巫女姫
「何言ってるんだ?」
目の前で突然予想外の言葉を口に下碧眼の少女に驚きを隠せないでいる俺。考えるならば目的は俺の監視とあわよくば此方の陣営に引きこむ、と言った所だろうが…。
「貴方を呼んだのは私です。その私が何もせずにただ見ているだけと言うのは我慢出来ないんです」
「それならそっちに残った三人に付けばいいだろうに」
「あの御方達には私よりも相応しい人間が既に付いています。私は必要ありません」
何処が秘めたる決意を瞳に宿す少女の眼光にきっぱりと切り捨てる事が出来ない。これから自由に旅でもしようと考えている所に勇者関係、どころかその勇者を召喚した本人が来るのだから此方としては気が気でない。
「だからはぐれもんの俺に付いて行こう…か?下らない同情で俺に付いてこようとするなら止めとけ」
「違います!そう言った事ではありません!確かに先程言った通り、貴方一人をそのまま外の世界に出すのは私が嫌と言う事もあります…ですが本当は!」
そこまで言った所で少女は突然口を噤む。まるで何か言ってはいけない事を言ってしまったかのように。それが俺には分からないが、はて、どうするか。この少女を連れて行った所で俺にメリットは来るのか?まず問題となるのはこの少女の身分だろう。もし王族の血筋と言ったかなり高貴な人間ならば、他の国に立ち入る時に顔を隠さなければならない。他の国との外交問題にもよるが。それとは逆に高貴な人間ならば色んな所で顔が効く可能性があると言う事。まだこの少女が高貴な人間と分かった訳ではないが、あの場に居て俺たちを召喚するぐらいなのだからそれなりに高貴な人間ではあるだろう。
「…お前の名前は?」
「え?ク、クリアネット・リィネです!」