一話 賢者
本来歴史は一つ。二つもない。
これは、もう一つの世界の歴史である。
時は西暦1532年。
世は戦乱の世。
尾張の小城の小牧城の城主、中山定義という者がおった。
尾張の大半を治めているのは三田鷹信。
定義と鷹信は対立していた。
定義は仁と徳を大切にする男であった。
早く乱世が終結し、民が苦しみから解放されないのものか。
定義は日々そう考えていた。
民は定義を慕わない者はいない。
皆彼を慕っている。
なんせ、仁と徳を重んじる男だから。
鷹信は大勢力。
それが攻めてくるとしった定信は、
大いに驚いた。
鷹信は暴君で、税をできるだけ絞りとっている。
恨みの声は絶えないと聞いた。
ああ、民を救えないものか・・
定義は、あの男の手に民が渡ると考えると、ため息をつくばかり。
「ああ・・私はあの男の配下に・・」
思わず弱音を吐いてしまった。
すると、不適な笑みを浮かべるものがいた。
「何が可笑しいのじゃ。」
「殿が犬などにおびえているのが可笑しいのです。」
この高言を言った者は、武長重盛という博識多彩な人であった。
「鷹信は大勢力だぞ。」
重盛は笑ってこう言った。
「鷹信は大勢力とはいえ、烏合の衆に過ぎません。
我が軍が勝つ秘策があります。」
定義は重盛に興味が湧いた。
「その秘策とはどんな秘策じゃ。」
「私の策を述べましょう。
鷹信は美濃の坂辺善中と不仲で互いに恨みあっております。
美濃の善中に鷹信を攻めるように要請したら必ず同意するでしょう。
美濃の善中も大勢力です。
殿は、同盟を組んだ後少数の兵で戦を挑み敗走してください。
そうすると、鷹信は善中に大勢力を注ぎこみ、
こちら側には少勢力を送り込んでくるでしょう。
その時、一機に打ち破るのです。
これぞ、漁夫の利です。
虎と狼を争わせる策です。」
定義は驚いた。我が配下にこのような人材がいたとは。
「おお、なるほど。
そなたが居れば心強い。
このような奇才が私の下に・・。」
定義は感嘆した。
「私のような愚者は腐るほどいます。
あなたは仁に厚いため、
あなたの下には賢者が群がっています。
それに比べ、鷹信は暴君なので彼の下には賢者はいません。
なので、私の策は見破れないでしょう。」
定義は彼はまさに天下の奇才だと褒め称えた。
定義はさっそく彼の策に同意した。
美濃の善中へ送る使者は、誰がいいかと考えていた。
その時、重盛は一人の弁舌の士を推薦した。
その人は、松長正秀といった。
彼の弁舌は鮮やかで、言葉が美しい。
定義は正秀の舌のとりことなった。
「この人にしよう。」
定義は1,2をなしに即断した。
正秀を美濃へ送った。




