1-1 狐少女は新生活を始める
「なに、これ……」
「そ、そのうち慣れるんじゃないかなー? あはは……」
隣の席の子が私の呟きと共に戸惑いつつも呟く。
入学早々私はこんな状況で、どうしたらいいかわからない……
教室を見渡すと、獣の耳と尻尾を持つ子、半透明な子、角や翼が生えている子……ごくごく普通の見た目の生徒なんてほぼいない、そんな摩訶不思議な光景が目の前に広がっている。
それは、遡ること数日ほど前。
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私は九重雅。今年で高校1年生になるのだけど、前から気になっていた私立で全寮制の学校、天羽学園に入学を決めた。年甲斐も無くわくわくしながら学校の寮に行く当日を迎え、目が覚めると……なんか、みみとしっぽ生えてる。それも、狐の。
そんな目にあったのだ。
「あっはは! お姉ちゃん何それ、朝からコスプレしてるのっ?」
と、妹には笑われ、父さんと母さんはフリルやレースの施された服、なんか良くわからないけど露出の多い服などを着せ替えようとする始末。ちょっと居心地が悪いので早々に制服に着替え、学校へ向かうことに。
うぅ、学校で目立たないといいけど……うん、ムリだろうなぁ……
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大きな門を潜り抜け、やっとのことで着いたこの学園。私が記憶してる限り、こんなに大きな学校は見たことがない。
「うわぁ……迷いそう……」
見惚れながらも歩いていると、喫茶店らしきものや、売店もちらほら……け、決して迷ってはないはず……はずだよね?
「あら……可愛い子ね、新入生かしら?」
不意に声をかけられ、少しびっくりして体が跳ねてしまった。ちょっと情けないなぁとも思いながら振り返ると、綺麗な銀の髪を伸ばした女性が何故か私の頭を撫でつつ話しかけてきていた。
「ふぁ……あ、はい、今日から、入学です……なんで、撫でられてるんですか? 私」
「ふふっ、貴女があんまりにも可愛かったからつい。気を悪くしていたならごめんなさいね? それにしても狐…なのですね」
そう言いながらも、私の頭を撫でることはやめないらしい。気持ちよくてつい目を細めてしまう。
「狐……この耳と尻尾のこと、なにか知ってるんですか?」
「えぇ、知っていますよ。でもここでずっとお話しているのも時間が経ってしまいますし……私が寮まで案内しますよ。貴女の名前、教えていただけますか?」
「九重雅、です」
名前を名乗ったあと、銀髪の女性は何やらファイルをめくり始めた。おそらく新入生の名簿……なのかな? 少しだけ待つと、どうやら私の情報を見つけたらしい女性が手招きし、すたすたと歩いて行った。どうやら付いて来て欲しいみたいだ。一人で歩くより、彼女と一緒に行動したほうがほぼ確実、かな。若干話を逸らされた気もするけど、取り敢えず付いて行くことにしよう。
「まぁ……なるようになる、よね」