち着いたところで
「はは、そうだな、そう言われても仕方ない」
「だがな、あの事件の原因はお前の可愛い大統領様のせいでもあるんだぞ?お前は早く帰って大統領様のお粗末なモノでも食べてろよ」
ロペラは明らかな怒りを表した。それは自分に対してではなく
「葬ってあげましょう、あの方の庭であの方を侮辱した罪は重いわ」
大統領の事で怒ったようだ。
アランは負けじと
「そうだな、お前も私の大切な人を襲ったから葬ってやるよ」
しかしここでアランは何かに気付くことになる
「.......ここ、ダレスの領空なのか?」
「そうよ、正しくは日本に着くまで機内はダレス合衆国の領地よ、着けばの話だけどね」
「嘘だろ…」
アランはやらかしたと感じた。それは追手が機内にいる可能性を考えてなかったこと。
「さて、おしゃべりは終わりよ」
いつの間にか、アランとロペラの距離は近づいていた。
瞬間、アランは加速しロペラの後方に距離を取る形で立っていた。
そしてアランの両手には頭から血を流し所々に怪我をしているメリッサが抱っこされている。
「メリッサ.......」
アランは意識の無いメリッサの顔を撫でるように手を添えた。
「あら、自分達から纏ってくれたのかしら?やりやすくなったわ」
そういいながらレイピアを床に突き立てた。
彼女の後ろから数多の細く長いレイピアに似た触手が二人、目掛け飛び出してきた。
アランは超加速で避け航空機の前方に向かい、走った。
しかしアランを追いかけるように、時に先回りするように
鉄の触手は次々と二人を襲う。
しかし、ただ単にアランは逃げているわけではない。
いつか来るチャンスを待ちながら、体の限界に答えながら走り続けた______。
第12.5話 始まり 前編 続く
最後までお読みいただきありがとうございます!!
そろそろですね