特別メニュー 夏休み高校生お料理王選手権 3
食材カードを求めてレストラン内を走り回る。
お客さんもお店の人もいない、ドラマのセットのようなレストラン。
椅子の裏やテーブルクロスの下……。
「きゃああん!」
悲鳴が聞こえた方に目をやると、頭から小麦粉を被った女の子がいた。
「あああっーー!」
また悲鳴。見れば、水が噴水のように上がって女の子にかかる。水も滴るなんとやら。
おそるおそる積まれたお皿を一枚ずつ捲ってみる。
「うひゃ!!」
冷たい粘度のある液体がトロトロと天井から落ちてきて、顔や胸、背中に流れる。
なにこれ~?
気持ち悪いよぉ。でも匂いは……ない。
気を取り直し冷蔵庫を漁る。
なんだかイケナイ事をしている気分。
ん?
銀色のバットの上にカードを発見!!
なになに? アグー??
とりあえずそれを手に取り、司会者に見せた。
「玉野チーム、【アグー】をゲット! それにしても、見事にローションまみれだね。どんな気持ち?」
マイクを向けられたので、正直に答えた。
「ヌルヌルして冷たいです」
いや、だから胸のところアップで撮るの止めて下さい!
他にも【アーサ】だの【グルクン】だの【ソーキ】だのの呪文のようなカードが見つかる。
美香ちゃんは、小麦粉+ローションまみれでコテコテだったけれど、見事カードをゲット!
「うち、粉もん大好きですから」
って笑顔でインタビューに答えていた。
決勝の収録が始まる前に休憩となった。
その前に女の子たちはホテルに戻ってシャワーを浴びることを許された。
熱い飛沫を浴びて、ヌルヌルを洗い流す。
これがあったための水着だったのかと納得しつつも、複雑な気分。
これがテレビに流れるのかと思うと憂鬱……。
私服のワンピースに着替えて、下階に降りる。待ち合わせのレストランに入るとみんながいた。もちろん咲くんも。
咲くんの隣の椅子に座ると、お弁当が手渡された。
「昼食だって」
「待っててくれたの。ありがとう」
ぱちんと手を合わせて、プラスチックのお弁当の蓋を取ると、ごはん、てんぷら、炒めもの、酢の物などが入っていた。
「これ、なんだろ」
てんぷらを箸で摘まんでパクリと口に運んでみた。もぐもぐ。
「もずくのてんぷらだな。こっちの炒めものはゴーヤチャンプル」
咲くんがひとつひとつ説明してくれる。
「スゴいね、咲くん沖縄初めてじゃないの?」
「おう、去年修学旅行で来たから」
「修学旅行……」
「その時、美晴はまだ転校してきてなかったもんな」
よしよしと咲くんの大きな手のひらが頭に乗せられる。
「一緒に行きたかったな」
「まあな。でも今一緒に来てるだろ? そこはのり姉に感謝だな」
「うん、そうだね」
咲くんと視線が絡まる。
「美晴は前の学校で修学旅行行ったんだろ? どこだった?」
そうだった。
それはそれで転校前にいい思い出になったと思ってたんだよね。向こうで仲の良かった友達ごめん!
あーー、思い出したくない思い出まで甦ってきた。
ヨシくん……。
「そやけど、ゴーヤチャンプルくらいわかるやん。も~、みはるん可愛いてしゃーないって感じやなぁ。この子いっつもこんな天然ちゃんなん?」
隣の椅子の美香ちゃんがニシシと笑った。
「ほんま、優しい彼氏で羨ましいわ~。本気でうちのジャガイモと交換せん?」
十和くんは聞かないふりで黙々とお弁当を食べていた。
午後からは男の子たちの出番。っていうか、ようやくお料理王選手権らしくなってきた。
場所は近くのショッピングモールに移動して、クッキングスタジオをお借りしての収録。
男の子たちの前には、午前中に私たちが粉やらローションまみれになった食材が置かれている。
【アグー】は豚肉。【グルクン】はお魚。【ソーキ】は骨付きのお肉で、【アーサ】は海草!?
「それでは、いよいよ決勝です!! 勝ち残った挑戦者は……」
男の子たちが再び紹介される。皆支給された白いコックコートみたいなのを着ている。ププッ。
「第二関門で助手の女の子たちが手に入れた食材が目の前に置かれています。挑戦者にはこれからそれぞれこちらをメインにした創作料理を作って頂きます。では、よーいスタート!!」
一斉に動き出す男の子たち。
どの男の子もお料理慣れしていて動きが機敏。端に置かれた台から、他の食材を選びとると、メイン食材の下拵えにかかった。
「アーサを手に入れた伊予くん、他の挑戦者に比べて不利な気もしますが……」
ふわふわの明るい髪色の伊予くんは、女の子みたいな童顔をふわりと微笑ませてカメラ目線を送った。
「そうですね、でも松原さんが頑張ってくれたので、僕も応えたいと思います」
にっこり笑った王子スマイルに、松原さんの頬が薔薇色に染まる。
美香ちゃんも!?
十和くん拗ねちゃうよ?
伊予くんはアーサをミキサーにかけて生クリームやら何やら入れている。淡い緑色のソースのようなものが出来ていた。
十和くんの手元にはソーキ。それを圧力鍋にかけて煮込んでいる。何を作っているのか、こちらもよく分からない。
グルクンを鮮やかな手つきでお刺身にしているのは播磨くん。短髪黒髪でよく焼けた肌に黒のタンクトップ。袖から出ている腕は筋肉質で私の二倍の太さがあるかも。
そんな播磨くんは、引くように包丁の刃を使う。するとたちまち白身の輝くようなお刺身が皿の上に花開いた。
そして咲くんは……緑色の果物を手にしていた。サクンと縦2つに包丁を入れると白い果実が見える。そして、中の種をスプーンでくりぬいた。皮をむき、細く切り始めた。
脂身か白くて鮮やかな紅色の肉が美しい豚肉はバラ肉。それもスライスしていく。
何を作ってるのか分からないけど、キッチンの中にいい匂いが広がる。
咲くんたちの間を回りカメラを回すカメラマンさんも、司会者も、町田ディレクターも比嘉さんも、そして私たちも早く味見したーーい! 生唾を飲み込み、悶えるのだった。




