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おいしい料理のつくりかた  作者: 紅葉
おいしい料理のつくりかた本編
32/82

特別メニュー 夏休み高校生お料理王選手権 2

 持ってきたコバルトブルーの水着はビキニで、首の後ろと背中で紐を結ぶタイプ。ちょっと大胆かなって思ったけど、色々試着してみた結果これに決めた。

 ユニット仕様のバスルームに籠り着替える。

 日焼け止めのクリームを塗って白いTシャツをはおり、ブルージーンズのショートパンツを履く。花飾りのついたビーチサンダルを履いて、そっとバスルームのドアを薄く開けた。


「咲くん、もう大丈夫?」

「おう」


 うなっ!


 咲くん、上半身、は、裸じゃないですかっ!

 

 咲くんは、うっすら筋肉をまとった裸の上半身を晒して、下は紺色の海水パンツ。白いパーカーを羽織ってジッパーを途中まで引き上げた。


「じゃあ、行くか」

「うん」


 はーー、ドキドキした~。


 女の子が男の子の裸(上半身)見て興奮するとか変よね。

 

 昨夜もドキドキして寝られなかったのは私の方。咲くんの微かな寝息が隣のベッドから聴こえて、ドキドキして眠れなかった。

 気付いたら朝だったから、そのうちに寝ちゃったんだろうけど。










「さぁ、始まりました! 高校生お料理王選手権! 高校生の頂点に立つ料理王子は誰なのか!! 第一関門は料理の知識を競うお料理クイズです! しかもただのクイズではありません! 見てください! あちらのビーチに答えの札がばらまかれております。助手の女の子と二人三脚でビーチを走り、障害物をくぐり抜け、正解の札を拾っての早押しクイズとなります! みなさん頑張って下さいね~」


 正解したらポイントが加算され、関門ごとにポイントの低い挑戦者が脱落となる。


 ビーチに着くなり水着姿との指示で、設置されたテントの中でTシャツとショートパンツを脱いだ。


『ナイスバディやね、美晴ちゃん』 


 熊野さんこと、美香ちゃんが女子用のテントの中で重歯をチラリと見せて笑う。そういう美香ちゃんの水着も赤のビキニで、すらっとした身体によく似合っているよ。


 咲くんと白いタスキで足首を縛り肩を組む。


 うわぁ、どうしよう。

 ごめんなさい。こんな水着を選んできて。

 だって、どうして水着持参なのか分からなかったんだもん。こんなことになるならお母さんのフィットネスクラブ用のスパッツ仕様の水着を借りて来るんだったぁぁ!

 黒にピンクの薔薇模様でもこれよりマシのはず!!


「それでは第1問! 調味料を入れる順番を表すという【さしすせそ】さは砂糖。しは塩、では、【せ】は何!?」


 司会の一段と張り上げた声に続いてスタートの号令がかかる。参加者が一斉に駆け出す。

 私たちも負けじと砂に足をとられまろびながら走る。

 さっきまで遠慮して浮かせていた咲くんの手のひらが私の肩をぎゅっと掴んだけど、私もそんなことでドキドキしていられる状態じゃなかった。


 やるからには優勝を狙う、そうでしょ?


 まあ、私はあんまり役に立たない助手なんだけど……運動音痴でごめんなさい。


 収録用に借りている場所はロープで囲まれているとは言え、それでも広いビーチにばら蒔かれたカードから答えのものを探す……探す?


 答えはなんだ!?


「せ、せ、せ…せから始まる調味料ってあった?」

「……醤油」

「しょうゆ~!? なんでっ! せじゃないじゃない」

「美晴、声大きい……」

「う。ごめんね」





 砂浜に散らばったカードをくまなく見回すけれど視界に入る範囲には醤油は無いみたい。


「あった!」


 

 一組がカードを拾って早押しボタンへと走る。


 おおぅ! 息が合っている!


 ピンコーン!


「では、阿蘇チーム答えをどうぞ!」

「し、しょうゆ……」

「正解~!!」


 正解したのはお刺身自慢の男の子。

 

 ああっ、やられちゃった。

 ぞろぞろとスタートラインに戻る。この往復だけで結構の運動だよね。


「二問目は、お出汁にも使われる鰹節にも使われるうま味成分は!? よーい、スタート」


「あ、これ知ってる」

「へえ」

「イノシン酸でしょ。家庭科のペーパーテストに出たよね」


 得意気に言えば、咲くんの目が優しく細められた。


「さすが」

「でしょ。次こそ絶対ゲットしようねっ!」


 いちに、いちに、と声を出して砂浜を走る。


 あ、あれは!!


 砂浜の上に置かれている白いカード!少し砂に埋もれかけているけれど、「イノ」の字が見える!


「ごめんやで!」


 後ろに来ていた関西組の美香ちゃんと十和くんの手が、鼻の差でカードを拾い上げた。


「……! 美晴、こっち」


 小さい声で咲くんが方向転換する。

 うにゃーん、耳元で囁かないで!!それヤバイ!!


「あ"ーー!! やられた!! なんで【イノシシ】やねん!」


 リアクションたっぷりに膝をついて美香ちゃんが叫んでいる。


 カメラマンのおじさん、そのアングルから美香ちゃん撮るの止めてあげてぇ~!!


 咲くんのリードで全然別の方向に向かう。と、一枚のカードを咲くんが拾い上げた。


 あ! 【イノシン酸】見っけ!!


 猛ダッシュで司会者の待つ早押し台へと戻る。


「はい、玉野チーム答えをどうぞ」

「イノシン酸」

「正解~!!」


 咲くんと肩の組んでない方の手でハイタッチした。




 結局5問クイズは行われ、美香ちゃん十和くんペアも勝ち抜いた。

 そして、残った5組で行われる第二関門は、お買い物バトル。


 浜辺のよくある海の家。というにはオシャレなレストラン風だけれども。

 とにかくそういうところに場所を移している。男の子たちはTシャツを着ることを許されたのに、私たち女の子は水着のまま。

 うう、何だか策略を感じる。すけべディレクターぁ!! と、陰で女の子たちで愚痴ってみたけど。



「次のゲームはお買い物バトル。助手の女の子たちにこのレストラン内から食材のカードを見つけ出して貰いましょう」


 司会者がレストラン内を徘徊しながらカメラに向かって説明している。

 銀のドーム型の蓋を開けた下から緑の蛙がピョンと飛び出た!!


「トラップも用意してありますので気を付けて下さいね! カードをゲットしたチームから勝ち抜けです!! では、スタート!!」


 ピョンと飛び出た蛙が、タイル張りの床をピョンピョンと跳んでいる。


 ひくっ。


 女の子たちの顔が心持ちひきつっている。


 スタートの号令に、ビーチサンダルの足を一歩レストラン内に踏み出した。


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