☆第九話☆『せ、先生!?』
登校四日目。朝のホームルームが始まった。先生が余計なことをしなきゃいいけど……。
「みんなおはよう。ちゃんと勉強してるか?」
「当たり前じゃないですか」と、篠山くんが言った。
「そうか、篠山は勉強熱心なんだな。……効率良く勉強する方法があるんだが、知りたいか?」
「効率良く勉強する方法? それはどんな方法ですか?」
「それは……友達と一緒に勉強することだ!」
「友達と一緒に? それだと余計に効率が悪くなると思うんですけど」
「確かにそう思うかもしれない。だけど、それは勝手な思い込みだ。友達に教えることによって、自分の勉強になる。友達に教えられることによって、その教えられたことは深く印象に残る」
「でも、一人でもふざける人がいたら、まともに勉強できないと思うんですけど」
「確かに。でも、それをしっかりと抑止できるのが友達だ」
「そんなことをしている暇は無いですよ。やっぱり一人でやった方が効率が良いですよ」
「逆に、一人でやると集中できないなんて奴もいる。それに一人じゃわからない問題だってある。そんな時に教えあえる友達がいればスムーズに勉強ができる」
先生、良いこと言いますね。
「…………。ていうか、何でそんなに友達と勉強することを奨励するんですか?」
「このクラスで、友達と勉強することを望んでいる人がいるからだ」
せ、先生っ!? 余計なことを言わないでぇー。
篠山くんはこちらを睨みつけていた。私は必死に目を合わせないようにした。
「先生、俺は一人でどうにかしますよ。やるなら、勝手にやってくださいよ」
「……わかった。強要はできないからな。だけどな篠山、いつか差が付くぞ」
「俺は誰にも負けないっすよ」
篠山くんは、怒りのこもった声で言った。篠山くんの気迫が凄かった。
「わかった。他の奴ら、明日から朝のホームルームの時間の大半は友達と勉強をする時間にする。もちろん、一人でしたい奴がいれば、それでも構わない。自由にするといいさ。……よしっ、ホームルーム終わり」
先生は教室を出ていった。それと同時に、篠山くんが凄い形相でこちらにきた。
「お前ら、そんなに俺の邪魔がしたいのかよ!」
「そ、そんなつもりは……」
「うるせぇっ。センコーを味方につけたつもりか? そんなのに俺は屈しねーからな!」
「ちょっ、ちょっと篠山くん!?」と言いながら、桜姫がこちらに来た。
「ちっ。……俺の邪魔をすんなよ」と、捨て台詞を吐いて、自分の席へと戻っていった。
「陽! 大丈夫?」
「桜姫! ありがとう。……大丈夫だよ」
篠山くんがかなり必死だということが、よくわかった。
「陽、あんな奴のこと、気にしちゃダメだよ」
「う、うん」
私たちって、また篠山くんの邪魔をしてる? このままでいいのかな?




