☆第十二話☆『私のこと、どう思う?』
登校七日目。今日もまた、朝のホームルームで、陽は坂下くんに勉強を教えていた。
「赤城さん、今日の説明もとても分かりやすかったよ!」
坂下くんは満面の笑みで言った。その笑顔を見て、陽の心はときめいていた。
「…………ねぇ、坂下くん。ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「何?」
「私のこと…………どう思ってる?」
「うーん……頭が良くて、良い人かな」
「……そうなんだ」
「こらっ! そこ、私語は厳禁だぞ!」
こちらに原先生が来て、原先生に注意された。
「すみません」と、坂下くんが謝った。
「次からは気をつけるように」
「はい」
原先生は教壇に戻った。
「坂下くん、ごめんね」と、私は小声で謝った。
「気にしないで」と、坂下くんも小声で言った。
「よしっ、ホームルーム終わりだ」
原先生の号令でホームルームが終わった。それと同時に坂下くんは教室を出て行き、そして桜姫がこちらに向かってきた。
「ねぇ陽、何で先生に怒られてたの?」
「坂下くんと少しお喋りしてたら、見つかっちゃった」
「何の話をしてたの?」
「えっと…………秘密」
「えぇ~、教えてよ~」
「ダーメ」
「私たち親友じゃん」
「……わかった」
「それで、何の話をしてたの?」
「……坂下くんは、私のことをどう思ってるかっていう話」
「陽……大胆だね!」
「桜姫! 声が大きいっ!」
「あっ、ごめん。……それで、坂下くんは何て答えたの?」
「頭が良くて、良い人だって」
「……それだけ?」
「うん」
「頭が良くて、良い人ね。……好きか嫌いか聞かなかったの?」
「そ、そんなこと……聞けるわけ無いでしょ!」
「そうなんだ。残念」
「……桜姫は私のことばかり気にしてるけど、桜姫は好きな人とか、気になる人とかいないの?」
「私? 私はまだいない」
「そうなんだ。友達は増えた?」
「友達は増えたよ」
「何て名前の人?」
「切室昇くん。私の隣の席の人」
私は桜姫の隣の席の人を見た。
「イケメンじゃん。桜姫は切室くんのこと好きじゃないの?」
「今年の私は性格を重視するの! 見た目だけじゃ決めらんないよ」
「そうだったね」
「そうよ。だから、切室くんのことを、もっと知ろうと思ってるの」
「桜姫……。なんか変わったね」
「そうかな?」
「うん。前より、ちょっと大人になった気がする」
「そんなことないよ。……陽は前よりももっと輝いてる。前も輝いてたけど」
「そんなことないよ」
「お互いに、知らないうちに、少しずつだけど成長してるのかもね」
「そうなのかもね」
陽と桜姫は、自分たちの恋のために、少しずつ前進していた。




