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おいしい料理のつくりかた  作者: 紅葉
おいしい料理のつくりかた本編
64/82

特別メニュー 手を繋ぐということ【side咲】

前話(映画館デート)の咲視点。


咲の心の声が駄々漏れで、少々お下品です。

お気をつけ下さい。


「右の親指が上だったらオクテで左の親指が上だったらスケベなんだって」


 女子たちの盛り上がっている話題が聞くとはなしに耳に入ってきた。


 こっそりと机の下で手を組んでみる。


 左の親指が上……。


 いいんだ、男はみんなスケベなんだよ。悪いか。




 美晴を誘うのにはタイミングが大事だ。


 付き合うようになったからといって、毎日用事もないのにベタベタしているわけじゃないんだぞ。学校にいる間はお互いの友達に囲まれていたりするし、授業の準備だなんだと案外二人にはなれやしないんだから。


 それに美晴は真面目だからホームルームが終わると、倶楽部の準備に誰よりも早く走って行ってしまう。それが終わると次はバイトだ。

 

 出前で前を通る時に窓越しに中を窺えば、新田さんと笑顔を交わしていたりして、本当に胸くそ悪い。

 従業員の人間関係は大事だと思うよ?

 店員がギクシャクしてる店は、いくらうまいもんを提供してたって居心地が悪い。そんな店は直に客足が遠退くってもんさ。

 だけどさ。

 あーあ、どうしてあの時のり姉の誘い文句に戸惑う美晴の助け船出しちまったんだろう。

 一緒に働けたらどんなに楽しいか。

 ああ、クソッ。


 テスト期間で倶楽部もバイトも休みの間は、当然遊びにも行けやしない。美晴が遊びにいく誘いに乗ると思うか?

 だから、テストも全て終わった今日しかないんだよ。

 俺は周りに冷やかされるのを覚悟で、美晴に声をかけた。


「美晴今日バイトある?」

「ううん、今日まで休み」

「なら映画観に行かねー?」


 美晴がこくんと頷くのを見て、嬉しさで胸がいっぱいになった。絶対ニヤケ顔なんか見せねーけどな。


 最初はホテホテと歩く美晴に合わせてゆっくり歩いていた。けど、スマホで調べてあった映画の時間が気になる。あまり遅くなるわけにはいかないよな、女の子だからな。

 美晴の後ろから買い物袋を前かごに入れて、前後に子どもを2人座らせ、ハンドルにトイレットペーパーの袋をぶら下げた自転車を漕ぐおばさんが迫ってきた。

 危険すぎんだろ。


 思わず俺は美晴の手を握って自分の方へ引き寄せた。軽い美晴はふわっと引き寄せられるままに傍にくる。

 一度握った手は、離すのが惜しくて。ついつい握ったまま好都合とばかりに駅へ急いだ。


 お互いの手汗が指を滑らせる。だけど、ここで手を離して汗を拭いたら、美晴はきっと嫌な気持ちになる。そう思ったから手を握り直した。指と指を絡める繋ぎ方は、普通に握手するみたいに握るより外れにくい。

 別に変な気持ちで握ったんじゃねーからな。


 そう言い訳しつつ、小さくてあったかですべすべした柔らかい美晴の手が気持ちよくて、ついつい触りたくなってしまう。

 ヤバイ、冷静になれ、俺。


 おい、そこのチビ。その角度から股間見るな。

 コートの裾でギリギリ隠れるこの季節に心底感謝した。



 映画館に着くと、美晴は上映中のポスターを見比べて、どれにしようと悩んだ。映画を観にきたのは口実なんだから何でもいいやと思っていたが、美晴が選んだのは俺もちょっと気になっていた洋画だったから、趣味が合ったことに言い知れぬ喜びを感じた。


 美晴も手を繋いでいることに違和感が無くなってきたらしい。こうなったらどこまでやれば美晴に「手をはなして」と言わせられるかやってみようなんて悪戯心が疼く。だからハンバーガー屋に入ってからも食べにくそうにしている美晴を横目に見つつ、絶対手を離さなかった。

 奪ったバニラシェークも旨かった。美晴が目を真ん丸くしているから余計に旨かった。

 途中で間接キスだと気付いたみたいだったが、俺は最初から分かっていた。直にしてぇなんて思ってることは美晴には知られたくないし、間接キスさえ素知らぬふりを決め込んだ。


 なのに、なのに!


 なんて不覚!!


 あんなにこの映画が面白いなんて裏切りも良いところだ。映画に集中し過ぎていつしか美晴の手を離してしまっていた。それに暗がりに乗じてキスのひとつでもと思っていたのに、すっかりヤラレちまったじゃねーかー!

 気づいたら映画は終わっていたよ、チクショー!


 後悔を垂れ流しながらエンドロールを見送り、シアター内の照明が点くと美晴の頬が膨らんでいた。

 さあっと血の気が引いた。

 映画、面白く無かったのか?

 俺だけが楽しんじまったのか?


 せっかくのデートだったのに……、とボーゼンとしているといきなり飛び付くような勢いで美晴が拗ねたように腕にしがみついてきた。


「うわわ! 美晴!」

「なに?」


 上目遣いなんて誰に教えて貰ったんだよ!


「もうちょい離れて」


 当たってるから!

 ヤバイから!

 Jr.起きるからっ!


「嫌~だよ」


 猫のように腕に頬を刷り寄せる美晴。天然小悪魔って手に負えねー。


 くっそ~、いつかみてろよ!


 そう心に誓いながら、理性と本能の間で戦い勝った俺は偉い!!


 







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