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パルサーシリウス号の謎

作者: 中仙堂

 諸君元気かね。わしじゃ。

 わしと云っても判らんじゃろう。

 今になっては語り草にもならんようじゃ。

 時代の波のはるか彼方へ葬り去られた『ほら吹き男爵2世』じゃ。

 

 一九九二年三月世間では世紀末とやらで大騒ぎだったようじゃ。

 その時わしは月面の裏側に建設した宇宙探査船『パルサーシリウス号』の発射カタパルトに居った。


 勿論たまにやって来るNASAやロシアの月面探査機の高感度カメラに見つからんように、巨大な偽装を施したので、たぶん何も写っとらんじゃろう。


 わしも齢99歳じゃ。

 何故この歳で宇宙に走ったかと云うと、それは幼い時から夢は大空を駆け世界(宇宙)の果てを旅する事じゃった。過去の『ほら吹き話』の著作権で巨富を得たわしは、その後天才科学者達を手なずけて、南太平洋の孤島に謎の基地を造った。


 志を立てて四○数年。

 わしの五体も半分機械となった。

 が、諸君わしの灰色の脳細胞は、未だ未だ若者そのものじゃ。


 わが長年月の広大な夢を実現しないで、何の『ほら吹き男爵』じゃ。


 何故月面を選んだかと云うと、月面の重力は地球の1/6じゃ。そこで超リニアモーターのカタパルトで、探査船を打ち上げる計画じゃ。

 エネルギーの節約。そう、地球の強大な重力圏からの脱出のロスを考えたんじゃ。


 しかし考えて見たまえ。その程度のスピードで、広大な宇宙の彼方まで行けると思うかね。

 宇宙の広大さは、人智を遥かに越えておる。

 天才科学者のノームが考えた超高速永久機関『フィックス003』の開発が必要じゃった。

 超リニアモーターマシーンのエネルギーを月面の低重力環境で加速し、そのエネルギーを(ブラックボックスじゃが)『フィックス003』の中に封じ込め凝縮するんじゃ。

 その巨大パワーと宇宙空間でのワープ航法を組み立てたのが、最終的には成功の要だった。


 わしは今土星の前を通過し、間もなく太陽系を離脱する処じゃ。

 今後わしはその都度、通過地点の天体を観測し、見果てぬ宇宙の彼方から、その画像を諸君達へ転送する予定じゃ。


「おい、ジム君メガスクリーンを頼む。

 ほら、凄いじゃろう。 これが土星のリングじゃ」


「そういえば諸君、知っておるかね。

 あの土星のリングは5年に一度『スーパーサテライトレース』のコースになっとる。

 木星の衛星『イオ』と土星の衛星『ヤヌス』の住人のレーサーが一杯集まってな。

 自慢のマシーンに乗って、性能とテクニックを競うんじゃ。」


「判っとるよ。ここで諸君らは失笑するか、はたまた、眉唾ものと、騙されない用心するのが落ちさ。

 しかし、21世紀の子らよ、欺かれるなかれ。

 某国の宇宙開発は相当進み、世間の知らない内に、地球以外の惑星又その衛星には、どんどん移住者が、住み始めているのじゃ。


 諸君は火星に生物が居るのを知らないかね。

 そう、火星人では勿論ない。

 地球人いやいや、火星に住んで居ればもう立派な火星人じゃ。」



その時テレポーションルームのランプが点滅し、来客を伝えた。


「ほれ、お客じゃ。」


「最近醜悪な、おっと。

 我々地求人にとってだが、ほれ『エイリアン』がテレポーションルームに突然登場する事がある。

 だからわしの秘書の『ハナ子』嬢等、このコンタクトルームで、何度失神したか。

 はっはっは。

 面白かったぞ。いや、失礼。」


突然の客の来訪に全員、一瞬身を引いた。


「おーい。ホラ吹き男爵居るかい。」

「その声はやっぱり、『ヤヌス』の鍛治屋ジャック爺さんじゃな。

 相変わらず『スーパーサテライトレース』に入れ込んで居るのじゃな。もちっと仕事に精をを出しゃ一流なんじゃが。」


「爺さんは止めとくれ。早速わしの悪口じゃな。」

「そんなんじゃないさ。」

「おや、新顔だね。」

「今度わしのマシーンを操るニューフェースじゃ。」

「この間地球からやって来た、トムだ。」


「男爵、いよいよ長旅らしいが、どうだね。

 その前に『スーパーサテライトレース』のコースを、ニューフェースの運転する、わしのマシーンで探検するのは。」

「そうかい。それは何よりのプレゼントだ。喜んで招待を受けるよ。」


 わしらはトムの操作するマシン『レッドフォックス』に乗り込んだ。


「Mrトム、私はレッドフォックス。スタンバイO・K。」


 マシンは青白い炎を上げて滑り出した。

 頭上には視界一杯に広がる土星。

 そしてそれを斜めに横切る巨大な銀色のリング。


「土星のリングは巨大な氷のベルトじゃ。

 と云ってもそれはつるつるの氷原ではなく、ごろごろした巨大な氷山の群れが限りなく続いた荒野そのものじゃ。」

 この荒涼とした原野をハイスピードで飛ばすのは、至難の技じゃ。 

 それにはハイテクを駆使したマシンの動力もさる事ながら、その氷塊の群れをどう避けるかじゃ。」

「そう。そう云う事じゃ。

 わしのマシンには衝撃波によるバリアが付いとる。


 その時「ドーン」と強烈な衝撃音と共にマシーンがグラリと傾いた。

「マスター失礼しました。」

「気を付けろ。“ビックバーン”を甘く見るな。」

「イエッサ。」

「未だ未だ未熟じゃよ。バリア、O・K?」

「イエッサ。」

「はっはっは。」


 “レッドフォックス”は、バリアの自動装置のスイッチが入ると、氷塊を粉砕しながら、すっ飛んだ。

 左上方に巨大な天球を見上げながら、恐ろしいドライブが始まった。


「“母なる地球”から見れば、霞みみたいなリングじゃが、この通りじゃ。」

 氷原に続くクレバス、氷の橋。氷の林「見事なものじゃ。」


「マスター。」

「なんじゃ。」

「何か、変な信号が入ってます。」

「レッドフォックス、分析。」

「発信源は前方23万キロ。

 未熟者のトムさんには判らんでしょうが、モールスです。SOS!です。」

「機械野郎め、うるさいぞ。」

「ホーッホウ。これは驚いた。」

「一体何事じゃ。救難信号か。」

「わし達には長旅が待っているが、これは行かねばならんだろう。」


 レッドフォックスは大至急現場付近に着いた。

 巨大な氷塊の上に、

一人乗りの救命ボートが乗っていた。早速レッドフォックスはドッキングすると、ハッチを開いた。

 意外にも中に居たのは、白人系の二十歳位の若い女性だった。


「有難う。」

「とても、心細かったわ。」

 女性は涙ぐみながら言った。


「トム、良かったな。」

「どう言う意味ですか。」

「まあ、良いから。」


「私は『イベリア』2週間前から、レースの訓練で、このリングに来てたわ。」

「それでどうしたんじゃ。」

「ゴーストよ、ゴースト。」

「ああ、あの嫌われ者か。」

「2日前このコースで練習してたら、突然やって来て、私のマシーンを取り上げて行ったのよ。」

「マシンの名前は。」

「クロコダイルよ。」

「えっ。あの本命の。」

「前回までは父が乗ってたの。」


「でも、こんなちっぽけな救命ボートに、置いてきぼりは可哀想だ。」

「あいつらと一緒より、益しだわ。」

「オッホーッ。勇ましい。」

「ボク、負けそう。」

「ハッハッハー。」


「まあ、わしの船まで戻ろう。」

「お邪魔して、宜しいかしら。」

「いや、大歓迎じゃ。」

「ロボットのハナ子も、話し相手が増えて大喜びじゃ。」

「ハナ子自慢のコールドチキンも大した物さ。」

「楽しみね。」



「いやはや、大変じゃった。何がと云えば、ミス.イベリアを襲った悪漢共を、儂ら…つまり、儂とジャック、トムとでやっつけたんじゃ。

いや、諸君に見せたかった。大したバイオレンス、圧巻じゃった。はは。」


「わが、シリウス号はこれより、ワープ航法に切り替える。」

「どんなもんじゃ、見たまえ窓の外を。

 いや、失礼。窓は無かった。スクリーンじゃ。」

「なーんだ、何も見えない。」

「現実とは、こんなものじゃ。」

「えっ? 何。バイオレンスを見たかった?。

 儂は暴力は嫌いじゃ。勧善懲悪は格好良いが、儂には人を裁くセンスは無い。

 一つだけ教えよう。

 金には魔力が有ると云う事じゃ。

 しかし地球圏を離れると、Moneyや、Goldは一片の価値も無い事を云って置こう。

 こちらでの、其れに当る物は何かって、ハート? さあ、どうじゃろう。」


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