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おいしい料理のつくりかた  作者: 紅葉
おいしい料理のつくりかた本編
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ねこまんま食堂のまかないメニュー その2

だし巻き玉子の作り方を美晴に教えた玉野咲。

彼の気持ちは……。




今さらですが、閑話=【ねこまんま食堂のまかないメニュー】タイトルになります。


「おーー!! これ、渡瀬さんが作ったの?」

「う、うん」


 教室の窓際の席で、昼休みに一人で弁当を広げている渡瀬が見えた。

 何か声をかけようかと逡巡しているうちに、野球部の鳥谷が渡瀬の横を通り過ぎざまに渡瀬の弁当箱を覗いて感嘆の声を張り上げた。


 なんだなんだと集まった男子に囲まれ、渡瀬が見えなくなる。

 渡瀬は真っ赤になって俯いているに違いない。


「うお! このだし巻き玉子旨そう~! 一個貰っていい?」

「う、うん」

「うめーーーぇ!!」

「マジか!! 俺にもくれ」

「え? え? え……?」


 ハイエナのように渡瀬に群がる……いや、渡瀬の弁当に群がる男共を見ていて、何故だかムカムカする。

 失敗した天ぷらを責任をとって全部食べた時のような。


 キャベツの千切りも出来なかった渡瀬だが、ただの経験不足だって言ってやったら、嬉しそうに笑いやがって。

 バカみたいにキャベツ一玉も千切りの練習をするような、真面目な努力家。


 きっとこの間教えた出汁の取り方も、卵の割り方も、玉子焼きの焼き方も、家でアホほど練習してきたに違いない。


 誰かの為なのか。

 あまりにも必死になって苦手を克服したいとばかりに頑張るものだから、『誰か、手料理を食べさせたい奴でもいるのか』と、そう思って聞いてみれば、野球部に差し入れしてみたいと言い出す。


 もしかして、あの中に?


 誰かに食べさせたい。美味しいと言ってもらいたいという気持ちは、料理上達の近道だからな。

 

 野球部の奴らがウマイ、ウマイととんぺい焼きをかっこむ様子を見て、渡瀬は本当に嬉しそうに笑っていた。

 その笑顔が、すごく可愛くて。


 料理が上手くなりたいという渡瀬は応援するけど、渡瀬の恋は応援しない。

 特定の誰かと付き合っているという様子もなさそうだし、片想いなら割り込む隙はあるだろうか。



「咲~♪ 台詞覚えるの付き合って~」


 無理矢理王子に抜擢された俺に、白雪姫に自薦した細木が声をかけてくる。


 はっきり言って、王子と白雪姫の会話は無いに等しい。


「女友達とやれば?」

「みんな相手してくれないんだも~ん」


 嘘つけ。

 でもまあ、努力する奴は嫌いじゃない。

 細木は見かけは尻軽そうなギャルだが、こう見えて文化祭のこの劇に力を入れて練習しているのを知っている。

 台詞の多い役だし、責任感も強いんだろう。


「しゃーねーな」

「やった♪」


 すぐに腕を絡めてくる細木は、胸が腕に当たっているのに気付いてねーのかよ。

 誰にでもこんなことしてて、襲われてもしらねーぞ。

 俺は襲わねーけど。


「ポカリで」

「えーー。他の事でお礼するよぉ~」


 不自然な赤い唇が濡れた様に光っていた。

 こいつ、昼飯に油ものでも食ったのか?

 ぎゅうっと腕に胸を押し付けられた。


 ……Cカップか?


 教室を出る直前、背後に刺さるような視線を感じ、ゾクッと背中に悪寒が走った。


「いらねー」


 中庭のベンチに座り、台本を開いた。


「んで? 俺は魔女のところ読めばいいの?」








「ち、がーーう!! もっと感情込めて!!」


 劇の練習に入り込めば、細木は一転演劇の鬼になる。

 俺は苦笑しながらもそれに付き合ってやる。


 あー、面白い。

 外面はギャルな細木が、実は宝塚フリークで娘役にどっぷり浸って白雪姫やっているなんて、誰が知ってるだろう。


「咲!! バラしたら承知しないからね!」

「へー、へー、バラさね~って。細木のこんな姿知ったら皆退くよな~」


 そりゃ、誰もいねーところで練習したいわな。

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