二話 美濃の弁舌
正秀は美濃へ馬を飛ばしていた。
定義の命運はこの男に託された。
その重任を背負って馬を走らせる。
そして、美濃についた。
正秀は、幼少の頃から機知に富んでいた。
彼の言い訳を聞いたら納得せざる得ない状態になったと言う。
人を説得するのに長けていた。
よく友人から弁解を頼まれていた。
そんな彼が、定義の使者として美濃へ来た。
「私は、定義の使者で、
善中殿に謁見したい。」
断りを言っておいて城へ入城した。
そして、善中の10歩前まで来た。
善中には威圧感がある。
漢らしい人物だ。
どうどうとしている。
正秀は頭を下げた。
善中は正秀にあまり興味を引いていない様子だった。
洞察力にも長けている正秀は、それを感じ取った。
この人の気を引かせるには、少しからかう必要があるな。
そう思った正秀は、少し言葉に棘を含ませようと思った。
「あなたは、鷹信を討とうとは思いませんか。」
これは同盟を求めているのだと、善中は察した。
善中は肩で笑ってこう答えた。
「10と10とが争うとどちらも疲れる。
その時、他の奴らが攻めてきたら
取り返しがつかないではないか。」
すると、正秀は大笑して言った。
「天にいるあなたの父上はさぞお嘆きでしょうな。」
善中の父は、鷹信の父に騙まし討ちにあい死んだ。
そして、鷹信の父は善中に殺された。
なので、善中と鷹信は互いに激しく恨みあっている。
善中は正秀のこの言葉を聞いて大きくため息をついた。
「わしは仇討ちを忘れた事はない。
しかし、仇討ちをしきっていない。
今こそ仇討ちの時だ。」
正秀はこの言葉を聞いて内心跳ね上がった。
「待てい」
そう叫ぶ者がいた。
「我が君を闇に陥れようとは何事か。」
正秀は破顔した。
「それはあなたではありませんか。
この仇討ちをしなければ、
善中殿は、親不孝者として世間から罵られても仕方ありません。
善中殿を陥れようとしているのはまさしく貴方です。」
叫んだ者の顔は土になった。
正秀の弁舌に勝るものは美濃にはいなかった。
そして意気揚々と正秀は馬を飛ばした。




