☆第二十話☆『早期発見』
「あら、赤城さん。気がついたのね」
「はい。美浦先生、すみませんでした」
美浦先生は保健室の先生だ。
「びっくりしたわよ。急に倒れて、運ばれてきたんだから。原因は寝不足ね。ちゃんと睡眠をとらないとダメよ」
「はい……。そういえば、誰が運んでくれたんですか?」
「ここまで運んでくれたのは男の子だったわ。たしか…………坂下くんだったかしら」
「坂下くんが…………。そうなんですか」
「もしかして……彼氏?」
「……はい。今日付き合い始めました」
「まさか……、彼氏のことを考えすぎて眠れなかったんじゃないの?」
「実は…………そうなんです」
「……青春ねぇ~。羨ましいわ。私も恋がしたーい」
「先生もまだまだ恋できますよ」
「そうかな? 恋できればいいなぁ~。……赤城さん、元気になったら教室に戻っていいわよ」
「もう元気になったので、教室に戻ります」
「彼氏にお礼を言うのよ」
「はい。それでは、失礼しました」
私は保健室を出て、教室へ向かった。そして、授業が終わった少し後に教室に着いた。
「赤城さん、大丈夫!?」と言いながら、坂下くんが真っ先に近寄ってきた。
「さ、坂下くん……。大丈夫だよ」
「よかったぁ~」
「心配かけてごめんね」
「赤城さんが無事ならそれでいいんだ。次の授業は出れるの?」
「うん。次の授業からは出れるよ」
「あんまり無理しないでね」
「うん。ありがとう」
午後の授業を全部受け、放課後を迎えた。
「赤城さん……、一緒に帰ろう」
「うん、帰ろう!」
私たちは一緒に帰ることになった。
私たちがお喋りをしながら廊下を歩いていると、前からこちらに向かってくる人がいた。
「赤城、坂下。お前たち、随分と仲が良いみたいだな。もしかして……、付き合ってるのか?」
こちらに向かってきていたのは、原先生だった。
「はい、付き合ってます」と、坂下くんが答えた。
「そうか、それは羨ましいな。……ところで、俺がホームルームの時に言ったことを覚えているか?」
「……すみません。覚えていません」
「そうか、じゃあ思い出させてやる。俺が言ったのは、目標を達成させてやる。それは条件付きで、毎日努力をすること、それと……恋愛をしないことだ。お前たちは目標を達成したいとは思わないのか?」
「目標は達成したいですよ。でも……、恋愛もしたいです!」
「勉強と恋愛の両立は無理だ! 今まで両立出来た奴を見たことがない」
「じゃあ俺たちが、両立できるってことを証明します」
「……好きにしろ」
原先生はその場から立ち去った。




