特別メニュー ポッキーゲーム
美晴と咲がポッキーゲームをすると、相手はポーカーフェイスで、超赤面して サクサク食べ進めて行き、キスをします。
「11月11日はポッキーの日」にちなんで。診断メーカーのお題から創作しました。
放課後の教室。
私たち以外には誰もいない。
咲くんは自分の席に座り、一心不乱にノートを書き写していた。遡れば数十分前。帰る準備をしていた私に咲くんが声をかけた。
「美晴、放課後ちょっと時間ある?」
「うん、どうしたの」
「悪りい、世界史のノート写させてくれないかな」
咲くんは少し恥ずかしそうに言った。
「5時間目の授業はヤバイよな。俺もう眠くって、見てこれ。何書いてるか分かんねぇ」
咲くんが開いて見せたノートはミミズが這った後のような線が書かれている。
確かにこれでは宿題のレポートを作成出来ないだろう。世界史の前田先生のレポートは、授業中板書をしっかり写して30点、教科書に載っていない授業トークをまとめて60点、そこに自分で調べたものや、推論、検証、結果を付け加えて100点というなかなかに厳しい先生なのだ。
「うん、いいよ」
通学鞄に入れたノートを再び出して、咲くんに差し出す。
それをパラパラとめくり、目的のページを開く。
じっと見られると恥ずかしいよ……。
「へ、変なところあった?」
「ん? いや、美晴のノート、綺麗にまとめられていて流石だなあって思って見てた」
「そんなことないよ……本当に……」
声がだんだん小さくなる。
「サンキュな、すぐ写すから待ってて」
「うん……」
偶然にも二学期の席替えで隣同士になった私と咲くん。シャープペンシルがサラサラとノートの上を滑る音だけが教室内に響いた。
西日に髪が茶色く透けている。
睫毛、長い。
手にした文庫本の内容はちっとも頭に入らない。さっきから何度1ページ目の三行までの文字列を目で追っているだろう。気が付けば咲くんを目で追っていた。
クゥ~。
カアッと頬が熱くなる。聞かれただろうか。
ク、クゥ~。
やだもう!
咲くんがクスリと笑ってノートから顔を上げた。
「もうちょっと待って。お礼になんか奢るから」
「え! あ! 大丈夫……お菓子持ってるから」
「女子っていつもお菓子持ってるよな」
「そ、そうかな」
クスクスと咲くんが笑う。
「咲くんも一緒に食べよ」
「ラッキー」
ごそっと通学鞄に手を突っ込んで、イタズラ心がむくりと頭を上げた。
「私の持ってるお菓子はなんでしょう。ヒントは11月11日」
「なにそれ」
「クイズ」
「あー! なんだっけか! テレビで観たことあんだけど!!」
うん、今朝の情報番組でやってたよね。
もしかしたら同じ番組を観ていたのかなと頬が弛む。
「プリッツだっけ」
「残念でした! じゃ~ん、ポッキーでした」
声とともに鞄から赤いパッケージの紙箱を取り出す。プリプリとミシン目を開けて、ビニールを破って、咲くんに差し出す。
「どうぞ」
「勝った美晴からどうぞ」
「ありがと」
一本くわえて再度紙箱を咲くんに差し出す。
「こっちから貰う」
機嫌が悪そうにも見えるポーカーフェイスは、耳まで真っ赤に染まって……咲くんは私のくわえているポッキーをチョコの付いていない方からサクサクと食べ進めた。
近づく咲くんの顔に心臓の音が煩い。
そしてポッキーをくわえていることしかできなかった私の唇までそれは近付いてきて……。
キスは香ばしいビスケットと甘いチョコレートの味がした。
3分間に合わなかった(´;ω;`)




