ねこまんま食堂のまかないメニュー その1
南のりこ部長がなにやら陰で動いています。
「で、学校はどうなんだい?」
ねこまんま食堂の店主のおじさんは、夕方からの仕込みを終えて椅子に腰掛けた。
熱いほうじ茶を3つお盆に載せたおばさんもテーブルにそれを置いて、おじさんに湯呑を渡すと隣に座った。
私はというと、床を掃く箒を持った手を止めて、手を洗うと同じように紺色の座布団が敷かれたスツールを引き寄せて座った。
「うん、遼ちゃんは相変わらず生徒会頑張ってるみたいよ。なんだか文化祭の準備で忙しそう。咲ちゃんは……今日転校生の女の子にね~、泣かれてたわ」
あはは……と笑う。
「その転校生の女の子、美晴ちゃんっていうんだけどね、今日家庭科のテストで追試になっちゃったみたいで、放課後家庭科調理室で一人でキャベツの千切りの練習してたみたい。ちょうど咲ちゃんが入った時に手を切ったらしくて、応急手当してあげてるから「優しいとこあるわね~」と感心してたら、急に「倶楽部の邪魔だから出ていけ」なんて言い出して。それで美晴ちゃんに泣かれちゃって、おろおろしちゃってね~、「教えてやるから出ていくな」なんて引きとめて甲斐甲斐しく教えてたわ~。あんな咲ちゃん見るの初めて~♪」
「ほぉう……」
「まあ、咲にもようやく彼女が出来るのかしらね」
「遼にはノリちゃんがいるから安心だがなぁ」
「やぁだ、おじさん。私、遼ちゃんとはお付き合いしてないってば」
「でも遼の嫁に来てくれるんだろ?」
「ノリちゃんなら大歓迎よねぇ」
「そうだったらいいんだけどさ。って、私と遼ちゃんの話はどうでもいいの。それよりさ、その美晴ちゃん、両親が共働きらしくて外食が多いのかな~、全然料理したことないみたいでね、それが世話好きの咲ちゃんには気になるらしくて、なんだかんだ言いながらお世話してるのよ。美晴ちゃんの方も素直に聞くもんだから得意げになっちゃって!! おじさんたちに見せてあげたい」
「咲がここにその美晴ちゃんを連れてきてくれるのはいつかしらね~」
「おばさん、おじさん、私にいい考えがあるの。今度ね、美晴ちゃんの料理倶楽部の歓迎会をね、ここでさせてもらってもいいかなぁ」
「そりゃ、店休日の日なら構わんが」
「やりぃ」
湯呑を洗い場に戻して、残りを掃除すると、準備中の札をひっくり返した。