03 異世界転移/転生って、あんまライトな作風に合わなくね?
誤解ないように言っておくが、転生であろうと召喚であろうと、ファンタジーではベストマッチングな展開なのだ。読者が持つ現実と、物語の中で描かれる空想を結びつける上で、これ以上ないくらいの舞台装置と言っていい。
それ故、あらゆるメディアや作品で取り上げられすぎてしまった。
『お約束』を過ぎて、形骸化している。
言っては悪いがデッドコピーを重ねすぎて、世界観が死んでしまっている作品が多い。
現代人が異世界へ転移/転生するのにマッチングする展開は、自分が考える限り、2パターンある。
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①なんか知らんけどそうなった
人間の手によるものなのか、神様といった超常的な存在の仕業かはさておいて。
何者かがなにかの目的のために、主人公を転移・転生させた。
なんのために主人公を転移・転生させたのか?
ンなこと知らネ。
それは作品それぞれの個性によるので。
為政者が体のいい死兵を作るためなのか。
技術や知識を欲した考えなしの行動なのか。
神のいたずらなのか。
邪神や悪魔の企みなのか。
主人公は、その企みを暴き犯人を捜すのもいい。
超常現象の解明は諦めて、元の世界に戻る手段を探すのもいい。
帰るのを諦めて、その世界で生きたっていい。
誰がなんの目的で行うかは、少なくとも簡単に明かすべきではない。
安直に明かしてしまうと、登場人物が全員アホになって、物語がチンケになってしまう。
そういうコメディタッチな安っぽさが売りなら問題ないが、シリアスありきの長編でやるのは、避けたほうがいい。
最初にしか登場しないキャラじゃない?
本当にその目的のために、地球産異世界人が必要?
外来生物を入れるリスク考えてる?
凡百の作品では、ここらに多大なツッコミどころがあるため、少なくない読者が嫌うことになる。
ここで『小説だから』『フィクションだから』で逃げると、ロクなことはない。
尚、転移や転生が誰の手も携わっていない、一種の事故という物語もありえるが、何者かの仕業かも明かされないなら、事故の場合と同一になるので、ここに含める。
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②ガチのピンチで奇跡が起こった
異世界からの勇者なんて、おとぎ話に描かれていること。
召喚なんて技術は存在しないというのが通説。
だが、成すすべのない未曾有の危機に、人々は祈る。
そうして希望が現れた。
万策尽きた悪あがきというか、期待できない奇跡にすがったら、神の気まぐれか理由は知らんが結果として英雄たる人物が出現する。
現代社会で『神頼みしたら本当に奇跡が起こった』くらいの召喚ならば、ほとんどの読者は納得する。ここまでツッコんだら、フィクション完全否定レベルの意見なので、無視していい。
でだ。
きっとそういった物語を書いてる作者さん方の多くは、このパターンのつもりで書いてると思う。
魔王といった脅威が出現したから、国は勇者・聖女を召喚した。ピンチ以外のなにものだと。
でもほとんどの場合、全然違う。
危機感が足りないから、説得力がない。
魔王が出現しても、ファンタジー世界の人々、フツーに生活してない?
魔物がその世界の生態系に組み組まれてる存在、つまり『普通』の存在ではない?
悠長に訓練する余裕があるんじゃない?
魔王といった脅威は、偉い人の口から聞ける情報だけじゃない?
こういった条件が揃っていると、フィクションらしさではなく、嘘くささが半端ではないのだ。『異世界での生活』ではなく『書き割りの前で劇をやってる』くらい雰囲気が違う。
この展開で物語を作るならば、軍は壊滅、町は火の海、多くの市民が犠牲になり、扉の向こうに敵がひしめいてるハードモードスタートくらいが望ましい。
そうでなければ、『世界の危機だから召喚された』という前提を捨ててしまったほうがいい。