一話01〜逃亡者〜
プロローグから大分間が空きましたが第一話の一部分です。
海の近辺の広大な草むらで数人の黒服が一つの影を追って駆けていた。
だが、影の脚は並の速さでは無く追うものとの距離はいっこうに縮まる気配を見せない、しかしそれに付随するように走る黒服逹も共に尋常では無い身体能力の持ち主である事が見てとれる事が判る
そして黒服逹は何の前触れも無くいきなり影を見失った
追跡者逹は混乱し、辺りを見回すが何処にも獲物の痕跡は見当たらなかった。
そして唐突に黒服の一人が肩口から左脇にかけて血を吹き出しそのまま倒れた
仲間の異変により緊張する一団
――斬――
ひゅんと空を切るような鳴る音と共にまた一人、黒服が地に倒れる
「警戒しろ、裏切り者はあの」
そこまで言いかけた所で黒服が倒れた
最後になった一人は拳銃を構え訓練された動きで警戒する
がさっ
草の向こうからかすかだったが物音がした
黒服はそこに銃口を向けて近づいていく、その時だった
「後ろだ」
声が聞こえたと同時に左脚の太股に鋭い痛みが走った。
「お前には質問に答えて貰う」
脚を庇いながら振り向くとそこには黒いコートを着た男が黒服に日本刀の切っ先を突き付けていた。そこで最後の黒服は理解した。男を追っていたつもりが狩られる側、すなわち獲物は自分達であった事実を
「お前逹を指揮していたのは誰だ?」
「・・・・」
黒服は男に向かって銃を向け引き金を引こうとしようとした
だが、それは出来なかった
発砲する直前に男の日本刀が拳銃を半ばから切り落としたからだった
「、、、ッ」
黒服の表情に初めて焦りが生まれた
「もう一度言う。お前逹を指揮していたのは誰だ?」
黒服は答えなかった。その代わり叫んだ
「裏切り者がッ!」
そう言って、口の中で奥歯に仕込まれたカプセルを噛みしめた後、黒服は力無く崩れ落ちた
「毒か。高度な訓練を受け忠誠心が厚く機密を絶対に漏らさない部隊。となるとやはりあいつが、、」
そこまでひとりごちて男は頭を抱えた
「死ぬかもしれんな」
ネガティブに呟くが悲壮感は見せない。まるでそれすらどうでもいいかのようだった
「いや、俺が居なくなったらあいつの面倒が見れなくなるな」
また呟き、踵を返す。
そして海沿いの橋の方角へと歩き出す。
背後にはいっぺんも振り向かず真っ直ぐに歩いて行く
そして草原には物言わぬ黒服の死体のみが残された。