メニュー18 告白
「……俺に告られたの、そんなに嫌?」
ポロポロ涙が頬を伝うのを見て、咲くんが苦しそうに言った。
「違うの」
ブンブンと頭を横に振る。見上げるとそこには心配そうな咲くんの顔。
「私もずっと、ずっと……咲くんの事が好きだったの」
多分、最初から。
咲くんに教えて貰って作ったとんぺい焼を、野球部の皆に美味しいって食べてもらえた時に微笑んでくれたあの時から。
咲くんは私の告白を聞いて驚いた顔を見せた後、少し赤くなりながら困ったようなはにかんだ笑みを浮かべた。
「美晴、その顔ヤバイ。可愛い……くそっ、」
小さく呟く咲くんの次の行動が分かった気がして、そっと目を閉じる。
両肩の上に咲くんの手が載せられた重みを感じる。
ダメ、早くして。ドキドキし過ぎて、心臓が破れちゃう……。
薄目を開けるのも憚られて、じっとその時を待つ。
「ねぇ! 先客いるじゃん」
「あ゛ーーーー。さすがイヴ。完全に出遅れた」
「だから、あんたんち行こうって言ったんじゃん」
「俺んちは不味いんだって! クリスマスを前にフラれたネーちゃんがいるっていったじゃん」
「もう、どこでもいいよ」
「だから二人になれる処はどこもいっぱいなの」
騒々しいカップルのやりとりが耳に入って思わず目を開けてしまった。
肩に手を乗せた格好で咲くんも公園の出入口にいるカップルをチラチラと気にしている。
あっちも高校生のカップルかな。
キョトンとしてしまっていたんだろう。
カップルの女の子と目が合ってしまった。
非常に気まずい。なんで見なかったフリ出来なかったんだろう。
「あ、すみません~。お邪魔しました~! お構い無く続きをどうぞ~」
二人で小突き合いながら、そのカップルは仲良く公園を出ていった。
「続きをどうぞって…………」
絶句した咲くんが、可笑しくてつい……。
ぷ。
クスクス。
完全に気が削がれてしまったね。
「美晴、笑いすぎ」
むくれた表情の咲くんが、立ち上がった。
手を引いて私も立ち上がらされる。
長い間外にいたのに咲くんの手のひらは温かい。体温が感じられる距離にいられることに、じんわりと幸せを噛み締める。
「送ってくよ。遅くならせてごめんな」
「ううん」
と答えつつ、携帯のバックライトで確かめた時刻は22時。さすがにヤバイかも?
公園の出入口に差し掛かる手前で、突然クンッと手を引かれた。そして、ちゅ。
咄嗟に何が起こったのか、思考が追い付かない。
唇の上に落とされた、触れるだけのキス。
「上書き。俺以外には更新されたらダメだからな」
耳まで赤くなった咲くんが、プイッと進行方向に顔を背ける。
えっと、庄司くんとはポッキーゲームはしたけど、唇が触れるとこまではしてないよ?
と、思ったけど藪蛇になりそうだから口をつぐんだ。




