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天空の墜落  作者: 卯月
3/10

魔法講座

「ごめんねぇ、部屋一つしか空いてないのよー」

頬に片手を付いて眉を下げる女主人に気付かれないようにため息をつくのはアレス。

これで宿泊を止められたのは5軒目だ。アレスとティリアが森を抜けたのは日が傾き始めた夕方。急いで近くの街に入り、宿屋を探したのだが…この村は旅行者や商人達がよく使うのか殆どの宿は空いていない。空いていてもひと部屋だけ、が多い。

「しゃあねぇ、次行くぞ…」

「大丈夫ですよ。その部屋おいくらですか?」

「え…?本当にいいのかい?ベッドもシングル一つだよ?」

「はい、構いません。これまでにも宿を5件程回ったのですが中々見つからなかったので…。それに、こんな素敵な方がご主人をされているとなったらとても居心地の良い宿屋なんだなって思ったのです」

「あらあらまあまあ、嬉しいこと言ってくれるじゃないの! 狭い部屋だから値段は半額でいいよ。1200Gの所、600Gだ」

「本当ですか!ありがとうございます!」

両手で六を示した女主人に、ティリアは喜んだ。


ティリアはマントの中に収納している道具や服を出し、明日にでも補充すべきものを確認している。その様子を興味深げに見ているアレス。

「随分沢山の物をしまってたんだな」

「そりゃあ、長い旅ですから荷物は多くなります。 それに、身軽にしておかないといざという時に動けませんからね」

そうだな、と頷くアレス。彼も、最初は大きめのリュックを持っていたのだが、現在はティリアのマントの中に収納されている。その方がいざという時(主に悪魔等に襲われた時)に動けると判断したのだ。

「で、明日はこの街で買い出しするのか?」

「はい。食料は勿論ですが、その他の必要なものも買わないと…。 まずアレスは服を買いましょう」

ティリアに言われて気付く、昨日悪魔に襲われて負った心臓辺りの大穴を。今はティリアから借りているマントで穴は隠されているが、実際はまだ大穴は空いている。それに、彼が着ている服も若干ボロボロで、どことなく貧乏臭い。

「…なんでお前の服はそんなに綺麗なんだ」

「ちゃんと替えを持ってますからね。魔法で傷は癒せても、物の修復は私の専門外ですし」

「魔法に専門・専門外があるのか」

「一応あります」

ごそごそと出した物を収納する手を止めずにティリアは魔法の法則について語る。

「まず、魔法には大きく6つの属性に分かれています。有名な世界樹神話に出てくる光と闇、火と水、木と土です」

世界樹神話。有名な物語で、子供たちでも知っている物語だ。

ゴルテヌス大陸にそびえたつ世界樹ユグドラシル。

これには幾つかの神話が存在している。この樹は天に住まう神々へと繋がっている、世界樹が枯れた時世界は滅びる、世界樹から魔力の元となるマナが世界中に送られているなど数え切れない程存在しているのだ。

ティリアが指すのはその中でも知らないものはいないとされる"6人の精霊"という物語。

簡単な内容は、この世界を作ったのは天に住まう神々で、ある時世界を緑豊かなものにする為世界樹ユグドラシルを植えた。

世界樹には精霊が宿っていて、それぞれ光と闇、火と水、木と土の6人の精霊がいたとされる。

その精霊たちが神々から受けた命を実行に移すべく、彼等が選んだそれぞれの6つの生物たちに、それぞれの魔法の種を与えた。

すると、6つの生物は強力な魔法を受け継ぐ事ができ、彼等から続く子供たちは魔法が使えるようになった。

この神話から、魔法を使える者達はその6つの生物の子孫と云われるようにもなっているのだ。

「それなら俺も知ってる、大まかにだが。神さんが世界樹を植えて、それに宿っていた精霊達が6つの生物にそれぞれの力を渡したって奴だろ」

「実際、その6属性は存在します。本来、魔術師はひとつの属性を極めますが、私のように主に使うのは水属性でたまに空間魔法といふうに複数の魔法を扱う者もいます」

「その二種類に違いはあるのか?」

「簡単に言えば相性ですね。基本的に6代属性の中の2種類を持つものは存在しません。というか有り得ません」

ティリアの言葉にアレスは首をかしげる。

「簡単に言いますと、属性の相性が合わないのと、6属性は人間の許容量をかなり圧迫してしまうんです。光は闇と相対しお互いに弱点になります。火と水、木と土も同様です。例え、異なる二種類の属性を持つ事が出来たとしても互いの属性がその魔術師の中でぶつかり合い、勝てなかった方の属性が消えてしまうんです」

「へぇ、でもお前は二つ持ってるよな。水と空間」

「はい。水は6属性で空間は光属性から派生したもので、上手いこと反発せずに私の中で共存しています。あと、派生した属性は結構使いようによっては強力になりますが、普段はそうでもないので許容量には余裕があるんです」

「その二つは反発しないのか?」

「6代属性はなんというか…ちょっと個性と威力が強いのですが力が強すぎて他の6属性とは共存できませんが、その6属性から派生した属性とは反発しないんですよ。恐らく、6属性より力が弱いからかと思います」

「他に派生した属性はあるのか?」

「空間魔法は光属性から生まれました。他には、雷ですね。 私の水属性から派生したのは氷、木属性からは毒と風。後は闇属性からは影と呪いが派生しています。他にも私が知らない属性は沢山あると思います。…アレスに呪いを掛けたのは闇属性が得意の魔術師でしょうね」

全ての荷物を収納し終えたティリアはアレスを見る。

「闇属性の派生である呪いを扱える者は極少数。何故だと思いますか?」

「え…、んー…相性とか?」

「相性もありますが、呪いというのはリスクがあるんですよ。 呪いは選んだ相手に傷を負わせたり、死に至らしめたりもできます。その反面、その術式は高度で難解です。更に、術式を間違えたり相手に上手くかからなかった場合はその呪いが自分へと跳ね返ってくるからです。数百年前は闇属性の魔術師は結構居ましたが、そのリスクによって命を落とす者も少なくありません。 あなたが掛けられている"悪魔の命"は断片しかしりませんが、かなり高度のものである事は間違いありません。それを掛けた者はかなりの魔術師…私でも勝つ事は難しいでしょうね。聞きますが、もし貴方に呪いを掛けた者…術者と出会った場合、どうするのですか?」

「…詳しい事は考えてねぇが、まずはこの呪いを解かせる。んで、ぶっ飛ばす。…まぁ、相手の態度とかによっちゃあ順番は変わるだろうが」

「そうですか。 まぁ、強敵でしょうね。 んまぁ、話を戻して…6属性は世界樹の精霊から受け継いだこともあって、主に命や自然に関するものには強いです。だから魔法で傷を癒すことができます。 治癒魔法は本来、対象となる生物の生命力を底上げする事で傷の治りを促進させますが、既に息絶えてしまった者や命の宿らない服などの無生物に対しての効力は皆無なのです。 私は6代属性に属しているので出来ませんが、この属性以外の…派生した属性の中のどれかには無生物でもなおす…。元の状態への再生が可能である属性があるかもしれませんね」

一通り話したティリアは両手を合わせ、微笑む。

「さて、魔法講座は終わりです。そろそろ寝ましょうか」

ふああ、と手のひらであくびを隠すティリアに頷き、ソファに横になるアレス。

「アレスはソファで寝るんですか?」

「ベッドが一つしかないんだからそうなるだろう」

「確かに一人はソファになってしまいますが…不公平ですよ」

「は?何が不公平なんだ?」

「だって、いくら柔らかいソファといえどベッドに比べて疲れは取れませんし、変な寝方でもすれば寝違えてしまいます」

「平気だ。慣れてる」

「でもダメです。たまにはちゃんとベッドで寝てください」

「お前、変な所で頑固だな」

「真面目と言ってください」

ベッドから立ち上がったティリアがアレスの腕をぐいぐい引っ張りベッドへと導く。歩き詰めで疲れているアレスはどうとでもなれ、とため息をついた。

「そうだ。ベッドで一緒に寝ましょうか」

「却下」

即座に却下されたティリアは不満の声を上げる。

「当然だろうが。ただでさえ男女が同じ部屋なのに同じベッドで寝るだなんて非常識だろうが」

「でも、」

「いいからお前はベッドで寝てろ。どうせ明日も買い出しで歩くんだから体調整えろ。俺は知っての通り普通よりも丈夫だから、気にせず寝ろ」

ティリアから腕を引き離し、ソファにゴロリと寝転がると今度はティリアがため息をついた。

「…分かりました。でも明日はアレスがベッドで寝る番ですからね」

「いいからとっとと寝ろ頑固娘」

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