二話03〜歓迎〜
久しぶりの更新です。
デッドライン読者(居るのか?)の皆様。
お待たせ致しました〜
ゲリラ達に連行され、ジンが連れて行かれた場所は基地と言うにはほど遠い、民間の学校程の広さしかない粗末な建造物だった
森林から開けた場所に存在する壁は鼠色の所々弾痕が点在する薄汚れたコンクリートで構成されていたものの建物自体の造りはそこそこ堅牢に見え、古くからそこに在ると言わんばかりの存在感を放っている
また、周りには土嚢が二メートル程に渡って積み上げられておりそのすぐ手前には木製の杭が針地獄のように尖った先を天へと伸ばしていた
戦国時代の城に備え付けられていそうな罠ではある、流石に爛クラスのエージェントには小石並みの妨害にも満たないだろうが、
ゴーストと呼ばれる“教団”の最下級雑兵に対してはそこそこ有効に見える
更に外周の他にも土嚢が低く積まれている場所も点在している
恐らくは攻め込まれ際による敵軍の進行妨害と、身を守りながら銃器等で味方が応戦するためのバリケードも兼ねているのだろう
土嚢で囲われた外周を含めると直径一キロ程の広大な砦はまさに前線基地と呼ぶに相応しい威容を醸し出していた
尤も此処をずっと守護しているゲリラ達の力量によるものが殆どだろうが
「着いたぞ」
ゲリラ隊のリーダーが腕を後ろに回されて、手錠で拘束されたジンに対して告げた
「ここか」
ジンが拘束されてから基地に来て初めて発した言葉はそれだけだった
彼にとってお粗末な基地はあまり興味が無い上に、自身の関心事は他にあったのだから仕方ないと言えば仕方ないのだが
「これからお前はひとまず拘束されたまま牢屋に入る事になる」
「そうか」
自らの処遇が決まったにもかかわらず、それだけの反応、一言だけの返事
あまりにも短すぎる問答でジンは抵抗すらせずに己の立場を受け入れ、
手錠をかけられたまま、ジンは基地内の牢屋に入れられた
ゲリラのリーダー曰わく、この基地の隊長と相談しジンの処遇を決めるという事らしい
勿論このまま捕まったままで居れば“教団”の裏切り者である以上彼の扱いはそれほど良くはならないだろう
拷問なり身体検査なりで色々調べ上げられ、最終的には研究施設なりに運ばれてエージェント用に改造された貴重な彼の体で人体実験までするだろう
これはあくまでもジンとして考えられる最悪の予想であり、決してそうなるとは限らないのだが、可能性の一環として考慮すべきである
そうなれば“彼女”に会うどころの話ではない
“教団”の粛正ではなく捕まった先で戦わずに命を失うのはあまりにもバカバカしい
それなのにも関わらず彼がゲリラに捕まったのは、単純に体に休息を与える為と抵抗してもあの場所では一人殺した所で後は蜂の巣にされる―――つまりは勝ち目がなかったからと言うことだ
仮に十全のコンディションを有していれば、あの程度の連中は条件次第で素手で渡り合える
そして、刀さえ持っていれば余裕で皆殺しに出来るだろうが、それでは意味がなかった
危険を冒してあっさり捕らえられた理由はもう一つある
肉体強化を施されたジンにとって鉄格子で覆った牢屋など簡単に脱獄できるモノにすぎないからである
ただ、彼は今のところ“彼女”に関する情報を持ち得ていないし、個人で調べて入手できる情報は限られる
だから、組織で上位の権力を持ち得る人物と接触し“彼女”の行方に関する情報を得たかった
先刻にて彼がゲリラ達に抵抗しなかったのも出来るだけ温厚に事を運ぶ必要性もあったが故
もし、ゲリラ達に何のメリットも見いだせず無かったとしたらジンは全力で逃亡したはずだ
何度も言うようだが、彼は“教団”によって常人には持ち得ない再生能力とオリンピック選手をも超える身体能力を有した人を殺すための殺人機械だ
加えてゲリラ達の練度もジンがこれまで交戦してきたレジスタンスに比べて水準も馬鹿に出来なかった
仮に体力も落ちているこの状態でゲリラ達と事を交えば数人か手加減出来ずに殺してしまったかもしれない
そんな事をしても罪の意識などとうの昔に磨耗してしまったジンはなにも感じなかったかもしれない
ただし、自分が救い救われた“彼女”がそれを知れば、きっと悲しむだろう
それを思うと遠い昔に忘れた良心が疼くのを感じ
ジンは固い石畳の上で一週間ぶりの眠りに落ちた