第10.5話 大統領
有真がうずくまり、力の使い方を考えている間に世界は動き出す。
~ダレス合衆国、アーバン空港~
がやがやと人々が往来するアーバン空港の第二ターミナル。
そして雑多な足音に紛れて、きれいに床をノックしながら歩いている女性がいる。
女性は金髪碧眼であり、魅力的なスタイルは男性の視線を盗むには充分だ。
しかし誰も彼女に声をかけないのは、一緒にいる男性のおかげでナンパされずに済んでいるのかもしれない。
なぜなら、男性は筋骨隆隆、顔は初老ながらもいかつく、誰も寄せ付けないオーラを秘めていた。
「博士、ウィスター大統領の約束の時間まで、まだありますよ?」
「ふむ」
「私ランチが食べたいの」
「だめだ」
「なんで!」
博士と呼ばれている初老の男性はため息をついて
「予定を詰めないといけないときもあるんだ、君も事の大事さをわかっているはずだろ?」
「それはわかっていますけど!」
女性もため息をつく
「貴方と30日間南極で過ごして、大体が非常食やレーションばかり!やっと帰ってこれたと思ったら、早歩きで行ってしまうんだもん!」
怒ったみたいで頬を膨らます女性。
初老の男性は一呼吸置いて女性の頭をなでた。
「私は鈍感だ、君もそれを知っているだろう。申し訳なかったな」
なでていた手を下ろし
「また大学で会おう。メリッサ君」
「そういうことじゃないんです!アラン博士!」
アランは女性の心に非常に鈍い、だからこそメリッサは頭を悩ませていた。
「あーもいいです!今度の休み一日言うこと来てくださいね」
アランは優しく微笑み
「ああ」
と言い止まっていた足をメリッサと並んで歩みだした。
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~ダレス合衆国、ダレスハウス~
「大統領、早めの来訪お許しください。」
アランとメリッサは円形上の大統領執務室に居た。
大統領執務室の真ん中に誰もが欲しがる、謀略と国民で出来た椅子があった。
しかし椅子に、一人の男性がアラン達と同じ方向を向くように座っている。アランと比べるとかなり若い部類だ。
「よい、して何か急ぎか?」
「はい、実は大統領に急ぎ見てもらいたいものが」
こう見るとアランが敬語を使うこと違和感がある。しかしアランはソレが正しいことだと理解している。
アランは大統領執務室にあるテレビに映像を流し始めた。
「ほう…これは興味深い」
「どうなさりますか大統領」
大統領は椅子を回してアラン達に向くと謙虚にこういった。
「我々には関係ない、放置しておけばいい」
「っ…」
メリッサは何かを言おうとしたが、アランに制止される。
「わかりました。彼はアジア人のようです。諸外国に映像を渡してもよろしいですか?」
大統領は飽きたといわんばかりに
「お任せする」
「ありがたき幸せ」
アラン達は用が済むと足早に執務室を出ようとすると、大統領から一言
「アラン君、わが国に【害】がないように.....................な?」
「はい存じ上げております。」
アランは冷たい執務室から出るように扉を閉めた。
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~ダレスハウスにある廊下~
「なんですか!あの大統領は!」
「.....................」
「ね!アラン博士!」
「.....................」
「.....................博士?」
「メリッサ君、出国するまで静かにしてくれ」
メリッサが不思議そうに顔を覗いてくると、アランの顔がまるで仇を見つけたような顔をしていた。
「アラン博士?!どうしたんですか?」
「あと後ろを振り向くな、私は出国まで沈黙する」
そういわれると、メリッサは振り向きたい衝動に駆られたが
「だめだ!」
アランはメリッサの頭をつかみ、前を向かせる
「痛い!」
「頼む…今は前を向いてくれ…」
メリッサは必死なアランをみて
「わかりました。あとで説明してくださいね」
「ありがとう」
アランはメリッサの頭から手を放すときに頭をなでた___
二人の後ろには人間ではない何かが蠢いていた。
第10.5話 代統領 続く
最後までお読みいただきありがとうございます!!
こういうのは外伝で書くべきなのかな?