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幕間〜彼女の監視日記〜
「ふぅー、焦ったー。今のは焦ったよー…」
青白い空間、そこに漂うようにある無数の本。そして漂う本と同様にゆらゆらと宙で揺れる彼女は額に汗をかきつつ呟いた。
「流石にこんなタイミングで、こんな馬鹿な死に方されたらたまらないよ。うん、困ってしまう。」
だが、その原因のほとんどは彼女自身にあった。
なにせ御蔵天兎を強引に異世界に送りつけた張本人だ。
しかもたった2つの能力と寂しい金銭だけしか持たせず。
「でも仕方ないよ、僕も知らなかったんだ。世界を渡らせる際には他の世界の物は異物として排他されちゃうなんて。」
そして彼女は、あはは、っと笑いながら誰に伝わることも無い言い訳を呟く。
「でも、天兎は運が無いなー。あの子の性格だと、先ずはこの世界を把握する為に情報集めや座学チックな事したいだろうけど…」
虚ろな目をして続ける。
「まさかこの世界に来てすぐ、こんな所で、こんなシチュエーションで、リズ・スタンドッグと出逢っちゃうなんてね…」
そして彼女は御蔵天兎の辿るであろう道を想像する。
そして、苦い笑いをこぼしつつ1冊の本を閉じるのであった。